バフェットの財務諸表を読む力 大不況でも投資で勝ち抜く58のルール(3 バフェット流貸借対照表の読み方)

メアリー・バフェット (著), デビッド・クラーク (著), 峯村利哉 (翻訳) 2009年3月19日


No.25 大不況という困難な時代がやってきたとき、現金は最大の武器となる
 ウォーレンが初期の段階で確かめるのは、資産の中にどれくらいの“現金および現金同等物”が含まれるかという点だ。
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 ある企業が一時的な事業上のトラブルに苦しみ、近視眼的なウォール街の連中に愛想を尽かされ、株価の暴落に見舞われているとき、ウォーレンはその企業が蓄えている現金や有価証券の額をチェックする。そして、直面する危機を乗り切るだけの財政力があるかないかを冷静に見極めるのだ。
 ルールは単純明快だ。大量の現金と有価証券を保有し、借入金がほとんど、もしくはまったくない企業は、トラブルの荒波を無事に乗り切る可能性がきわめて高い。逆に、現金不足に苦しみ、負債の山を抱える企業は、世界最高の経営者が乗り込んでも沈没してしまう可能性が高い。
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 大量の借入金が存在している場合、その企業は優良ビジネスでない可能性が高い。逆に、大量の現金を保有していながら、借入金が少量もしくはゼロで、株式発行や資産売却をしておらず、長期的に収益の一貫性が確認できる場合は、永続的競争優位性を持つ優良ビジネスの可能性が高い。ウォーレンが探し求め、長期的にわたしたちを金持ちにしてくれるのは、このような企業なのである。
 大不況という困難な時代がやってきたときに、現金が最大の武器となることを、ゆめゆめ忘れてはならない。自分が現金を持っていて、ライバルが持っていなければ、わたしたちは世界を支配できる。
(3 バフェット貸借対照表の読み方)

No.27 総売上高に占める売掛金の割合が、一貫して他社より低い企業は、ある種の競争優位性を持つ可能性が高い
 競争がきわめて激しい業界では、取引相手に有利な支払条件を示すことで、同業他社より抜きん出ようとする企業が出てくるからだ。たとえば、支払期限を30日から120日に延ばせば、この会社と取引をしようとする業者が増えるだろう。この場合、会社の売上とともに売掛金が増加していく。
 したがって、もしも総売上高に占める売掛金(純額)の割合が、一貫して同業他社よりも低い企業があったとしたら、ある種の競争優位性を持っている可能性が高い。そうした強みがあるからこそ取引条件を妥協する必要もなく、他社より有利にビジネスをしていけるのである。
(3 バフェット貸借対照表の読み方)

No.29 流動比率で企業の優劣を見分けることはできない
  流動資産 ÷ 流動負債 = 流動比率
 流動比率は1より高ければ良く、1より低ければ悪い。1より低い企業は、短期負債の返済に苦労すると考えられている。
 しかし、おもしろいことに、永続的競争優位性を持つ企業の多くは、流動比率が分岐点である1を割り込んでいる。〈ムーディーズ〉は0.64、〈コカ・コーラ〉は0.95、〈プロテクター&ギャンブル〉は0.82、大手ビール・メーカーの〈アンハイザー・ブッシュ〉は0.88という具合だ。
 旧来の学説からすれば、これらの優良企業は流動負債の返済に窮しているはずだ。しかし実際は、とてつもなく大きな収益力のおかげで、いとも簡単に流動負債を返済できるのである。
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 要するに、永続的競争優位性を持つ企業の多くが、1を下まわる流動比率を示しているのである。こうした例が存在する以上、永続的競争優位性の有無を判定するときに、流動比率はほとんど判断材料にならない。
(3 バフェット貸借対照表の読み方)

No.30 変更の必要のない製品を一貫して生産しつづけることは、一貫して収益をあげつづけることにひとしい
 永続的競争優位性を持たない企業は、日々、絶え間ない競争に直面させられている。競争から脱落しないようにするためには、たとえ設備が完全に損耗しなくても、絶え間なく生産設備を更新しつづけなければならない。このような状況は、当然、莫大な出費をもたらし、貸借対照表上の“生産設備”の数字をふくらませる。
 いっぽう、永続的競争優位性を持つ企業は、競争の参加費として絶え間なく生産設備を更新する必要などない。
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 ウォーレンは次のように言う。
 「変更の必要がない製品を一貫して生産し続けることは、一貫して収益をあげ続けることにひとしい」
 同じ製品を一貫して生産し続ければ、競争力を保持するためだけに生産設備の更新に莫大な資金を注ぎ込む必要がなくなり、莫大な剰余金を収益性の高い事業に振り向けられる。
(3 バフェット貸借対照表の読み方)

No.38 長期借入金より短期借入金が多い銀行は、投資対象から除外せよ
 ウォーレンは常に、長期借入金よりも短期借入金が多い会社を除外する。彼のお気に入りである〈ウェルズ・ファーゴ〉は、長期借入金1ドルにつき、短期借入金は57セントにすぎない。
(3 バフェット貸借対照表の読み方)

No.41 永続的競争優位性を持つ企業は、ほとんどの場合、長期借入金が少額もしくはゼロである
 永続的競争優位性を持つビジネスは、多くの場合、貸借対照表上の長期借入金が少額もしくはゼロである、という事実をウォーレンは学んできた。優良企業は膨大な利益をあげているため、事業拡大や企業買収を自己資金でまかなうことができる。だがら、巨額な借入れを行う必要性などまったくないのだ。
 優良企業を見分けるひとつの方法は、貸借対照表から長期借入金の総額を読みとることである。ただし、1年間の情報で満足してはいけない。直近10年間の長期借入金の状況をチェックする必要があるのだ。
 貸借対照表を調査した結果、10年間の事業運営を通じて、長期借入金がほとんど、もしくはまったく生じていなければ、その企業は何らかの強力な競争優位性を持っている可能性が高い。
(3 バフェット貸借対照表の読み方)

No.43 わたしたちが探し求める会社は、自己株式調整済み負債比率が0.80以下
  負債合計 ÷ 純資産合計 = 負債比率
 負債比率を指標として使うときには、ひとつ問題がある。永続的競争優位性を持つ企業は、きわめて優秀な経済性を備えているため、事業活動を行うさい、貸借対照表の巨額の純資産(内部留保)を必要としないという点だ。ときには純資産(内部留保)をまったく必要としない場合もある。このような企業は収益力がきわめて高く、しばしば、積み上げられた純資産(内部留保)を自社株買いに注ぎ込む。結果として、純資産(内部留保)は減少し、負債比率は上昇し、数字上、永続的競争優位性を持たない凡庸なビジネスとの見分けがつかなくなる。
 格好の例としては、ウォーレンのお気に入りの〈ムーディーズ〉があげられる。同社は秀でた経済性から好業績を引き出しているため、純資産を維持しておく必要がない。実際、〈ムーディーズ〉はすべての純資産を自社株買いに振り向けた。この結果、同社の負債比率は、永続的競争優位性を持つ〈コカ・コーラ〉ではなく、永続的競争優位性を持たない債務超過状態の〈GM〉に近くなっている。
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 ルールは簡単だ。金融機関を除き、自己株式調整済み負債比率が0.80以下(低ければ低いほど良い)の企業は、わたしたちが探し求める永続的競争優位性を持っている可能性がある。
(3 バフェット貸借対照表の読み方)

No.45 すぐれた企業は、優先株を発行しない傾向がある
 優先株について興味深いのは、永続的競争優位性を持つ企業には、貸借対照表に優先株をまったく計上しない傾向があるという点だ。優良企業は収益力が高く、資金を内部調達できる。優先株はテクニカルな面から見ると、受け取った金を返さなくていいという点で株式に分類されるが、機能的な面から見ると、配当を払わなくてはならないという点で債務と似ている。
 しかし、債務にたいする利払いは、税引前利益から控除できるのに対し、優先株にたいする配当は控除が認められない。つまり、優先株の発行は非常に高くつく場合が多いのである。企業は可能なかぎりコスト高の優先株の発行を控えるため、資本構成の中に優先株を含んでいるかどうかが、永続的競争優位性の有無の判断になるわけだ。
(3 バフェット貸借対照表の読み方)

No.46 内部留保の着実かつ長期的な増加は、永続的競争優位性を持つ企業の特徴のひとつである
 永続的競争優位性の有無を見きわめるさい、貸借対照表のさまざまな項目が判断材料となるが、内部留保の指標としての重要性は一、二を争う。なぜなら、内部留保を積み増せない企業は、純資産を成長させることができないからだ。純資産の成長がない企業は、長期にわたしたちを超リッチにしてくれる可能性が低いと見ていい。
 端的に言うと、企業の内部留保の増加率は、永続的競争優位性の有無を見きわめる格好の指標となる。ウォーレンのお気に入りの企業、つまり、永続的競争優位性を持つ企業の例を見てみよう。
 〈コカ・コーラ〉の内部留保は、過去5年間、平均で年7.9パーセント成長してきた。〈リグリー〉は10.9パーセント、〈バーリントン・ノーザン・サンタフェ鉄道〉は15.6パーセント、バドワイザーで有名な〈アンハイザー・ブッシュ〉は6.4パーセント、〈ウェルズ・ファーゴ〉は14.2パーセントの内部留保を積み上げてきた。ウォーレンの持株会社〈バークシャー・ハサウェイ〉の場合はなんと23パーセントだ。
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 〈バークシャ・ハサウェイ〉が大成功した要因のひとつは、ウォーレンが経営権を掌握した当日に、配当の支払いをとりやめたことにある。この決断によって、〈バークシャ・ハサウェイ〉の毎年の純利益は、100パーセント内部留保に積み増され、絶好の機会がめぐってくるたび、ウォーレンはこの内部留保を投資にあてたのである。
 投資はさらなる利益を生み、利益は内部留保として蓄積され、ふたたび、もっと収益力の高い事業に投資された。
(3 バフェット貸借対照表の読み方)

No.47 自己株式(金庫株)の存在は、企業が豊富なキャッシュを持っている証である
 永続的競争優位性を持つ企業は、収益性がきわめて高いため、自社株買いに使える自由なキャッシュが豊富にあることが多い。だから、貸借対照表に自己株式があるという事実は、永続的競争優位性の有無の判断材料になる。
 この自己株式に関しては、知っておくべき財務的特徴がいくつか存在する。ひとつは、企業が自社株買いを行なって、自己株式として保有しつづけると、実質的に株式発行総数が減るため、株主資本利益率(ROE)の数字が向上するという点だ。永続的競争優位性の有無を見極めるさい、この株主資本利益率は指標のひとつとなる。
(3 バフェット貸借対照表の読み方)

No.49 株主資本利益率が高ければ、やがて株価の上昇となって表われる
  純利益 ÷ 純資産 = 株主資本利益率
 ウォーレンは、永続的もしくは長期的競争優位性を持っている企業は、株主資本利益率が平均よりも高くなるということを発見した。ウォーレンのお気に入りの〈コカ・コーラ〉は30パーセント、〈リグリー〉は24パーセント、〈ハーシーズ〉は33パーセント、〈ペプシ〉は34パーセントと、いずれも高い株主資本利益率を示している。
 ところが競争があまりにも激しく、どの企業も持続可能な競争優位性を持ちえない業界、たとえば航空業界へ目を転じると、株主資本利益率の数字は劇的に落ち込んでしまう。たとえば〈ユナイテッド航空〉は黒字の年でも15パーセントだし、〈アメリカン航空〉は4パーセント、〈デルタ航空〉と〈ノースウエスト航空〉は利益をあげていないので計算自体ができないほどだ。
 株主資本利益率の高さは、その企業が内部留保を有効に活用していることを示している。時間が経過するにつれ、高い株主資本利益率は、ビジネスの根源的価値を増大させていく。そして、それはいつの日か株式市場によって認識され、企業の株価の上昇となって現れるのだ。
(3 バフェット貸借対照表の読み方)


 









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