敗者のゲーム(新版) なぜ資産運用に勝てないのか(第13章 運用機関と上手につき合う)

チャールズ・エリス (著)  2003年12月4日


 投資家はどれくらいの数の運用機関を使うべきだろうか。投信の場合は通常、いくつかの異なるスタイル、あるいは投資理念を持った運用機関がある。同じ標準的な専門能力と適切な手数料と投資家サービスの下に、何種類かのファンドを提供するファミリーという仕組みがあるが、これらの中から、尊敬に値すると考えられる長期的なパフォーマンス実績とビジネス上の理念を持つ、一つか二つのファンドに焦点を絞るべきだろう。
 どうすれば投資家として良い顧客になれるかについて、いくつかの提案がある。以下は主として機関投資家を念頭において書かれたものだが、個人投資家にも参考になる点は多いだろう。
 第一は、自分自身のファンドとその組織についてしっかりと理解を深め、自分の運用目的は何であるか、どこまで逆境に耐えられるかなど、基本的な点を再確認することである。自らの過去の投資判断を振り返り、自分がどのような投資家であるかを見極める。四半期ごとの変動に対処する能力を知ることはできるだろう。そうした変動はそれほど激しいものではない、風向きもすぐ変わる。しかし、異常な急落を見せるような局面で動じないのはきわめて難しい。たとえば、一九七三年から七四年の二年間にダウ平均は一〇〇〇ドルから六三〇ドル以下に急落した時のように、株価が三七%以上も下落してしまったら、どのように対処したらいいのか、自問自動してみるとよい(なお、非上場株の場合は、同時期に七五%と、さらにひどい下落をしている)。
 ぎりぎりのところで発揮される運用に対処する底力は、ソファにゆったり座って、「結局はこうだった」と、後解釈する歴史家のような見方からは育まれない。そうではなく、最悪の下げ相場における絶望的な経験、しかも次に何が来るかもわからず、場合によってはさらに悪化するかもしれないような状況の中で、自分がどう感じ、どう反応できるかを慎重に考えてみてほしい。この種の率直な自己分析こそが、あるべき運用を一貫して継続する決意を助けることになる。
  ・
  ・
  ・
 さらにお勧めなのは、最終選考に残った運用機関の中から、最近比較的パフォーマンスが低迷していた運用機関を選ぶことである。このような運用機関には「平均値への回帰」の波に乗れるだけでなく、そのスタイルに追い風の環境変化も期待できることから、近い将来において高い成果をあげる可能性が高い。
  ・
  ・
  ・
 流れ作業の工程の管理職を長年務めた人なら知っているように、うまく運営されている工場では「何も面白いことは起こらない」のである。「面白いこと」があるということは問題があるということであり、うまく運営されている工場には問題はない。
  ・
  ・
  ・
 優秀な運用機関を見つけ出すのは決して簡単なことではない。投資コンサルティング会社なども、多くの優秀なスタッフを投入して長年この問題に取り込んできたが、それでもその推奨する運用機関はむしろ市場平均を上回らないことの方が多い。
  ・
  ・
  ・
 ポートフォリオのパフォーマンス向上に専念しないマネジャーや、事前の合意に従った運用を行わないマネジャーを使い続けることは、単なる「投機」であり、いつかそのツケを払う時がくる。
 その半面、市場動向が特に悪化した時にも約束を忠実に守る有能な運用機関を使い続けることは、投資家の「誠意」を示すものであり、長期的には高い収益があがることを期待してよい。首尾一貫した投資をする気がないなら、そもそも投資など始めない方がよい。
 リスク調整後で、長期にわたり卓越した成績を収める運用機関はきわめて少ない。これはデータにも表れている。過去五〇年間の投資信託のパフォーマンスは年複利でS&P五〇〇インデックスを一.八%下回る。投資信託のリターンは一一.八%、S&P五〇〇は一三.六パーセントである。過去一〇年間を見ても、アメリカの全投資信託のうち八九%のリターンはS&P五〇〇を平均三.四%下回ったとされる。このように投資家は、高い成果を持続して収めることのできる投信を探すのに大変苦労するだろう。
(第13章 運用機関と上手につき合う - 第Ⅱ部 運用理論の基礎)










← 第12章                                                    第14章 →
トップページ