新会社法対応 決算書の読み方が面白いほどわかる本(第2章 【損益計算書編】損益計算書で会社の業績がわかる)

落合 孝裕 (著) 2006年6月20日


○ 一年間でいくら儲けたかがわかる - 3.損益計算書で会社の儲けがわかる
 損益計算書は、会社が一年間でいくら儲けたかがわかる書類です。会社が一年間でどれだけ売上を上げて、どれだけ仕入れて、経費がどれくらいかかったかをあらわす一覧表です。
 売上や受取利息などを「収益」、仕入れやさまざまな経費を「費用」といいます。損益計算書は、会社の一年間のすべての取引のうち、収益と費用をピックアップしたものです。
(第2章 【損益計算書編】損益計算書で会社の業績がわかる)

○ 売上粗利益とはつまり「粗利益(あらりえき)」のこと - 4.損益計算書は五つの利益を計算する
 損益計算書は、利益を計算することが目的で、五つの利益を計算します。
 一つめは、売上高から売上原価を引いた「売上粗利益」。これは粗利益(あらりえき)、略して粗利(あらり)ともいいます。
 売上原価とは、仕入高に期首と期末の棚卸高をプラスマイナスしたもので、今期売り上げた商品の売上高に対応する原価部分をあらわします。
 この売上粗利益をたくさん稼げるか、あまり稼げないかが、経営の大きなポイントです。商品を安く仕入れて高く売れば、売上粗利益は自然と増えます。一方、見切処分などで商品を安く売ってばかりだと、売上粗利益は減ってしまいます。
(第2章 【損益計算書編】損益計算書で会社の業績がわかる)

○ 「営業利益」をみれば本業での儲けがわかる - 4.損益計算書は五つの利益を計算する
 二つめの利益は「営業利益」です。これは、売上粗利益から一般経費である「販売費及び一般管理費」を差引いて計算します。「販売費及び一般管理費」は長い呼び方なので、略して販管費(はんかんひ)ともいいます。販管費とは、会社が販売するために必要な経費のことで、給料手当、広告宣伝費、交際費などが該当します。また、管理費には、水道光熱費や地代家賃などが該当します。これらが一緒になって、販管費という区分で計上されています。営業利益によって、会社が本来の業務でどのくらい儲けたかがわかります。
 そして、三つめの利益は「経常利益」です、売上を計上する、というときに使う「計上」と区別するために、「けいつね」利益と呼ぶこともあります。これは、営業利益に営業外収益と営業外費用、つまり受取利息や受取配当金、雑収入、支払利息などをプラスマイナスしたあとの利益です。会社の経常的な活動による利益をあらわします。「増収増益」の「収」は売上高のこと、そして「益」は、経常利益のことを指しています。
 四つめの利益は、「税引前当期純利益」です。経常利益に、たとえば臨時的に発生する固定資産売却損益のような特別利益と特別損失をプラスマイナスして計算します。
 五つめの利益が「当期純利益」です。税引前当期純利益から「法人税、住民税及び事業税」を差し引いた利益で、貸借対照表の「純資産の部」の「利益剰余金」に蓄積されます。
(第2章 【損益計算書編】損益計算書で会社の業績がわかる)

○ 利益が出ていても税金を払えない・・・ - 5.決算書の利益と実際の利益のちがい①
 損益計算書の下のほうをみると、「税引前当期純利益」に対して、法人税などの税金が合計で約四〇%かかっています。
 儲かって利益のなかから税金を払うわけですから、どの会社も払えるはずです。ところが現実には、利益が出ていても、手持ちの資産では税金を支払うことができず、わざわざ借入れをする会社が多いのです。なぜでしょうか? これは、決算書の利益と、実際の資金繰りとがちがうことによります。
(第2章 【損益計算書編】損益計算書で会社の業績がわかる)

○ 発生主義とは何か - 5.決算書の利益と実際の利益のちがい①
 一つめは「発生主義」にもとづいて、決算書を作成することにあります。「発生主義」とは、売上については商品を売った時点、つまり納品した時点で計上すべし、ということです。そして、仕入や経費も、おなじように購入した時点で、費用を計上すべし、というものです。
 お金の入金があったか、あるいはお金の支払いがあったか、ということはまったく無視されます。たとえば、売り上げたにもかかわらず入金が翌月末、こんなことはよくありますね。さらに翌月の入金が、手形で支払われることもあります。受け取った手形の決済が、三カ月先となると、売り上げた商品がお金として回収されるのが、四カ月も先となります。「それならば、支払もすべて手形を振出せばおなじじゃないか」という考えもあるでしょう。たしかに、すべての支払いについて、四カ月後に決済ならばバランスはとれます。
 しかし、費用のうちで、給料と家賃については手形振出はできません。給料は労働基準法で「通貨払い」が原則となっています。さらに家賃は、前家賃といって、翌月分を今月末に払う習慣が一般的です。つまり、売上代金が四カ月後の入金だと、少なくとも給料と家賃の支払いが資金ショートし、借入れをしないと税金を払うことができなくなってしまうのです。
(第2章 【損益計算書編】損益計算書で会社の業績がわかる)

○ 減価償却とは何か - 7.決算書の利益と実際の資金繰りのちがい③
 決算書の利益と実際の資金繰りがちがう理由の三つめが「減価償却」です。これは資産を買った場合、資産を買ったときにその金額が費用とならず、数年あるいは数十年かけて、減価償却費という形で費用になる、という考え方です。
(第2章 【損益計算書編】損益計算書で会社の業績がわかる)

○ 減価償却には定率法と定額法がある - 7.決算書の利益と実際の資金繰りのちがい③
 減価償却の方法について、購入した当初に減価償却費を多めに計上できる定率法と、毎期同じ金額を償却する定額法の二つがあり、いずれかを選べます。
 減価償却費は、会社法では毎期決められた償却限度額すべてを費用とすべし、となっていますが、法人税法つまり税務署への申告については、限度額以内であればいくらでもかまいません。赤字が大きい会社は、この減価償却費を少なめに見積もって、黒字にしたり、赤字の額を少なめに申告することが可能ですが、お金を貸す金融機関側では、決算書で減価償却費が満額計上されているか、かならずチェックしています。
(第2章 【損益計算書編】損益計算書で会社の業績がわかる)

○ 売上高総利益率をみてみよう - 8.売上高と利益の比率で損益計算書の理解を深めよう①
 損益計算書は、売上高と利益との比率をみることにより、理解が深まります。売上高を一〇〇として、各利益がどのくらいになるかをパーセントで表します。
 売上高と売上総利益を比較したものが「売上高総利益率」です。粗利益率(あらりえきりつ)、粗利率(あらりりつ)ともいいます。
  ・
  ・
  ・
 この比率を高めることが、会社が儲けるためのポイントとなります。また、自社の決算書でも前期との比較や、最近三期から五期との比較をしてみるのも、大切なことです。
(第2章 【損益計算書編】損益計算書で会社の業績がわかる)

○ 売上高営業利益率と売上高経常利益率をみてみよう - 9.売上高と利益の比較で損益計算書の理解を深めよう②
 「売上高営業利益率」は、売上高と会社の営業利益とを比較したものです。営業利益は売上総利益から「販売費及び一般管理費」を差引いた利益です。営業利益は、会社の本業で稼ぎだす利益ですので、少なくとも会社にとってはこれがプラスである必要があります。
  ・
  ・
  ・
 この比率を上げるためには、売上高総利益と販売費及び一般管理費のバランスをうまく取っていく必要があります。売上総利益を稼ぐのにたくさんの費用を使ってしまうと、営業利益はあまり出ません。逆に少ない費用で効率的に会社を経営していれば、営業利益がたくさん出ます。
(第2章 【損益計算書編】損益計算書で会社の業績がわかる)

○ 売上高経常利益率が五%以上なら優良企業 - 9.売上高と利益の比較で損益計算書の理解を深めよう②
 営業利益の下には営業外の損益が計上されています。内容は、受取利息、受取配当金、雑収入などの収益や支払利息や受取売却損(いわゆる手形割引料)などの費用です。主に金融取引などが該当しますが、これを加減算して経常利益を計上し、売上高と経常利益との比率を計上したものが、「売上高経常利益率」となります。
 経常利益で、経常的に生じる収益と費用のトータルが計上され、会社の業績がわかります。この売上高経常利益率は、最低でも三%、できれば五%を目指したいとこです。
 売上高経常利益率が五%以上なら十分優良な会社です。
(第2章 【損益計算書編】損益計算書で会社の業績がわかる)

○ 費用のメインはなんといっても人件費 - 10.損益計算書の費用はここを見る①
 「販売費及び一般管理費の内訳」には、費用がたくさんならんでいます。
  ・
  ・
  ・
 会社の費用でなんといっても一番大きなものは、人件費です。「給料手当」と「役員報酬」は、会社が直接支払う大きな費用です。会社によっては、まとめて給料手当と表示することもあります。退職した人に支払う「退職金」ももちろん人件費です。さらに広い意味では、「法定福利費」と「福利厚生費」も人件費と考えられます。「法定福利費」とは社会保険料、つまり健康保険、介護保険(四十歳以上六十五歳未満)、厚生年金、労働保険、の保険料の会社負担分です。
(第2章 【損益計算書編】損益計算書で会社の業績がわかる)

○ 労働分配率とは何か - 10.損益計算書の費用はここを見る①
 人件費が会社の「付加価値」に対してどのくらいの割合になるかを「労働分配率」といいます。「付加価値」とは、会社が売上げにより新たに生み出した価値のことです。たとえば、仕入値が三〇円の商品を五〇円で売り上げた場合、付加価値は二〇円になります。製造業や建設業以外の小売業や卸売業などの場合は、売上総利益と考えてよいでしょう。
 この比率に使う人件費は、広い意味での人件費です。付加価値に対して、会社がどのくらい人件費を使っているかの割合が、労働分配率です。この労働分配率が、七〇から八〇%になると、経営はかなり苦しくなります。売上総利益を上げるのか、人件費を下げるかしないと、会社はいずれ存続がきびしくなります。
(第2章 【損益計算書編】損益計算書で会社の業績がわかる)

○ 固定費と地代家賃は過大でないか - 12.損益計算書の費用はここを見る③
 人件費と比べると、金額は少なくなりますが、どの会社でもまず発生している費用があります。それは、「地代家賃」と「交際費(交際接待費)」です。
 「地代家賃」とは、会社が支払う事務所や工場や駐車場の賃借料のことです。これも毎月の固定費です。
  ・
  ・
  ・
 一度その事務所や工場を借りると、その後引っ越しすることはなかなか簡単にはできません。さらに、入居時には保証金や敷金、礼金を支払わなくてはなりません。
 会社が事務所や工場などをいくつか借りていると、その費用はバカになりません。一つひとつの家賃が売上げにどれだけ貢献しているかを、チェックする必要があるでしょう。
(第2章 【損益計算書編】損益計算書で会社の業績がわかる)

○ 費用になる交際費の一〇%は課税の対象 - 12.損益計算書の費用はここを見る③
 つぎに「交際費」ですが、交際費には、取引先や社内での接待費、あるいはゴルフのプレー代などが該当します。仕事上、使わざるを得ない交際費も当然あるでしょう。会社の資本金に応じて、一年間で会社が税務上、損金(費用)にできる交際費の金額は定められています。さらに、その枠内であっても、支払った交際費の一〇%は課税の対象になります。
(第2章 【損益計算書編】損益計算書で会社の業績がわかる)

○ 変動費と固定費の内容は? - 13.変動費と固定費に分けて考えてみよう
 費用を、売上げに連動して増減する「変動費」と、売上げの変動に関わらず一定に出ていく「固定費」の二つに分けます。
変動費は、仕入高や外注費などです。一方、固定費は、給料手当などの人件費や地代家賃などの費用です。
(第2章 【損益計算書編】損益計算書で会社の業績がわかる)

○ 経費削減は固定費で? それもと変動費で? - 13.変動費と固定費に分けて考えてみよう
 小売業を前提に、変動費を仕入高のみ、固定費をそのほかの販売費及び一般管理費と支払利息などの区分してみます。そして経常利益までの部分を、①売上高、②変動費、③固定費、とならべ替えて損益計算書をつくりなおすと、「変動損益計算書」ができます。
  ・
  ・
  ・
 変動損益計算書につくりなおしてみると、会社の費用のうち、変動費と固定費の内容がよくわかります。そして、会社の費用のうち、どこに手をつければ利益を大きくできるのか、わかりやすくなります。
(第2章 【損益計算書編】損益計算書で会社の業績がわかる)

○ 「製造原価報告書」は製造業だけがつくる - 15.製造原価報告書もみてみよう
 製造業、たとえば機械部品や食料品の製造会社などの場合、損益計算書とは別に、もう一つ「製造原価報告書」という書類をつくることがあります。これは、損益計算書のなかに、工場の費用の一覧表をつくったものです。
 「製造原価報告書」は、工場の費用を四つのグループに区分して作成することが多いようです。上から、材料費、労務費、外注加工費、製造経費です。
 「材料費」は、工場で製品を製造するために必要な原材料の仕入高に、期首原材料棚卸高と期末原材料棚卸高をプラスマイナスして、原材料の原価を計算します。
 「労務費」は、工場で働く人の賃金、法定福利費などを計上します。
 「外注加工費」は、社外に外注を依頼した場合の費用が計上されます。
 「製造経費」は、それ以外のさまざまな工場で使う費用が計上されます。
(第2章 【損益計算書編】損益計算書で会社の業績がわかる)










← 第1章                                                       第3章 →
トップページ