なぜか日本人が知らなかった新しい株の本(第4章 価値の「源泉」を見抜くには?)

山口 揚平 (著) 2005年7月20日


1.結果をもたらす原因に目を向けよ
 ※ 「過去の結果」から「将来の結果」は生まれない
 世の中はすべて、因果関係で成り立っています。原因があって、結果があります。肝心なことは、結果を生む原因、つまりその会社が価値を生み出す「しくみ」を暴くことです。このしくみを暴くことができるようになれば、結果の数字に惑わされずに本当に良い会社を見つけられるようになるでしょう。
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 ※ 利益の源泉を見抜く4つの質問
 企業が利益を出すためには、なんらかのしくみが必要です。
 私が投資をする際には、いつも次の4つの質問を自分に投げかけています。
  ① その企業は「なに」で稼いでいるのか?
  ② 「なぜ」稼げているのか?
  ③ 今後、稼げるしくみに変化はあるのか?
  ④ これから「いくら」稼げるのか?
 投資家が本当に知りたいのは、当然、「④これから『いくら』稼げるのか?」です。しかし、これを知るためには多少の回り道が必要です。それが右の①~③を考えることなのです。
 ところがほとんどの人は、このような回りくどいことはしていません。
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 ※ 木を見る前に森を見よ
 問い① 「なに」で稼いでいるのか?
 ほとんどの企業は、事業の複合体であり、さまざまな製品を販売しています。ドル箱商品もあれば、なかには“みそっかす事業”もあります。たくさんの事業や製品群を全部見るわけにはいきません。そこでまずは、企業の業績がいったいどの事業や製品によってもたらされているのか、を分析し、なにが企業価値の大半を占めるのかを知る必要があります。
 有価証券報告書や『会社四季報』を見ると、どの事業でどのくらいの売上や利益を稼いでいるかがわかります。
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 事業や地域、顧客の軸で、売上や利益を分解してばらばらにしてみると、ほとんどの利益は、実はある特定の事業によって得られていることが多いのです。そのときには、すべての製品や事業を分析するのではなく、決定的に利益に貢献している事業のみを分析対象とするべきです。
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 ※ No.1ホストはなぜNo.1なのか?
 問い② 「なぜ」稼げているのか?
 企業の価値の源泉は、通常たった1つしかない、ということです。私は、国内外の企業買収を通して、これまでにさまざまな業種・業界・国籍の企業を見てきましたが、突きつめると、どの企業も結局、その価値の本当の源泉は1つか2つしかありませんでした。これは事実です。もし企業の課題や強みが10も20も出てくるとすれば、それはまだまだ本質的な課題や強みの源泉を見抜けていないということでしょう。
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 利益を上げる企業は多くの場合、①市場の魅力度、②ビジネスモデルの有望度のいずれかの勝ちパターンをもっています。
(第4章 価値の「源泉」を見抜くには?)

2.市場の魅力度とはなにか?
 利益を上げる企業の第1の勝ちパターンは、魅了的な市場でビジネスをすることです。
 市場の魅力は2つの要素から成り立っています。1つは需要の伸び、もう1つは競争の少なさです。これは、果実がたくさんあって、それを分ける人数が少なければ、1人あたりの取り分も大きくなるということを意味しています。

 ※ 需要が伸びれば利益も伸びる
 市場の魅力を決める要素の1つが、需要の大きさや伸びです。市場のパイの増加が、単純にその業界にいる企業の成長を牽引するというのはわかりやすい考え方だと思いますし、投資判断においても、ある程度の確信をもって利益の成長を肯定できるでしょう。
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 株式投資において産業構造の変化をとらえるときには、きわめて長期的な視点をもつ必要があります。

 ※ 民放テレビ局はなぜ狙われるのか?
 市場の魅力度を決めるもう1つの要因は、競争環境です。規制や特許で守られている業界や、設備投資が必要で参入障壁が高そうな業界は、一度システムを築いてしまえば、ビジネスを有利に運ぶことができます。
 著名な投資家ウォーレン・バフェットは、「有料ブリッジ(橋)をもつ企業へ投資せよ」といいます。黙っていてもお金がチャリンと入ってくる規制産業は儲かります。たとえば、放送免許で守られ、電波帯域を割り当てられている少数の民放テレビ局各社は比較的有利にビジネスを展開できます。
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 ただし、規制の枠がはずれたり、電波帯域を保有していることの意味が薄れてくれば状況は変わってきます。インターネットですべての人がテレビと同レベルの画質・情報を発信できる時代になれば、立場は完全に逆転します。「放送できる資格」事態に意味がなくなりますから、今度は「放送するべき優れたコンテンツ」をもっている制作会社のほうが優位に立ちます。実に単純ですが、このように規制環境は企業の利益に大きな影響を与えているのです。
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 ※ 電力会社の配当はなぜ高いのか?
 一方、多額の設備投資が必要な業界も、いったん参入してしまえば利益を独占しやすい性質をもっています。いまさら「東京電力に勝てる電力会社をつくろう」と考える人はそれほど多くありませんから、ある程度は安泰にビジネスを進められるわけです。
 多額の設備投資が必要となるのはインフラ業界です。通常、インフラというものは1回つくってしまえば、かなり安定した利益が得られる半面、他にやることなくなってしまうので株主配当が高い傾向にあります。
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 競争環境を見てきましたが、需要があるところには競争はつきものです。みんながこれから需要が伸びる新しい業界を狙っています。ですから、最初は需要の伸びが利益を牽引しても、時間が経つにつれ、業界の参入者が増え、いずれ普通の利益しか得られなくなります。ですから、成長企業を見極める時には、いまの成長率の値ではなく、その成長が将来的にどのくらいの期間持続するのかを見極めることが重要です。
(第4章 価値の「源泉」を見抜くには?)

3.強いビジネスモデルとはなにか?
 市場の伸び以外に、構造上の優位性によって高い成長を持続している企業もあります。市場の需要の伸びが“パイ全体”の増加に当たるとしたら、この構造上の優位性は“パイの切り方”、すなわち自社にとって有利にナイフを入れられるか、ということになります。この、いわば「儲かる構造」を見抜くことができれば、誰も知らない成長株の投資で本当の成功を勝ち得ることができます。
 私は、成長をもたらす構造(ビジネスモデル)は、「高い利益率を確保できるモデル」と、それを「どこまで横展開できるか」という可能性の、2つの要因の掛け算にあると思っています。
 高い利益率の源泉は、次の4つのパターンに大別できます。
  ① 多くのことをうまくやる企業(高い業務効率)
  ② 他に任せる企業(フランチャイズ、ネットワーク)
  ③ 誰もできないことをやる企業(知的財産)
  ④ 信頼が厚い企業(ブランド・ロイヤルティ)

 ※ 多くのことをうまくやる企業とは?
 多くのことを上手くやる会社とは、かみ砕いていうと、誰よりも効率的に事業を遂行する会社です。事業戦略の策定から資金調達、研究・開発、製造、販売までの、事業のすべての流れをうまくつなげている会社です。バケツリレーが得意な会社、と考えればよいかもしれません。
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 ※ 他に任せる企業とは?
 多くのことを自分以外の人を使ってうまくやる会社も、構造上の優位性をもっています。本部の小さいフランチャイズ・ビジネスやネットワーク・ビジネスがこれに当たります。
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 ※ 誰もできないことをやる企業とは?
 誰ももっていない秘密の知恵によって価値を生んでいる企業もあります。これらの企業は知的財産を源泉として、高い利益率を獲得しています。製薬会社やソフトウェア会社がこれに当たります。
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 コカ・コーラ社のように、他に誰もつくれない商材をベースに事業を拡大するモデルもあります。実際、コカ・コーラの原液の製法は最重要機密事項となっており、その製法を知る人間は世界で2人しかいないといわれています。コカ・コーラ社は製法を守るために信じられないほど神経を尖らせており、この2人のうちの1人が死んだときには残された者が後任を選出し、口頭で製法を伝えることで綿々と秘密を守り続けているのだそうです。またこのような理由から、製法を知る2人が同じ飛行機に乗ることさえ禁止されているともいわれています。

 ※ 信頼が厚い企業とは?
 顧客から厚い信頼を有している企業も高い利益率を誇ります。これらの企業の中には、見えるモノを売りながら、実は心地よい気持ち(ハート)を売っている会社があります。たとえば、多くの女性から好まれるブランド品や化粧品などがこれに当たります。
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 量から質、物質から精神へと私たちの価値観が変化している現在、顧客のハートを射止める商品・サービスを販売する会社は高い利益を上げることができます。そしてこれらの企業の真の強さは、決して財務諸表に出てきません。貸借対照表に出てくる資産は目に見えるモノだけであって、これらのソフトな部分は載らないのです。ですから、真の事業価値の源泉を見抜くには、その製品の魅了がいったいどこから生まれているのかを、色眼鏡をはずして見つめる必要があります。
(第4章 価値の「源泉」を見抜くには?)

4.強いビジネスモデル
 ※ 儲かるモデルを世界中に広げていく企業
 事業価値の源泉である利益は、売上×利益率ですから、売上の拡大可能性は、事業価値にとってとても大事な要素なのです。
 企業が事業を横展開できる方向は、大きく分けて次の2つです。
  ① 同じ顧客に違う商品を売り込み
  ② 違う顧客に同じ商品を売り込む
(第4章 価値の「源泉」を見抜くには?)

5.目をつけるべきは小型・割安・成長株
 ※ 小型企業はシンプル・割安・効率良し
 「小型」とは、簡単にいうと総資産や売上が300億円以下の中堅企業のことです。小型であることの意味合いは、第1にわかりやすいことです。
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 第2に、小型株は比較的割安に放置されていることが多いという利点があります。
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 第3に、小型株は経営効率という観点からも有利です。
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 ※ 成長企業は評価されやすい
 割安であれば、いわゆる「資産株」でも「成長株」でもかまいませんが、私自身は資産株よりも成長株を好んでいます。成長株は、業績の伸びとともに自然な株価上昇が期待できますが、資産株の株価が上昇するためには、人気に火がつくための“材料”が必要になるからです。“発火”のタイミングによって利回りが変わってしまう資産株よりも、順当に株価上昇を期待できるというのが、私が成長株を好む理由です。
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 ※ 良い投資先=良い会社ではない
 「優良」な企業が「超優良」な企業になるようなストーリーを期待するのではなく、「最低」の企業が「多少マシになる」ようなストーリーのほうが、結果的にうまくいくことが多いのです。たとえば、テストで95点とった生徒が次のテストで100点をとることは難しいですが、20点しかとれなかった生徒が次にがんばって50点をとれば、それだけでなんと2.5倍です。これと同様のことが、株にも当てはまるのです。
 価値の源泉を見抜き、不当に安い価格(株価)で売られているときに買うのが、株式投資の神髄です。
(第4章 価値の「源泉」を見抜くには?

 









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