敗者のゲーム(新版) なぜ資産運用に勝てないのか(第14章 市場予測の難しさ)

チャールズ・エリス (著)  2003年12月4日


 長期的なPERや利益をある程度正確に予想するには、歴史的な上限と下限の間にあると仮定することである。投資期間が長期にわたるほど、「平均値」へ向かう動きが頻繁に見られるだろう(ただし、株価が上昇しているような場合、投資家は自分の保有する銘柄の株価が将来的にも上昇すると錯覚しがちである。逆に市場が下落している場合、将来的な収益やPERも過少評価されがちになる)。
 もちろん、株式市場は何千という企業の動向だけでなく、経済全体を反映するきわめて複雑な生きものである。しかし、投資家にとって重要なことは次の二点である。第一に、企業収益(そして配当)水準である。第二に、株式が企業収益の何倍まで買われているかと言う倍率、すなわちPERである。これは金利と投資家心理を反映して動く。
  ・
  ・
  ・
 多くの投資家は、株価が平均値に回帰するということを忘れ、過去の流れが今後も続くと錯覚しがちである。一九七〇年代には、ほとんどの投資家はインフレが長期にわたって持続し、企業収益は低迷し続けると予想した。メディアの論調も同様だった。二〇〇〇年には、投資家はバブル崩壊の危機を無視してIT関連株の上昇を予想し続けた。
  ・
  ・
  ・
 歴史の教訓を無視する者は過ちを繰り返すと言われている。
  ・
  ・
  ・
 一九八八年には、配当率は三.五%であり、その後一一年間、企業収益率は年率七.一%で伸び続けた。配当率プラス収益の伸び率である「基本的リターン」は、実に年率一〇.六%となった。それだけではない。PERが一二倍から二九倍に増えた結果、投資家はさらに八.三%、合計で年率一八.九%という驚異的なリターンを手にしたのである。このような状況が長続きするはずはなかった。歴史において常にいそうであるように、「平均値に回帰」する力が働くからである。一二というPERも低すぎたが、二九はどう見ても高すぎる。
  ・
  ・
  ・
 長期にわたっては、マーケットを左右するすべての要因は株価を「平均値に回帰」させるように働く。現在のマーケットの水準を評価し、今後の方向性を検討すべき主な理由は、「ミスター・マーケット」に振り回されないように、われわれ自身を守ることになる。
(第14章 市場予測の難しさ - 第Ⅲ部 個人投資家への助言)










← 第13章                                                    第15章 →
トップページ