株式投資で損をしない会社を見抜く方法(第5章 カネから危ない会社を見抜く方法)

高橋 要 (著) 2009年2月


1.決算書を読み解く3つの視点 - 第1節 財務分析を上手く行うコツ
 ※ 決算書分析の目の付け所は3つ
 決算書を見るときの視点は、大きく3つです。
 上手く儲けているかの「経済性」、潰れないかの「安全性」、伸びているかの「成長性」です。

 ※ 経済性は、収益性、生産性、効率性で見る
 経済性は、さらに収益性、生産性、効率性に分けてみることができます。
 会社が上手く儲けているかを見るのが「収益性分析」です。売上や資本に対して利益がしかり出ているか、費用は過大でないかなどです。
 従業員1人あたりなどの生産力を見るのが「生産性分析」です。
 いかに少ない資本や負債で売上や利益を出したかを見るのが「効率性分析」です。

 ※ 安全性
 会社が潰れそうにないかを見るのが「安全性」です。在庫が過剰、借金が多すぎる、自己資本が少ないなどは、安全性の面で問題です。

 ※ 成長性
 会社がこの先も成長し、儲けを出し続けられるかを見るのが「成長性」の分析です。
 売上高や収益が過去に比べて増えているのか、収益性や生産性は上がっているかなどを見ます。
(第5章 カネから危ない会社を見抜く方法)

1.経済性の分析フレームワーク - 第2節 経済性を分析する!
 ※ 儲かっていないから危なくなる
 会社は、最終的に、利子等が支払えなくなって潰れるのですが、その背景として、会社が儲からなくなっていたという共通点があります。
 ですから、会社が上手く儲けているかどうかの「経済性」を確かめることは、危ない会社を見抜くためには必須の作業なのです。

 ※ 経済性分析1「収益性」
 儲けがちゃんと出ているか、その出方がどうなっているかの「収益性」を見ます。収益性を見るには主に3種類の指標を用います。
 売上に対して各種利益がどれだけしっかり出ているかを見る指標が「利益率」です。
 利益が出ない原因が、費用が大きすぎるからではないかを確認する指標が「費用率」です。
 売上を上げればよいといっても、どれだけ売れば利益が出るのかを見定める必要があります。それを確かめる指標が、「損益分岐点」です。

 ※ 経済性分析2「生産性」
 売上が上がっていない場合、ヒトやモノを上手く使えていないからではないかを確認するために、「生産性」を見ます。

 ※ 経済性分析3「効率性」
 儲かっていても、儲けるために沢山の元手が必要だったのなら、あまり利益は得られません。そこで、元手である資本や負債をどう上手く使って売上を上げたのかという「効率性」を見るための指標が、様々な「回転率」です。
(第5章 カネから危ない会社を見抜く方法)

3.資本を活用して儲けているか? - 第3節 収益性を分析する!
 ※ 総資本経常利益率
 「総資本経常利益率」は、会社の収益性を総合的に表す最も基本的な指標といえます。
 会社が投下した総資本に対してどれだけの経常利益をあげたかを見ます。貸借対照表の総資本(=総資産)が、投下資本です。これに対する利益が損益計算書の経常利益です。
  ・総資本経常利益率(%)=経常利益÷総資本×100
(第5章 カネから危ない会社を見抜く方法)

4.利益はしっかり出ているか? - 第3節 収益性を分析する!
 ※ 売上高営業利益率
 「売上高営業利益率」は、営業利益が売上高に占める比率です。ここがマイナスだと、本業が成り立っていないことになります。
  ・売上高営業利益率(%)=営業利益÷売上高÷100
(第5章 カネから危ない会社を見抜く方法)

6.営業費用は多すぎないか? - 第3節 収益性を分析する!
 ※ 売上原価率
 利益を増やすには、売上や収益を上げる一方で、余分な費用を減らす必要があります。
 「売上原価率」は、売上高に占める売上原価の比率です。
   ・売上原価率(%)=売上原価÷売上高÷100
 売上原価が多すぎると、粗利益が減ります。余分な原材料費などを使わずに売上に結び付けたかを見るのが売上原価率です。
(第5章 カネから危ない会社を見抜く方法)

7.金融費用は多すぎないか? - 第3節 収益性を分析する!
 ※ 売上高支払利息率
 売上高から支払う支払利息の負担度合いを見てみることも大事です。
  ・売上高支払利息率(%)=支払利息÷売上高÷100
 この比率が高くなると危険です。借入金の多い会社は、支払利息が重くのしかかり収益性の低下に苦しむことになります。一般には、3%くらいまでなら安全で、7%を超えてくると会社の資金繰りが苦しくなり、10%を超えると会社が危ない状態にあるといわれます。
(第5章 カネから危ない会社を見抜く方法)

1.労働生産性は落ちていないか? - 第4節 生産性を分析する!
 ※ 付加価値
 会社は、ヒト、モノ、カネといった資源を使って新しい価値を生み出し、顧客に提供して対価を得ます。たとえば、砂糖と小麦粉を仕入れてオーブンという設備で焼いて、ドーナツという全く別の形の商品が生み出されます。そして、それを販売して利益が生まれます。新たに付け足された価値を、「付加価値」と呼びます。
 売上高のうち、外部から購入した価値を表し引けば付加価値になります。
 販売業であれば、売上高から仕入れ値を引いたもの、すなわち売上総利益が付加価値です。
 製造業の場合は、売上高から売上原価のうち原材料費などの外部購入費に当たるものを引いたものが付加価値になります。
  ・付加価値(円)=売上高-外部購入価値
(第5章 カネから危ない会社を見抜く方法)

2.資本資産性は落ちていないか? - 第4節 生産性を分析する!
 ※ 資本生産性
 「資本生産性」は、会社に投下した資本1単位でどれだけの付加価値を生み出したかをみる指標です。モノの生産性に着目します。
  ・資本生産性=付加価値÷総資本
(第5章 カネから危ない会社を見抜く方法)

1.資本は有効に活用されているか? - 第5節 効率性を分析する!
 ※ 総資本回転率
 総資本経常利益率を改善する手段の一つが、総資本回転率すなわち「効率性」の改善です。
 会社は、自己資本や借入金という資本を投下して原材料を買い、製品を作って、あるいは商品を仕入れて、販売して売上として回収します。
 ここまでが「資本の1回転」です。そして、会社は売上から得られた利益を使ってまた原材料を買うという次の回転に入って行きます。
 投下した資本が、年間に何回転して、売上高としてどう回収されたかを見るのが「総資本回転率」です。
  ・総資本回転率(回)=売上高÷総資本
  ・
  ・
  ・
 できるだけ少ない資本で、できるだけ多くの売上高を上げれば、回転率が高くなり、資本が有効に活用されたことになります。
(第5章 カネから危ない会社を見抜く方法)

2.流動資産の活用に問題はないか? - 第5節 効率性を分析する!
 ※ 売上債権回転率
 売掛金と受取手形は商品の代金を後で受け取る権利で、あわせて売上債権といいます。この売上債権が、どのくらいの期間で現金として回収されたかを見るのが「売上債権回転率」です
  ・売上債権回転率(回)=売上高÷売上債権
 売上債権回転率が高いということは、売上債権の回収状況がよいということです。低いということは、会社の資金繰りがよくないということです。過去比較で悪化していないかを見ることは危ない会社を見抜くうえで重要です。
(第5章 カネから危ない会社を見抜く方法)

4.在庫の回転に問題はないか? - 第5節 効率性を分析する!
 ※ 棚卸資産回転率
 棚卸資産が必要以上に多くなれば、在庫保管費用はかかりますし、資金繰りは悪くなります。
 棚卸資産が異常に増えていないかを確認するのが「棚卸資産回転率」や「棚卸資産回転日数」です。
  ・棚卸資産回転率(回)=売上高÷棚卸資産
  ・棚卸資産回転日数(日)=棚卸資産÷(売上高÷365日)
 棚卸資産回転率が高くなれば、製造から販売へと事業が上手く回っていることになります。
 棚卸資産回転率は、過去比で下がってきていたら要注意です。物が売れていない、返品が多い、製品化するのに時間がかかっている、在庫管理の不備などの原因で製品や原材料が溜まってしまっていることが考えられます。
(第5章 カネから危ない会社を見抜く方法)

1.現金は不足していないか? - 第6節 安全性を分析する!
 ※ 安全性分析
 会社がいくら儲かっていても、おカネの支払いができなければ会社は潰れてしまいます。たとえ決算上は利益が出ていても、その中身が売掛金や減価償却費だったりすると、手元に現金が足りずに、支払うものが支払えず、「黒字倒産」が起こってしまいます。このような「勘定合って銭足りず」の状態にある会社は要注意です。利益だけを見ていると一見問題ないように見えるからです。株式投資家は、そうなる前に予兆を発見しなければなりません。
 「安全性分析」は、現金でお金を返せるかどうか(当座の支払い能力)、返すための裏付け資産が十分あるかどうか(将来の支払い能力)を確認するために行います。
(第5章 カネから危ない会社を見抜く方法)

2.短期の負債は大きすぎないか? - 第6節 安全性を分析する!
 ※ 流動比率
 「流動比率」は、流動資産と流動負債を比べることで、短期の資産で短期の負債を十分カバーできているかを見ます。
  ・流動比率(%)=流動資産÷流動負債×100

 ※ 当座比率
 会社の支払い能力をさらに厳しく見るのが「当座比率」です。流動資産の中でも、特に換金性の高い現金預金や売掛金などの当座資産を取り出して、それで流動負債をカバーできるかを見ます。
  ・当座比率(%)=当座資産÷流動負債×100
 当座資産=現金預金+受取手形+売掛金+有価証券
(第5章 カネから危ない会社を見抜く方法)

3.長期の資産は大きすぎないか? - 第6節 安全性を分析する!
 ※ 固定比率
 「固定比率」は、固定資産を株主資本でどれだけ賄えているかを見ます。
  ・固定比率(%)=固定資産÷株主資本×100
 機械装置などの固定資産は、耐用年数が10年、20年といった長期間になります。固定資産は、株主資本のような返済を要しない自前のお金で賄われることが望ましいのです。
(第5章 カネから危ない会社を見抜く方法)

4.自己資本は不足していないか? - 第6節 安全性を分析する!
 ※ 自己資本比率
 会社の長期的な安全性は、自前資本の自己資本が大きいほど高くなります。「自己資本比率」は、総資本に占める自己資本の比率です。
  ・自己資本比率(%)=自己資本÷総資本×100
 自己資本比率は、株主資本比率とも呼ばれ、比率が高いほど、会社は安全とされます。
(第5章 カネから危ない会社を見抜く方法)

5.借金は大きすぎないか? - 第6節 安全性を分析する!
 ※ 負債比率
 負債が多すぎると、返済の増加が会社の利益を圧迫し、資金繰りを悪化させます。
 「負債比率」は、自己資本に対する負債の大きさを見ることで、負債が多すぎないかどうかを確認する指標です。
  ・負債比率(%)=負債÷自己資本×100
 負債を自前の資金である自己資本の範囲内に抑えている、すなわち負債比率100%以下が望ましい状態といわれています。自己資本比率で言えば50%以上です。
(第5章 カネから危ない会社を見抜く方法)

2.利益率や生産性は伸びているか? - 第7節 成長性を分析する!
 ※ 売上高利益率の変化
 売上、収益、利益の絶対額の伸び率を見るのと同時に、収益性をどう変化しているかを確認するため、「売上高利益率の変化」も見ておく必要があります。
  ・売上高利益率変化(%)=当期売上高利益率÷前期売上高利益率×100
 利益には、営業利益、経常利益、当期純利益の各種利益を持ってくることができます。
 売上高利益率が低下していれば、売上原価率、売上高販管費率、売上高金費用率などが上がって費用負担が増していることが考えられます。
(第5章 カネから危ない会社を見抜く方法)

1.キャッシュフローは出ているか? - 第8節 キャッシュフローを分析する!
 ※ 営業CF、投資CF、財務CF
 まず、「営業キャッシュフロー」がプラスである必要があります。営業CFが小さい、あるいはマイナスの会社は健全ではありません。
 「投資キャッシュフロー」はマイナスになるのが普通です。設備投資などで現金の支払いが多くなるからです。もし投資CFがプラスなら、土地や株式を売却した代金が多く入ってきた可能性があります。その理由が、資金繰りに追われて現金を捻出するためだったのなら問題です。
 「財務キャッシュフロー」の良し悪しは内容によります。借入による大きなプラスのキャッシュフローであれば、不相応な借金でないか確認する必要があります。もし配当や自己株式の取得といった株主優遇のための現金支出であれば、むしろ評価されるべきことといえます。
(第5章 カネから危ない会社を見抜く方法)

2.キャッシュフローは問題ないか? - 第8節 キャッシュフローを分析する!
 ※ 会計発生高
 「会計発生高」は、損益計算書の当期純利益と、キャッシュフロー計算書の営業キャッシュフローのズレを見る指標です。
  ・会計発生高(円)=当期純利益-営業CF
 この数字は低い方が良く、マイナスであれば問題ないということになります。
 当期純利益と同等以上の営業キャッシュフローが出ているかを見ることで、本業でしっかりキャッシュを稼いでいるかどうかを確認します。
 会計発生高がプラスなら要注意です。粉飾でないにしても、会計上の操作により、利益を多く見せかけていないかを確認しましょう。売掛金や棚卸資産を増加させたり、費用を小さくしたりすることで、見かけの上の利益を増やすことができます。
(第5章 カネから危ない会社を見抜く方法)

1.粉飾決算をしていないか? - 第9節 その他の分析する!
 ※ なぜ粉飾してしまうのか?
 特に、業績が思わしくない、借金が返せないような状況にある危ない会社は、粉飾をしてしまうことがあります。最終損益が赤字だと、銀行から融資を受けにくくなりますし、株が売られ株価が下がり、最終的には上場廃止になってしまう恐れがあるからです。
 上場会社の決算書は、監査法人の監査を受けていますが、会社が上手く隠してしまった場合、監査法人も見抜けないことがあります。

 ※ 粉飾決算の主な手口
  ・売上や利益を前倒しにする、架空計上する
  ・費用を先送りする、計上しない
  ・資産を評価替えする、架空計上する
  ・負債を評価替えする、負債を計上しない
  ・子会社へ赤字を転換する
(第5章 カネから危ない会社を見抜く方法)

3.株価は下がり続けていないか? - 第9節 その他の分析する!
 ※ ファンダメンタルズ悪化に伴う連続的下落
 株式投資家は、会社を分析した上で危なそうなら株を売ります。ファンダメンタルズが悪化している会社は、株価が連続的に下がっていく傾向があります。その下げ幅や期間は会社や投資環境によって様々ですが、同業他社の株がそれほど下がっていないのに、当該会社の株だけ下がり続けていたら、ファンダメンタルズを確認しましょう。
 特に、経営者や大株主といった内部関係者や外国人の売りが目立つときには要注意です。
(第5章 カネから危ない会社を見抜く方法)











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