敗者のゲーム(新版) なぜ資産運用に勝てないのか(第8章 リスクが収益を生み出す)

チャールズ・エリス (著)  2003年12月4日


 市場全体のリスクは常に存在するし、リスクの点から見ると、これはとても大きい。市場全体の複製ポートフォリオでえある「インデックス・ファンド」の大きな利点は、特定のマーケットの一部や証券のリスクが分散されており、便利で安上がりな運用方法だということである。
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 リスクは全体として、①株式市場全体のリスク、②市場セグメント・リスク、③市場全体に対する個々の株価の不確実性に伴うリスク、から構成される。
 市場セグメントのリスクと特定証券のリスクは、それを分散させることにより回避することができるが、市場全体のリスクが除去できない。
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 「リスクのように見えるもの」と真のリスクの違いとは、投資期間によって決まってくる。確かに、短期的には株式のリスクは高いことが多い。しかし、図8-2が示すように、特に過熱相場の時から始めない限り、十分に長い時間をかけて投資を行う場合、株式の見かけ上のリスクは消滅し収益率は上昇する。
 短期における最大のリスクは、実は、たまたま株式市場が低迷している時に、投資家が資金の必要上株式を売却しなければならない事態が生じることである。このことから言えるのは、長期においては株式のリスクは種々の投資商品の中でも最も低いが、短期においては逆にリスクが最も高い、ということである。つまり、株式を売りもせず売る必要もなければ、株価の上下はさほど気にする必要はない。気にすることかもしれないが、遠く離れた土地の豪雨や遠い会場での波の高さ同様、心配するには及ばない。
 長期投資においては、短期的な株価変動のリスクは自動的に消えてしまう。持ち続けている限り、株価変動は関係がないかである。投資家にとって、短・中期のマーケット・リスクに対する最適な対策とは、それらのリスクを一切無視して長期投資家になりきることである。
 収益率とは、高い収益率を求めて悪戦苦闘した結果得られるものではなく、リスク自体が生み出すものだという認識は、運用方針の概要を変えるものである。以上により、収益率に注目するのではなく、意図したリスク管理に注目することこそ重要であることが理解されたであろう。
(第8章 リスクが収益を生み出す - 第Ⅱ部 運用理論の基礎)










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