なぜか日本人が知らなかった新しい株の本(第5章 なぜ株価は上がるのか?)

山口 揚平 (著) 2005年7月20日


1.株式投資とは、価値の価格の差を見抜くゲーム
 ※ なぜ価値と価格の差が生まれるのか?
 株式投資とは、価値と価格の差を人よりも早く見抜くゲームだといえます。これをマネーゲームという人もいるでしょう。
 しかしよく考えてみると、商売というものは、すべて安く仕入れたものになんらかの加工を施して、高く売ることによって利ザヤを稼ぐことによって成り立っています。卸売業であろうと小売業であろうと、商売の真髄は、仕入の値段(価値)と販売価格に「差」を見出すことにあります。その意味で、「株式投資などけしからん」ということは、ビジネスそのものを否定することになるのかもしれません。
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 ※ 情報格差と感情バイアスが「差」をつくる
 価値と価格の差が生まれる理由は、主に次の2つです。
  ① 知っている人と知らない人の差がある(いわゆる「情報格差」の存在)
  ② 株式市場が合理性ではなく感情で動いている(いわゆる「感情バイアス」の存在)
 多くの人が企業の本当の価値を見抜けていない場合、その株は割安に放置されることになります。これを「情報格差」といいます。一部の人だけが、その企業の真の価値を早く見抜くことによって、情報格差が解消された時点で利益を得ることができます。
 特に地味な銘柄は、注目している人がそれほど多くないため、その本当の価値を見抜いて投資すると儲かることが多いのです。
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 ※ 相場が感情的なときほど利益を上げやすい
 株式市場が合理的よりも感情に基づいて動くことによって、価値と価格に差が生じます。特に業績の下方修正や株価の大幅な下落などの際には、市場参加者が合理的ではなく、「不安」という、人間が本来もつ強い生存欲求感情に基づいて売却の行動をとるため、実際の価値よりも株価が安くなるケースが多くあります。このようにみんなが感情的になっているときに合理性を失わなければ、当然利益を上げられる可能性があります
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 ※ 市場は案外効率的?
 株価は、短期的には相場のムードや企業によって上下動しますが、中長期的には株主価値に収斂します。
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 なぜ、株価は価値に収斂するのでしょうか? それは、株式市場が意外と効率的なものだからです。
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 ※ こんなときには株を売れ!
 株価は価値の周辺を行き来しますから、私たちは、価値と価格の差が大きくはずれて割安なときに買いを入れ、株価が上がる(すなわち価値に収斂する)動きに乗って株を売却すれば利益を上げられます。
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 価値と価格の差が完全に一致したときに売却をするのではなく、価値と価格のギャップがそこそこ埋まってきたら、売却を考えます。これはつまり、マーケットを見わたし、相対的にさらに割安度の高い銘柄が見つかれば“乗り換える”ということです。
(第5章 なぜ株価は上がるのか?)

2.株価が上がるきっかけは?
 ※ 株価が上がるために必要なもの
 割安に放置された会社の株価が上がるためには、なんらかの材料が必要です。この材料(ストーリー)のことをカタリスト(解媒)といいます。割安株に“陽”が差し込むストーリーが力強いほど、短期間に株価が上がりやすくなります。
 カタリストには、短期的な相場に影響を与えるものや、長期的な株価形成にゆるやかに影響を与えるものあります。また、時間をかけて、徐々に企業の価値が市場から見直され、株価が上昇し、価格が価値に収斂するのも1つの材料といえます。
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 ※ 代表的な9つのカタリスト
 カタリスト① 増配・・・増配はトリック!?
 株価を押し上げる材料としていちばんわかりやすいのが、企業が配当を増やすこと、つまり増配です。人はみな目の前のお金が好きですから、毎年の受取配当額が増えると単純に嬉しいものです。通常、企業が配当を増やすと、市場が反応して株価は上がります。
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 増配による株価上昇は、確定申告でお金が返ってくると嬉しくなるサラリーマンの心理に似ています。しかし、もともと自分のものなのに、改めて渡されて喜ぶのは勘違いですから、増配による株価上昇とはある種のトリックといえます。

 カタリスト② 優待の充実・・・株主優待は投資家を釣るアメ
 企業が株主優待を充実させることで、株価が上がることがあります。トマトジュースで有名なカゴメは、株主優待を充実させて主婦を中心とした個人長期投資家からの評価を得ることに成功しています。
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 カタリスト③ 自社株買い・・・自分の会社がいちばん割安?
 企業が自社の株を市場から買うことも、株価上昇に貢献します。これを「自社株買い」といいます。
 自社株買いは、自分の会社の株価が安いと判断した企業がみずから自分の会社の株を買うことです。経営者が「新規事業や他の会社の投資するくらいなら、自分の会社に“投資”したほうがマシだ!」と考えているときに自社株買いは行われます。
 つまり自社株買いは、企業が自分自身に投資をすることなのです。
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 カタリスト④ IRの充実・・・語る企業は理解される
 企業がインターネットでの情報公開や、株主説明会の充実を図ることで株価が上昇することがあります。なぜなら人は、自分が理解できるものを本質的に好むからです。業績見通しや事業内容、戦略についての情報が投資家に伝わることで投資家の理解度が増すと、その企業の株を買う人は増えていきます。
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 カタリスト⑤ 新製品・新事業展開・・・投資家は新しいモノ好き
 企業が、新製品開発や新事業展開などの“新しいこと”を発表すると株価が上がります。
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 カタリスト⑥ 上場・・・舞台の違いが人気の違い
 地味で目立たないJASDAQ(店頭市場)や2部市場の企業が1部上場に鞍替えしたり、名古屋証券取引所/大阪証券取引所の銘柄が東京証券取引所にも上場したりすると、株価が上昇することがあります。
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 カタリスト⑦ M&A・・・買収という名の起爆剤
 企業が戦略的なM&Aを発表すると、株価が上がることがあります。
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 カタリスト⑧ 分割/最低投資単元の引き下げ・・・「小分け」で売れば買いやすい
 株式分割や最低投資単元の引き下げによっても株価は上がります。これは、投資単位をより小口に下げることによって、投資家が株を買いやすいようにすることです。
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 カタリスト⑨ マスコミの影響・・・マスコミの影響は短期に起こる
 『日経ビジネス』『週刊ダイヤモンド』『週刊東洋経済』など有名なビジネス誌や新聞で取り上げられることによって、株価が上がることがあります。また、テレビなどでその企業が紹介された翌日にも、株価が上がる場合があります。ただし、このような効果はたいてい数週間で解消されてしまいますので、短期に売り抜ける必要があります。
(第5章 なぜ株価は上がるのか?)

3.良い投資先の条件はたったの2つ
 結局、良い投資先の条件は次の2つしかありません。
  ① 価値と価格の差が大きいこと
  ② 価値と価格の差が解消されるまでの期間が短いこと

 ※ 荷物はできるだけ波際から離しておく
 価値と価格の差が大きければ大きいほど、株価が上がる余地が大きいですから、投資の利益率は高くなります。また、割安度が大きいほど、株価が下落する可能性も低くなります。そうすると、投資家は精神的にも安定しやすいです。
 第3章で述べたように、この価値と価格の差のことを「安全域」といいます。
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 ※ 浪人生より現役生!?
 1年で100円の株価が200円になるほうが、10年かかるよりいいでしょう? 2倍になるのにたった1年しかかからなければ利回りは100%です。一方、10年かかった場合には、複利で利回り7%にすぎないのです。ですから、「差」が埋まる速度も、投資有益を決める際の重要な要因なのです。
(第5章 なぜ株価は上がるのか?)

4.有望株とはどんな株?
 ※ 地味株はみんなが気づく前に仕込むもの
 この銘柄は、割安なのですが、その解消までに時間のかかりそうな地味な株です。たとえば、「○○工業」「○○物産」などのように、企業名が地味な会社の多くはここに該当します。こういう企業は、その実力や財産価値がなかなか評価されない傾向があります。
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 ※ 人気銘柄は、割安ではないが動きは早い
 時価総額の大きな1部上場銘柄やいわゆる国際優良銘柄は、外国人投資家を含む多くの投資家やアナリストがチェックしているため、良い企業でかつ人気が高い銘柄となりがちです。

 ※ 地味な銘柄には目をかけない
 古くから事業を営んでいる卸・商社、メーカーなどの中には、割安でもなく動きのない銘柄が多く見られます。投資の際には、このような企業は無視してしまいましょう。

 ※ 誰も知らない有望株を見つけ出せ
 一言でいうと、いまは誰もその価値に気づいていないが、そのうちすぐにその価値が知れ渡る可能性の高い銘柄です。
 もう少し具体的にいえば、田舎でせっせと最高品質の製品をつくっている技術志向メーカーで、いよいよ世界にはばたいていこうとしている会社、地元では人気が高くこれから全国展開をしようとしている食品スーパーやドラッグストアチェーン、マニアのあいだでだけ有名なハイテクベンチャーなどです。
(第5章 なぜ株価は上がるのか?)

5.株式市場の4種類の投資家たち
 視点の違いによって、投資家は、ヒツジ投資家、フクロウ投資家、ライオン投資家、キツネ投資家の4種類に分かれます。

 ※ フクロウ - 長期で物事を見る人たち
 フクロウ投資家は、時期を見て、株価が割安になったときに投資を行い、じっくりと株価が上がるまで待ち続ける長期投資スタンスの人です。
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 ※ キツネ - 市場の非効率を「利用」する人たち
 キツネ投資家は、すばやい動きで短期に生まれる価値と価格の差を見つけ、すかさず投資をして、さやを抜きます。
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 キツネ投資家は、上場株式の「流動性」という舞台の上に生まれる、市場参加者の「需要(買いたい人)」と「供給(売りたい人)」のギャップに利益を求める投資家です。
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 ※ ヒツジ - 根拠なく投資をする人たち
 割安でもなく上昇の気配も見えない株に投資をするヒツジ投資家の領域です。
 ヒツジ投資家は、いつも誰かの後についていくだけです。彼らは、人のすすめで株を買いますが、その結果、儲かったり損したりして喜怒哀楽の中で過ごしています。
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 ※ ライオン - 投資の世界のプロたち
 ライオン投資家は、価値と価格の差を見つけ、それを自分の力で強引に埋めてしまう人たちです。買収ファンドやプライベートエクイティ・ファンドといった「モノ申す株主」がここに属します。
(第5章 なぜ株価は上がるのか?)

 









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