敗者のゲーム(新版) なぜ資産運用に勝てないのか(第1章 敗者にならないゲーム)

チャールズ・エリス (著)  2003年12月4日

  目 次
 第1章 敗者にならないゲーム - 第Ⅰ部 資産運用の本質
 第2章 それでも市場に勝ちたいなら - 第Ⅰ部 資産運用の本質
 第3章 「ミスター・マーケット」と「ミスター・バリュー」 - 第Ⅰ部 資産運用の本質
 第4章 投資の「ドリーム・チーム」がいたならば - 第Ⅰ部 資産運用の本質
 第5章 運用につきまとう矛盾 - 第Ⅰ部 資産運用の本質
 第6章 「時間」が教える投資の魅力 - 第Ⅱ部 運用理論の基礎
 第7章 収益率の特徴と中身 - 第Ⅱ部 運用理論の基礎
 第8章 リスクが収益を生み出す - 第Ⅱ部 運用理論の基礎
 第9章 効率的なポートフォリオとは - 第Ⅱ部 運用理論の基礎
 第10章 なぜ運用基本方針が必要か - 第Ⅱ部 運用理論の基礎
 第11章 運用基本方針策定のポイント - 第Ⅱ部 運用理論の基礎
 第12章 運用成果測定の狙いとは何か - 第Ⅱ部 運用理論の基礎
 第13章 運用機関と上手につき合う - 第Ⅱ部 運用理論の基礎
 第14章 市場予測の難しさ - 第Ⅲ部 個人投資家への助言
 第15章 個人投資家にとって何が問題か - 第Ⅲ部 個人投資家への助言
 第16章 生涯を通じた投資プランを立てよう - 第Ⅲ部 個人投資家への助言
 第17章 人生の終盤で成功するために - 第Ⅲ部 個人投資家への助言
 終  章 敗者のゲームにかつために

 「第1章 敗者にならないゲーム - 第Ⅰ部 資産運用の本質」では、株式市場が「勝者のゲーム」から「敗者のゲーム」へと変わったことについて紹介されている。1960年代以前まで株式市場に占める割合は個人投資家が多かったため機関投資家が勝つことはたやすかったものの、今日では機関投資家が9割を占めるようになり、市場そのものが非常に効率的になったことについて述べている。

 「第2章 それでも市場に勝ちたいなら - 第Ⅰ部 資産運用の本質」では、市場のタイミングに合わせて投資を行ってはいけないことについて紹介されている。過去75年間の間に株価が最も上昇したのはわずか7%余りの期間であり、このタイミングに合わせて市場に居合わせることが非常に難しいことなどを挙げている。また、トップ50に入る機関投資家が情報収集のために莫大な費用と労力を費やしていることについても紹介している。

 「第3章 「ミスター・マーケット」と「ミスター・バリュー」 - 第Ⅰ部 資産運用の本質」では、「ミスター・マーケット」と「ミスター・バリュー」の概念について紹介されている。「ミスター・マーケット」は感情的で市場を揺さぶり、投資家を翻弄する。「ミスター・バリュー」は市場から注目されないものの、実体経済を反映し、長期的には「ミスター・マーケット」に勝つことなどが紹介されている。

 「第4章 投資の「ドリーム・チーム」がいたならば - 第Ⅰ部 資産運用の本質」では、市場に勝つ4つの方法などが紹介されている。そして、マーケットがプロによって支配されている現在、プロの動きを示しているインデックス・ファンドを使うべきだと主張し、ウォーレン・バフェットも同じように主張していることなどを紹介している。

 「第5章 運用につきまとう矛盾 - 第Ⅰ部 資産運用の本質」では、株式などを持ち続けることの重要性などについて紹介されている。長い期間をとればリターンは平均値に回帰するものの、投資信託を乗り換えた多くの個人投資家は平均リターンの5%を失ったことなどを紹介している。

 「第6章 「時間」が教える投資の魅力 - 第Ⅱ部 運用理論の基礎」では、投資において時間が重要な要素であることなどについて紹介されている。例えば、1年間の投資期間では最高で53.4%、最悪で37.4%の損失になるのに対し、投資期間が長くなるほど損失の期間が少なくなり、利益の期間がずっと多くなることをグラフを用いて紹介している。

 「第7章 収益率の特徴と中身 - 第Ⅱ部 運用理論の基礎」では、財務省証券や長期債、株などについてインフレ調整後でどれくらいリターンをもたらしかについて紹介されている。例えば、財務省証券はインフレ調整後ではリターンはほぼゼロであるのに対し、株は6.6%のリターンをもたらしたことなどを挙げている。

 「第8章 リスクが収益を生み出す - 第Ⅱ部 運用理論の基礎」では、5年間、10年間、15年間ごとに株を保有した場合のリスクとリターンの関係について紹介されている。株は短期ではリスクが最も高いが、長期になるほどリスクは低い投資商品であることが紹介されている。そのため、長期投資を行うなら短期の株価変動など気にせず、だた持ち続けることを主張した内容になっている。

 「第9章 効率的なポートフォリオとは - 第Ⅱ部 運用理論の基礎」では、債券運用について紹介されている。債券運用のために4つの方法を取り上げているが、プロの債券ファンドでもリターンを稼ぎ出せることがめったにないことも説明している。

 「第10章 なぜ運用基本方針が必要か - 第Ⅱ部 運用理論の基礎」では、株式市場の短期な株価に惑わされず、長期の運用基本方針を貫く大切さについて紹介されている。人間は感情的な意思決定をしがちなため、株価が低くなったときに株を買うのをやめてしまうことや、市場が暴落し慌てるのは歴史的な知識が乏しいことなどを挙げている。

 「第12章 運用成果測定の狙いとは何か - 第Ⅱ部 運用理論の基礎」では、ファンド・マネジャーや債券の格付けの評価にデータの偏りがあることなどを紹介している。例えば脱落した運用機関は除外され最も成果の高いファンドに焦点があてられていることや、モーニングスターの格付けも過去一年間の成績だけに基づいていることなどについて取り上げている。

 「第13章 運用機関と上手につき合う - 第Ⅱ部 運用理論の基礎」では、正しい運用機関の選び方について紹介されている。まず、株価がどれくらいまで下落しても自分が動じないでいられるかを知ること、市場動向が悪化しても改善しても首尾一貫した投資スタイルを貫く運用機関を選ぶことなどを取り上げている。

 「第14章 市場予測の難しさ - 第Ⅲ部 個人投資家への助言」では、投資家が楽観論と悲観論による誤った投資判断を行うことについて紹介されている。例えば1970年代にはインフレが長期にわたって持続し企業収益は低迷し続けると多くの投資家が予想していたことや、二〇〇〇年にはITバブルで株価が上昇し続けると多くの投資家が予想していたことなどが紹介されている。

 「第15章 個人投資家にとって何が問題化 - 第Ⅲ部 個人投資家への助言」では、インフレと購買力との関係や、誤った投資判断、投資の意思決定を行っていくうえで役に立つ10のアドバイスなどについて紹介されている。例えば、年率5%のインフレが続けば15年以内に購買力が半減したり、ほとんどの投資家が値上がりした株式を買い増していく傾向があることなどについて紹介されている。

 「第16章 生涯を通じた投資プランを立てよう - 第Ⅲ部 個人投資家への助言」では、複利の効果とインフレなどについて紹介されている。例えば、20世紀初めに100ドルを普通株に投資していたら、現在は73万3383ドルに増えていることや、インフレによって20年で1ドルの購買力が32セントにまで減っていることなどが紹介されている。

 「第17章 人生の終盤で成功するために - 第Ⅲ部 個人投資家への助言」では、資産の活用について紹介されている。例えば、3つの方法を挙げ、1つ目は自分自身への引退後の生活資金の確保、2つ目は愛する者への遺産、3つ目は社会へのお返しを挙げている。また、遺産贈与計画など、いくつかのアドバイスをしている。

 「終章 敗者のゲームに勝つために」では、投資の心構えなどについて紹介された株の本になっている。ポートフォリオの管理は運用機関に任せ、投資の目的と手段は投資家自身で責任を持つこと、そして投資家自身のリスクに対する許容度、マーケットの歴史を把握することに努めることが紹介されている。

 「市場平均を超える」という目標に反して、アメリカのプロの運用機関は市場平均に負けているのである。
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 機関投資家の大多数は市場より良い成果をあげられる、という基本的な前提は正しくない。なぜなら機関投資家そのものが市場なのだから、機関投資家全体としては、自分自身に打ち勝つことはできない。その上、顧問料や売買手数料、その他のコストも支払わなければならず、長い目で見て運用機関全体の七五%の成績は市場水準を下回るだろう。デイ・トレーディングはさらに性質が悪い。勝てる見込みはない。
 数多くの強力な同業者がしのぎを削る機関投資家の世界で、資産運用は「勝者を目指すゲーム」とはならない。それは今や「敗者にならないゲーム」である。
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 TRW者の著名な科学者であるサイモン・ラモは、「勝者のゲーム」と「敗者のゲーム」の決定的違いを、『初心者のための驚異のテニス』という本の中で明確にしている。すなわち、テニスには二種類のゲームがあり、一つはプロおよび天才的アマチュアのゲームであり、もう一つはその他大多数のゲームである、と。
 どちらのゲームでも、プレーヤーは同じ道具、服装、ルール、得点計算方法、そして同じ作法と慣習に従うのであるが、この二つはまったく異質のゲームである。精力的な科学的・統計的分析の結果、ラモ博士は次のように要約している。「プロは得点を勝ち取るのに対し、アマはミスによって得点を失う」
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 アマチュア・プレーヤーは敵をやっつけることなどめったにできず、いつも自ら墓穴を掘って終わることになる。この種のテニスの得点は、ほとんど相手のミスによるものである。とすれば、私たちはミラクル・ショットを決めようとするのではなく、とにかくミスの少ない、確実なテニスをすることを目指すべきである。
 エキスパートのテニスでは、ポイントの八〇%が勝ち取ったものであるのに対し、アマチュアのテニスでは、ポイントの八〇%が敵の失点によるものであった。
 二つのゲームは基本的性格において正反対なのである。プロのテニスは勝ために行ったプレーで結果が決まる「勝者のゲーム」であるのに対し、アマチュアのテニスは敗者がミスを重ねることによって決まる「敗者のゲーム」なのである。
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 他にも、「敗者のゲーム」はたくさんある。機関投資家の証券運用がそうであるように、かつては「勝者のゲーム」であったものが、時代とともに「敗者のゲーム」に変わったものもある。
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 資産運用と呼ばれる「マネーゲーム」も、最近数十年で「勝者のゲーム」から「敗者のゲーム」へと変わってしまった。証券運用の世界で根本的変化が起きたのだ。一九七〇年代に入り、市場より高い成果をあげようと懸命に努力する機関投資家が多数出現し、市場を支配するようになってきた。公表されたデータで見て、過去四〇年の間に機関投資家の市場シェアは一〇%から何と九〇%に増大している。この変化がすべての原因である。もはやアクティブな運用機関は、初めて市場に顔を出す用心深い保管業務やアマチュアと競争しているわけではない。ライバルはエキスパート自信なのである。
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 たとえば、株式投資の市場収益率の平均が一〇%とすると、コストの年率二.八五%を含めて、運用機関が市場平均と同じ成績をあげるための収益率は一二.八五%でなくてはならない。つまり、市場並みの収益率を得るためには、運用機関は市場よりも二.八五%上回る成績をあげなくてはならない、ということになる。はっきり言えば、ほとんどの運用機関はこのマネーゲームに負けてきたのである。この二五年間の記録では、プロの運用するファンドンの四分の三以上が、S&P五〇〇株価指数を下回る成果しか挙げられなかった。
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 結局のところ、運用機関が市場に勝てないのであれば、その時にこそ、市場を忠実に反映するインデックス・ファンドに投資して勝負に参加することを考えてみるべきだ。運用成果を測定する会社のデータによれば、インデックス・ファンドは、長期的にはほとんどのポートフォリオ・マネジャーを打ち負かしていると言える。
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 マーケットは短期間で大きく変動するので、投資家はすぐに感情的になって方針を変更したがる。しかし、マーケットの変動に振り回されては、成功はまず望めない。
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 市場平均の結果を出すには、他の投資家のミスに乗じなければならない。個人投資家がマーケットの九割を占めていた一九六〇年代には、投資のプロが個人投資家のミスに乗じて利益を出すことはさほど難しくなかった。というのは個人投資家は、遺産をもらったり、ボーナスが出たり、家を売ったりという、株式市場とは何の関係もない動機から投資することが多いからだ。売る時も同様であり、子供が大学に入ったから、あるいは家を買うからなどの理由で売却する。
 しかも一般に個人投資家は、株式市場の中で厳密な比較・検討を行ったうえで投資するわけではない。二,三社についてさえ詳細な知識を持たない個人投資家がほとんどなのだ。たいていの個人投資家は、新聞やテレビ、友人、小口投資家向けアドバイザーなど、到底プロとは言えないような人々からの情報に頼っている。個人投資家が重要だと思う情報も、実際にはまったく無意味なこともある。
 つまり、プロの投資家が個人投資家に勝つのは朝飯前のことなのである。個人投資家がマーケットの大部分を占めていた一九六〇年代に、プロの投資家が大きな利益をあげることができたのはある意味で当然だった。
 しかし、今日ではマーケットは一変した。投資信託や年金基金、ヘッジファンドが飛躍的に拡大し、しかもこれらの機関投資家の売買回転も増加した結果、今では個人投資家と機関投資家の比率は完全に逆転し、機関投資家が九割、個人投資家が一割となった。
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 短期的にはマーケットに「勝つ」ことのできる投資家はいても、長期にわたって市場平均以上の成績を出せる投資家はほとんどいないのである。
 さらに、過去に優れた成績をあげた投資家が、将来も高いパフォーマンスをあげ続けるとい保証はどこにもない。むしろ逆だろう。投資においては - 物理学や社会学同様 -たえず「平均値に回帰する」圧力が働くものだ。
 本章で述べてきたように、「市場に勝つ」ことを目指して「敗者のゲーム」に参加すれば、負けはほぼ見えている。だからといって、悲観することはない。勝つ方法はある。長期投資の明確な目的を設定し、その目的を実現するために合理的かつ現実的な投資政策を選択したうえで、その政策をしっかり貫いていくことである。
(第1章 - 第Ⅰ部 資産運用の本質)










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