敗者のゲーム(新版) なぜ資産運用に勝てないのか(第6章 「時間」が教える投資の魅力)

チャールズ・エリス (著)  2003年12月4日


 運用における梃子は「時間」である。運用期間の長さ、すなわち運用成果の測定・評価機関の長さは、どんな運用計画においても最も強力な要素である。
 もし期間が短いのなら、最高の収益率を求める運用 - 長期投資家が最も望む運用 - は適切でなく、賢明な短期投資家はそのような運用をしない。しかし運用期間が十分長ければ、短期では非常にリスキーと見える運用手法を、大きな不安を感じることなく取り入れることができる。
 十分な時間が与えられれば、一見魅力的とは思えない運用も大変有効なものになる。「時間」は運用というものを、良くも悪くもまったく様変わりさせるものである。なぜならば、平均収益率自体は時間によって少しも変わるものではないが、その平均収益率の周りに分布する実際の収益率の範囲は、時間の影響を大きく受けるからである。
 運用期間が長ければ長いほど、ポートフォリオ全体の実際の収益率は平均収益率に近づく。
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 まず一年間の収益率を見ると、その数字は大小さまざま、まったくばらばらである。最高でリターンは五三.四%とおり、最悪では三七.四%の損失となる。このように広く分散した年間実績数字から「平均」収益率を出したとしても、それはあまり意味がない。
 五年の期間で見ると、多少の規則性が出てくる。損失の期間が少なくなり、利益の期間がずっと多くなる。測定期間が長くなるにつれ、一年だけの場合に比べて、個々の年間収益率の違いが互いに打ち消され、平均収益率に近づいていくからである。
 一〇年になると、収益率の規則性はさらに増してくる。ほとんどの年間平均収益率が五%から一〇%の範囲に入る。さらに一〇年間の複利で計算した年間平均収益率は、一年だけの収益率では平均収益として意味がなかったのに対し、大きな意味を持つようになる。
 二〇年になると、実際の収益率にますます多くの規則性が見られる。利益率は長期期待平均収益率の近くに収斂してくる。
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 運用においても、我慢強く観察していると、一見無関係に見える年ごと、月ごと、あるいは一日ごとの結果が、まったくでたらめに現れるのではなく、長期間ではかなり予測可能なパターンに従っている。
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 運用の歴史から明らかなように、投資収益の相当部分は相場回復の最初の一週間に得られている。マーケット・タイミングを重視する人たちが最も売りたがるのが相場の底であり、彼らはまさに「一番おいしい部分」を逃しているのである。
(第6章 「時間」が教える投資の魅力 - 第Ⅱ部 運用理論の基礎)










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