株は「逆張り」がおもしろい(第4章 カラ買い・カラ売り・つなぎ売り)

小林 正和 (著) 2001年3月


○ 信用取引のリスクとメリット - カラ買いで損を小さく儲けを大きくする技術
 信用取引にはメリットもあるが、それ以上にリスクの多い取引である。だから私は、やったことのない人には絶対に奨めない。リスクを自覚して、それでもやりたい人だけがやるものであると考えている。
 しかし、いくら自覚していても、年輩の人はやめたほうがよい。歳を取ってから一財産を失くすのは、はたで見ているだけでとても切ない。取り返しはきかず、惨めな老後が待っている。私はそんな実例をいくつも知っている。
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 いいかえると、信用取引を利用すれば、投資家は実力以上に株が買える。ただし、その分は間違いなく借金である。その自覚はしっかりと持っていなくてはならない。失くして暮らしに支障がくるおかねでは、信用取引はしないのが原則である。
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 「メリットは現物だけの場合の二倍、損は三倍」と見ておいたほうがよい。メリットよりリスクのほうがはるかに大きいのが信用取引なのだ。
(第4章 カラ買いカラ売りつなぎ売り)

○ 下げ相場では追い証と期日がこわい - カラ買いで損を小さく儲けを大きくする技術
 カラ買いのリスクは、下げ相場では急拡大する。その原因となるのが、(1)追い証(=追加保証金。顧客の思惑が外れ、カラ買いした株が値下がりしたり、カラ売りしたり株が値上がりして計算上の損が出たとき、証券会社から要求される)と、(2)期日(三カ月か六カ月。建玉する際に選択する。指示しなければ六カ月)である。
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 カラ買いをする人のほとんどは、現金担保ではなく証券(主に株券)を担保としている。現金の用意はないか、あってもわずかである。カラ買いした株が値下がりするときには、たいてい手持ちの現物株も値下がりしている。信用の建玉を投げると相当な損金が出る。現金の用意がないか、あっても少しなら、その損金を埋めるために大幅に値下がりした現物株を処分しなければならない。損は二重になるので、自分で考えているより傷は深くなる。
(第4章 カラ買いカラ売りつなぎ売り)

○ 腹一杯買うな、一回のミスが命取りになる - カラ買いで損を小さく儲けを大きくする技術
 投資相談は、大儲けしている人からはめったにこない。くるのは、ほとんど引かれ玉を抱えて困っている人たちである。予想以上の激しい下げのあとでは、必ず何件か「追い証攻めにあって投資資金の大半がなくなってしまいそう」という深刻な相談がある。
 とくにそういう相談が急増したのは、バブル崩壊直後の一九九〇(平成二)年二~三月と八~九月である。この時期、二~三か月で平均株価は三〇~三五%も下げた。人気株があっという間に、半値~三分の一になった。証券会社ではどこも追い証の処理に追われていた。ほとんどの証券会社で、バブル期に活発な売買を繰り返していたカラ買い派の大半が死んだ(証券会社内では顧客が再起不能の損失を蒙ることを「客が死んだ」という)。無理もない。戦後最大の下げに備える資金と心の準備をしていた人はほとんどいなかったはずだから。
 私が相談を受けたケースも、たいていは手遅れだった。何度も追い証を差入れ、資金的なゆとりはすでになく、精神的にも追いつめられていた。“見切り”以外に方法は残されていなかった。それはご本人たちも自覚はしていた。しかし自分では見切の決断ができず、私に「死刑執行宣言」を求めていたのだ。多くの人は「先生が切れというなら切る」といった。私にいい知恵があるはずもなかった(そういうときは、私もそれなりの傷を負っていた)。
(第4章 カラ買いカラ売りつなぎ売り)

○ “信用取引銘柄別残高”の実践的活用法 - カラ買いで損を小さく儲けを大きくする技術
 売残が発行株数の一〇%を超えたら踏み上げ期待の相場になりやすい。上げ相場では買残もふえるが、売残が発行株数の二〇%以上にふくらんで株不足になったときの逆日歩は容易なことでは解消せず、つく逆日歩も大きい。売り方が逆日歩を嫌って買い戻すので、踏み上げを伴った大きな上げ相場になることが多い。
 売残があまりふえず買残が増加して、発行株数の一〇%を超えるようだと、上げ足が鈍るか、反転に転ずる。大型株では買残が発行株数の一〇%を超えることはめったにないが、五〇〇〇万株を超えれば相当株価の重荷になる。買残が大幅にふえたあと株価が伸び悩み反落に転ずるのは天井打ちの顕著な微候である。
(第4章 カラ買いカラ売りつなぎ売り)

○ カラ売りはとてもリスキー - リスキーなカラ売りで勝つ方法と損を小さくとどめる踏み方
 明らかにされた資料はないが、カラ売りをする人はカラ買いをする人よりもはるかに少ないことはたしかである。貸借倍率はならして五対一くらいで推移している。
 理由はいろいろ考えられる。リスクが大きいことを投資家が認識しているから、というのも一因であろう。
 担保を入れ不足資金を借りて行うカラ買いはだれにも比較的理解しやすいが、持っていない株を売るというカラ売りは、多くの人が理解しにくい、ということも理由の一つである。
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 カラ買いやカラ売りがリスクの高い取引となるのは、“投資家にとって、信用取引は証券会社に手の内をさらしたゲーム”でもあるからだ。自分たちの行動が証券会社に知られている結果、逆用されることが往々にしてある。
 手の内をさらした弱点は、カラ買いよりもカラ売りのときにより強く出る。買い戻すしかほかに決済方法がないためであろう。
 大手証券会社は、店内でカラ買いが堆積して値動きの重くなった銘柄をディーラー部門で売り抜けたり、大口投資家に売らせたりする。カラ買いの堆積は“売りの予約切符”を貯め込んでいることであり、下がるリスクが高いと考えられるからだ。
(第4章 カラ買いカラ売りつなぎ売り)

○ つなぎ売りの奨め - つなぎ売りで成功するコツ
 “つなぎ売り”というのは手持株が値下がりしそうなとき、現物を売らずに、その銘柄をカラ売りしておくことである。
 こうしておけば、手持株が値下がりしても、カラ売りした分については値下がりによって差益が生ずるので、手持株の値下がり分がカバーできる。
 つなぎ売りは、現物を持ってカラ売りだから、純然たるカラ売りと違い、決定的な失敗を犯すということがない。たとえ見込み違いをして、つなぎ売りしたあと値上がりしたとしても、儲けそこなうだけのことで実損が出るわけではない。
 前述したが、私は原則として個人投資家に信用取引は奨めない。むしろこれまで、やっている人たちにも信用取引のリスクを説明して「なるべき止めるように」といってきた。大きな見込み違いをして、予想もしないような深傷を負って後悔した人たちをたくさん見てきたからである。
 しかし、現物を持って行うつなぎ売りだけは、積極的に奨めてきた。リスクが小さくメリットが大きいからである。
(第4章 カラ買いカラ売りつなぎ売り)

○ 理想的なつなぎ売り - つなぎ売りで成功するコツ
 つなぎ売りでは現金は手許に入らない。このためほかの銘柄は買えない。それが過熱時には幸いするのだ。
 つなぎ売りには、銘柄の質を落とさない、という利点もある。実戦投資家なら一度ならず次のような経験をしたことと思う。
(第4章 カラ買いカラ売りつなぎ売り)

○ つなぎ売りの成功のポイント - つなぎ売りで成功するコツ
 つなぎ売りは、手持株の過熱局面で行えば成功しやすい。一相場終了型チャートを確認して行うのもミスが少ない。しかし、過熱や一相場終了を確認せず容易にいつなぎ売りをすれば、なにもしなかったより結果が悪くなる。
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 平均株価やTOPIXが天井を打ち、個別銘柄も下げトレンドに入ったらどうするか?その場合は、売りつないだ分を急いで買い戻してはならない。買い戻したあと一段安になることがしばしばあるからである。
 売りつないだ株が急落したらどうするか?一部は期日まで売り放しにするつもりでそのままにしておく。しかし一部は買い戻す。買い戻した分はリバウンドしたらまた売りつないで、底を打つまでついていくのがよい。
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 発行株数規模でいうと、大型株のつなぎ売りは、失敗が少なく成功しやすい。
(第4章 カラ買いカラ売りつなぎ売り)


 









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