新会社法対応 決算書の読み方が面白いほどわかる本(第3章 【貸借対照表編】貸借対照表で会社の財政状況がわかる)

落合 孝裕 (著) 2006年6月20日


○ 資金の出どころもわかる - 17.貸借対照表は苦手というけれど・・・
 ここで、ちょっとプライベートなことを考えてみてください。みなさんが結婚相手を品定めする(あるいはされる)ときのことです。最初は、愛情から始めっても、いざ結婚ということになると、相手の経済力は大いに気になりますね。「年収はどのくらいかな」「貯金はいくらあるのかな。いい車やマンションももっていればラッキー」「でも、ローンはまだ多いのかしら」、現実的な問題ですね。
 決算書に置き換えると、年収は損益計算書の売上高、貯金や車やマンションは、貸借対照表の資産の部となります。これらの資産の出どころは、自分の給料から貯めたか(「純資産の部」の「利益剰余金」)、親からの援助か(同資本金)、銀行などからのローンか(「負債の部」の「借入金」」のいずれかでしょう。
 年収は多い方がよいでしょうが、たとえ少なくても、資産がたくさんあれば、堅実で頼りになる、つまり安定性が高いことになるでしょう。逆に、年収が一時的に多くても、ローンの残高がかなりあると、今後の家計の安定性に問題があり、ということになるでしょう。人生の大きな決断のときには、相手を知らず知らずのうちに、損益計算書のみならず、貸借対照表にも分析しているようです。
 おなじように、自分の会社や取引先をチェックするときに、損益計算書だけでなく、貸借対照表もみることは、たいへん大切なことなのです。これは、銀行などがみなさんの会社にお金を貸すときに、重視していることです。たまたま、今期利益が出ても、これまでの累計の利益があまりない会社には、金利を高めにして貸し付けることがよくあります。
(第3章 【貸借対照表編】貸借対照表で会社の財政状況がわかる)

○ 純資産が大きいと会社も家計も安定する - 18.貸借対照表を自分の家計でつくってみよう
 まず手始めに、ご自分の家計で、貸借対照表をつくってみましょう。ご自分の家計で資産になっているもの、負債になっているものをあげてみましょう。資産には、預金、マイホームや車、家財やパソコン、あるいは保険の積立金などがあるでしょう。金額はそれぞれに入れて、資産の部の合計額を計算します。
 一方、負債には、カードで買い物をしているときのいま現在の未払金の額、あるいはマイホームを借入金で購入している場合には借入金の残額があるでしょう。
 通常、左の資産と右の負債を計算すると、左の資産のほうが多いのではないでしょうか。左側の「資産の部」と右側の「負債の部」の差額が、「純資産の部」ということになります。個人は会社ではありませんので、資本金はありません。「元入金(もといれきん)」という科目になります。いままでの収入から費用や税金を引いていった残りが、結果的に元入金となります。
 純資産の部が大きなご家庭は、かりに今年や来年の収入が少なくなって、家計が赤字になったとしても、しばらくの間は十分にやっていけるということになります。会社でいうと、財政面で安定している状態です。加えて、不動産に含み益でもあれば、金融機関はぜひともお金を貸したくなります。
(第3章 【貸借対照表編】貸借対照表で会社の財政状況がわかる)

○ 左右の合計額がおなじだから“バランスシート”という - 19.貸借対照表はどんな構成になっているのか
 今度は、会社の貸借対照表をみてみましょう。左側は資産の部、右側が負債の部と純資産の部の三部構成になっています。そして、左側の資産の部合計と、右側の負債の部と純資産の部の合計額は、ぴったりおなじ金額になっています。貸借対照表のことを、英語ではバランスシートといいます。左右がおなじで金額でバランスしているという意味です。
 左側が、会社が所有している資産です。お金がどのように使われて、どのような資産に化けているかがわかります。これをむずかしい言葉で「運用形態」ともいいます。右側は、その資金の出どころになります。どのようにお金を調達しているのか、ということで「調達源泉」ともいいます。
(第3章 【貸借対照表編】貸借対照表で会社の財政状況がわかる)

○ 貸借対照表の内容は? - 19.貸借対照表はどんな構成になっているのか
 資産の部は「流動資産」、「固定資産」、「繰延資産」と、三つに分かれています。
 負債の部は「流動負債」、「固定負債」の二つに分かれ、その下が純資産の部となります。
 純資産の部には、ふだん聞きなれない言葉がならんでいます。「資本金」は、会社を設立したときに株主が出資したお金ということです。また、途中で増資した場合には、その増資した金額も資本金に加算されます。つぎの「利益剰余金」は「利益準備金」と「その他利益剰余金」とに分かれます。
 利益剰余金は、会社がいままでに儲けた利益から法人税などの税金を引いた残り、つまり損益計算書の「当期純利益」の累計額ということになります。この利益剰余金が大きいほど、過去の利益の蓄積が大きいことになります。
(第3章 【貸借対照表編】貸借対照表で会社の財政状況がわかる)

○ 流動資産とは一年以内に現金化できる資産のこと - 20.「資産の部」を詳しく見てみよう①
 資産の部は、会社の資金の運用形態、つまり資金の使い道を一覧にしたものです。そのなかで流動性が高いもの、つまり近いうちのお金になるものを集めたものが、「流動資産」です。
 流動資産と固定資産の区分は、一年以内に現金化できるか否かということです。
 流動資産のなかは、現金化の流れの順に、下から上へとならんでいます。商品を掛けで売り上げると売掛金になり、それが手形で回収されると受取手形になります。そして、手形の期日になると現金になる・・・、というふうにならんでいます。
(第3章 【貸借対照表編】貸借対照表で会社の財政状況がわかる)

○ 固定資産の内容は三つに分かれている - 20.「資産の部」を詳しく見てみよう①
 「固定資産」は、目に見える有形固定資産と目に見えない無形固定資産、有価証券などの「投資その他の資産」に分かれます。まずは有形固定資産からみていきましょう。
 「建物」は、会社所有の建物のことです。「建物付属設備」は、建物に付属する電気設備、ガス設備、給排水設備、空調設備などのことです。「機械装置」は、会社の工場などにある機械のことです。「車両運搬具」は、自動車のことで、フォークリフトなどの特殊車両も含みます。「工具器具備品」は、テーブル、パソコン、コピー機などのその他のもので、「土地」は、土地やマンションの敷地部分のことです。
(第3章 【貸借対照表編】貸借対照表で会社の財政状況がわかる)

○ ソウフトウェアは五年間で償却できる - 21.「資産の部」を詳しく見てみよう②
 つぎに「無形固定資産」から下の部分をみていきましょう。「電話加入権」は電話回線を引く際に支払う負担金のことです。「ソフトウェア」は、パソコンのソフトのことです。電話加入権は、減価償却をすることができませんが、ソフトウェアについては、原則として五年間で月割りで減価償却することになっています。
 固定資産の一番下は、「投資その他の資産」です。「投資有価証券」は、会社が長期で保有している株や債券のことです。「保険積立金」は、積立型の生命保険や損害保険の積み立てられた金額の残額です。そのほか、「保証金」という科目で、家賃の保証金などを計上することもあります。
(第3章 【貸借対照表編】貸借対照表で会社の財政状況がわかる)

○ 「負債の部」は外部から調達した資本 - 22.「負債の部」を詳しく見てみよう
 負債の部は、「他人資本」と呼ばれることもあります。会社以外の“他人”から調達した資本をあらわしているからです。
 負債の部は、「流動負債」と「固定負債」に分かれます。流動負債と固定負債の区分は、資産とおなじように、一年以内で期限が来るか否かで判断します。
 「支払手形」は、自社で振り出した手形のうち、まだ決済されていないものの残高です。「買掛金」は、掛けで仕入れた商品の未払分の金額です。つぎの「短期借入金」は、会社が借り入れた借金のうち、一年以内に返済期日が到来するものです。「預り金」は、社員の給料を払う際に、源泉所得税、社会保険料、住民税などを預かっている金額の末期の残高です。「未払金」は、仕入れ以外の一般の経費のうち、未払いのものです。「未払法人税等」、「未払消費税」は、いずれも決算時における税金の未払分です。
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○ 準備金の積み立ては配当金の一〇分の一 - 23.「純資産の部」を詳しく見てみよう
 貸借対照表の右側の下が「純資産の部」です。「資本金」は会社を設立するときに株主が出資した金額と、その後、増資をして増えた金額があれば、その合計額になります。
 「資本剰余金」は、時価発行で増資した際に、資本金に組み入れない金額などです。資本金を振り替えたものといえます
 「利益剰余金」は、会社の設立以来の利益(税引後の利益)です。つまり、損益計算書の「当期純利益」のいままでの合計額のことです。過去に利益をコンスタントに稼いでいる会社は、この利益剰余金が大きな額になっています。「利益剰余金」のうちの「利益準備金」は、会社が配当した場合に、配当金の一〇分の一の金額を積み立てたものです(会社法の施行により「資本準備金」といずれかで一〇分の一の金額の積み立てでよいことになりました)。「その他利益剰余金」の一部を振り替えたものといえます。
 そのほかに「評価・換算差額等」、「新株予約権」といった特殊なものを必要に応じて記載することになっています。
(第3章 【貸借対照表編】貸借対照表で会社の財政状況がわかる)

○ 自己資本比率は高いほどよい - 23.「純資産の部」を詳しく見てみよう
 負債の部と純資産の部を合計した金額を「総資本」といいます。これは左側の「資産の部」の合計、つまり「総資産」と一致します。総資産イコール総資本ということです。
 総資本に対して、純資産の部つまり自己資本が占める割合を「自己資本比率」といいます。金融機関が決算書で重視する指標の一つで、大きい方が経営の安定した会社です。
(第3章 【貸借対照表編】貸借対照表で会社の財政状況がわかる)

○ 流動比率と当座比率で会社の安定度がわかる - 24.貸借対照表も比率で理解を深めよう
 貸借対照表も、比率をみると理解が深まります。貸借対照表の左側と右側の各部分を比較してみましょう。
 まず、左側の「流動資産」と右側の「流動負債」をくらべたのが、「流動比率」です。いずれも一年以内に清算されるものですが、これをくらべて会社の安定度をみます。
 流動資産が、流動負債より大きければ、当面の支払いには不安がないということです。したがって、流動比率は最低でも一〇〇%、できれば二〇〇%以上が望ましいとされています。一〇〇%未満の会社は、支払能力に少し不安があることになります。
 流動比率をもう少しきびしくしたのが「当座比率」です。当座比率は、流動資産から商品などの棚卸資産を差し引いて、流動負債と比較したものです。まだ売れていない棚卸資産を除くことにより、すぐに資金化できる資産のみをピックアップしたことになります。この当座比率が一〇〇%以上ならば、会社の当面の支払能力は問題ないことになります。
(第3章 【貸借対照表編】貸借対照表で会社の財政状況がわかる)

○ 架空の売上げによる架空の売掛金を計上する - 27.粉飾決算によるひずみは貸借対照表にあらわれる
 「粉飾決算」という言葉を、聞いたことがあるでしょうか。実際は赤字の決算なのに決算書の見栄えをよくするために、無理やり黒字にしたような決算をいいます。上場企業であれば、株価の引き上げや株主への配当ために、中小企業であれば、金融機関からの借入れのために、決算を黒字にみせかけることがあります。
 本来赤字決算なのに無理に黒字決算にすると、そのひずみは貸借対照表にあらわれます。貸借対照表を、前期あるいは三期間、五期間くらべることによって、粉飾決算がわかることがあります。
(第3章 【貸借対照表編】貸借対照表で会社の財政状況がわかる)

○ 粉飾決算は流動資産の諸勘定の増加でわかる!? - 27.粉飾決算によるひずみは貸借対照表にあらわれる
 売掛金の残高を比較してみると、粉飾のために架空売上げを計上した会社は、売掛金が売上高の伸びにくらべて、増えていく傾向にあります。また、棚卸資産で調整すると、前期とくらべて、棚卸資産が異常に多くなってしまいます。あるいは仮払金が増えているケースもあります。
 仮払金は、土地などを購入する場合の手付金のようなものもありますが、会社が社員や役員に支給する「費用の前払い」的なものもありあす。費用の前払いともいうべき仮払金が決算書に三○○万円あると、本当の利益は会社の決算書より三○○万円少なくなることになります。決算書上は、仮払金という資産ですが、実際は費用のかたまりだからです。
 このように粉飾決算をした場合には、資産の部の、とくに流動資産の諸勘定が多くなる傾向にあります。
(第3章 【貸借対照表編】貸借対照表で会社の財政状況がわかる)

棚卸資産回転率や売上債権回転率は多いほど効率がよい - 28.損益計算書と貸借対照表を比較してみよう
 損益計算書の売上高と、貸借対照表の流動資産のいずれかの項目を比較します。売上高と商品などの棚卸資産を比較するのが、「棚卸資産回転率」です。この指標で、会社の棚卸資産が年間何回転して売上げになっているかがわかります。棚卸資産回転率が多ければ多いほど、効率的に商品を売り上げていることになります。
 つぎに、売上高と、受取手形及び売掛金の合計額を比較する「売上債権回転率」をみてみましょう。この指標をみると、会社の売上債権が、年間何回転しているかがわかります。
(第3章 【貸借対照表編】貸借対照表で会社の財政状況がわかる)

○ 総資本回転率と総資本経常利益率で会社の効率性がわかる - 28.損益計算書と貸借対照表を比較してみよう
 売上高を総資本で割った「総資本回転率」をみてみましょう。会社がもっている資産が、どれだけ効率よく使われているかがチェックできます。この回転率が多ければ多いほど、効率的な経営といえます。
 さらに、経常利益を総資本で割った「総資本経常利益率」をみてみましょう。この指標では、会社がもっている資産を使って、どれだけ効率よく経常利益を稼いでいるかがわかります。当然、利益率は高いほどよいといえます。総資本(分母)がそのままで経常利益(分子)が増えれば、利益率(効率)は上がります。
(第3章 【貸借対照表編】貸借対照表で会社の財政状況がわかる)










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