キャッシュフロー計算書が面白いほどわかる本(第5章 キャッシュフロー計算書はこう活用しよう)

天野 隆 (著) 2007年7月4日


○ フリー・キャッシュフローを自己資本増加額で割る - 28.自由資金比率に注目して企業を分析しよう
 利益が増えた時に、それが現金化される割合で会社の資金体質をさぐります。
 自由に使えるフリー・キャッシュフローを自己資本増加(通常は利益剰余金増)額で割ると、自己資本増加に対する、フリー・キャッシュフローの割合が算出されます。これを「自由資金比率」といいます。増えた利益のなかに自由に使える現金がどのくらいあるかがわかります。
 この比率は高いほどよいのです。自己資本が増えた分、フリー・キャッシュフローも増えていればよく、それ以上に増えていればさらに優秀です。
(第5章 キャッシュフロー計算書はこう活用しよう)

○ 手元に現金がないと信用が低下する - 30.自社の資金体質を把握してみよう
 会社の強さはフリー・キャッシュフローの多さで決まります。つまり、自由に使える現金の多い会社がよい会社といえます。
 フリー・キャッシュフローが多ければ、借入金を返済でき、次第にキャッシュ残高が増えていきます。理想をいえば、借入金を完済し、利益になった分がそのまま現金として残っていく会社が理想です。
 フリー・キャッシュフローのあるメリットは信用が得られるということです。
 たとえば、販売した商品に欠陥が発生した場合、新しい商品に交換するとなると手元に現金が必要になります。現金がないと交換できず、顧客の信用を失うことになります。また、戦略的設備投資ができなくなります。こうなると顧客に喜ばれる新商品をつくることができなくなり、ここでも顧客の信用を失うことになります。
 そのほか、株主に配当で報いることもできませんし、銀行に借金も返せなくなります。
 このようにフリー・キャッシュフローがないと、顧客や利害関係者から信用が得られなくなります。
(第5章 キャッシュフロー計算書はこう活用しよう)

○ 同業他社との比較も容易になる - 30.自社の資金体質を把握してみよう
 これまでは会社の強さは、売上げや利益の多寡ではかってきました。しかし、売上が多くても利益が出なければ弱い会社です。さらに、利益が出ても現金として残らなくてはいけません。
 これからはキャッシュフロー計算書のフリー・キャッシュフローの多寡で会社の強さをはかることになります。ただし、会社の規模の関係で、単純にフリー・キャッシュフローを比較しただけではわからない場合もあります。
 そこでキャッシュフロー計算書のフリー・キャッシュフローが自己資本増加額に占める割合「自由資金比率」を見るとよいでしょう。同業のモデル企業と自社の資金体質を「自由資金比率」で比較し、自社の強さをさぐってみましょう。
(第5章 キャッシュフロー計算書はこう活用しよう)

○ 三つの財務諸表の数字はリンクしている - 31.キャッシュフローを重視して経営改善する
 貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書の数字は深く関わりあっています。
 損益計算書の利益が増えると貸借対照表の自己資本が増えます。自己資本が増えると、通常、他人資本(金融機関からの借入れなど)が減るので、手元に現金が残りやすくなります。そのためキャッシュフローはよくなります。
 キャッシュフローがよくなると借入金が減り、利益が増えます。
 ただし、例外的に利益に関係なくキャッシュフローがよくなるケースがあります。
 それは売上債権、たな卸資産、買入債務の数字に関係する取引状況の改善がうまくいき、自社に現金が入りやすくなる場合です。
(第5章 キャッシュフロー計算書はこう活用しよう)

○ 投資の意思決定が変わる - 31.キャッシュフローを重視して経営改善する
 キャッシュフローを改善するには、投資は営業キャッシュフローの範囲内で行うことが望ましいのです。さらに言えば、減価償却費の範囲内で行うことが望ましいのです。
 設備投資をすると顧客のニーズに応えられ売上も上がりますが、過大な設備投資は資金繰りを圧迫します。キャッシュフロー計算書を導入することで、資金体質に合った、適正な設備投資ができるようになるでしょう。
 借入金の返済については、理想をいえばフリー・キャッシュフローの範囲内で行うべきです。それによって当期の借入額が当期の返済額よりも少なくなっていきます。
(第5章 キャッシュフロー計算書はこう活用しよう)

○ 資金体質が悪い会社はキャッシュフロー計算書を下から手当する - 32.取引先の資金体質を分析してみよう
 現金の少なくなった会社はキャッシュフロー計算書の項目を下から順番に手当てするという特徴があります。借入金は返済せざるを得ません。返済しておかないと次回借入れができなくなるからです。
 次に、設備投資を行います。設備投資をしないと新製品の開発ができなくなるからです。するとキャッシュが不足するので買掛金の支払いが滞るようになります。つまり、財務キャッシュフロー、投資キャッシュフローに現金が投下され、営業キャッシュフローは後回しになります。
(第5章 キャッシュフロー計算書はこう活用しよう)

○ フリー・キャッシュフローに返済能力が表れる - 33.融資先・投資先の選別材料として使おう
 仮にあなたが銀行の融資係だとして、どんな企業になら融資できると考えるでしょうか。答えはとてもシンプルです。返済してくれる企業には融資できる、返済してくれない企業には融資できません。
 この場合、キャッシュフロー計算書のフリー・キャッシュフローを見れば、返済能力のあるなしを一目で把握することができます。
 フリー・キャッシュフローからしか、財務キャッシュフローは捻出できません。ですからフリー・キャッシュフローがプラスでない限り、借入金は返済できません。
 ですから、フリー・キャッシュフローが借入金の返済額より大きい企業は返済能力があるので、融資できるということになります。反対にフリー・キャッシュフローが借入金の返済額よりも小さい企業は返済が危ういので、融資することはできません。
(第5章 キャッシュフロー計算書はこう活用しよう)

○ 提携のポイントはフリー・キャッシュフローの多さ - 34.提携先・買収先の選択材料として使おう
 企業はお客様が同じ場合、共同して販売します。これを提携といいます。たとえば、住宅メーカーとトイレ製造会社は、お客様が同じなので提携して販売します。
 また、卸売業者が小売業者と協力して新たな販路を開拓します。これも提携です。
 提携先を選ぶ場合、どの会社と組んだらよいかをキャッシュフロー計算書から知ることができます。
 キャッシュフローのよい会社と組むと、経営に余裕があるので、目先の損を受け入れて、長期的な視野に立って提携関係を結ぶことができます。
(第5章 キャッシュフロー計算書はこう活用しよう)

○ 優良企業のキャッシュフロー計算書を見てみよう -35.優良企業のキャッシュフロー計算書を見てみよう
 TKC経営指標『BAST』の黒字企業のなかでもとくに優良な上位十五%の企業のデータをもとに著者が作成したキャッシュフロー計算書です。すなわち優良企業のキャッシュフローの平均といえるでしょう。
 営業キャッシュフローは一九〇〇万円、投資キャッシュフローは▲七〇〇万円で、フリー・キャッシュフローは一二〇〇万円です。すなわち一二〇〇万円が自由に使えるキャッシュです。
 そのうち五〇〇万円を借入金の返済に充てています。
 自由資金比率を見ると、〇.七一で、増えた資本の七一%が手元現金となっています。フリー・キャッシュフローが多く、資本増に対するフリー・キャッシュフローの割合も高い、典型的なよい例といえるでしょう。
(第5章 キャッシュフロー計算書はこう活用しよう)









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