敗者のゲーム(新版) なぜ資産運用に勝てないのか(第16章 生涯を通じた投資プランを立てよう)

チャールズ・エリス (著)  2003年12月4日


 「アダム・スミス」の「株は、あなたに持たれていることを知らない」という優れた教えに注目したい。この見方は株、債券、不動産などすべての投資にあてはまる。
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 複利の効果は驚くほど強力である。古い中東のおとぎ話で、王様が自分の帝国の危機を救った将軍に感謝して、何でも望み通りの褒美をとらそうと言ったという。将軍は遠慮深く、チェッカー盤(縦横八マス)の一マスに小麦一粒、次のマスに二粒、第三のマスに四粒、次は八粒と順番にマスを埋めてください、とだけお願いした。王様は莫大な褒美を与えずにすみそうだと思い、一見単純な方式で将軍への義理を果たせると、喜んでこの提案を受け入れた。不幸なことに、王様は複利効果の恐るべき力について知らなかった。どんなものでも六四回倍増させれば、際限なく膨れあがる。この話では、一粒から始めて二倍、四倍とチェッカー盤を埋めていった小麦の総量は、帝国全体の富をはるかに超えるものであった。
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 もしあなたが二〇世紀初めに一〇〇ドルを普通株に投資していたとしたら、現在いくらになっているだろうか。何と七三万三三八三ドルである。
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 主たるメッセージは、インフレが富の実質購買力を容赦なく破壊していく、しかも、経済成長が富を蓄積していくスピードとほとんど変わらぬ速さで、というところにある。
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 ほんの一世代の間に、インフレは貨幣価値の八〇%を失わせる。
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 インフレの持つ、臼でひき潰すような凄まじい破壊力こそ、明らかに投資家にとって最悪の敵である。図16-1に見る通り、ほんの二〇年で一ドルの購買力は三二セントに減価してしまう。
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 市場はあなたの希望や計画にはまったくお構いなしに動く。市場に合わせるべきは投資家のあなたであって、市場はあなたに合わせてはくれない。
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 税金の影響は株と債券において特に著しい。
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 インフレは投資家にとって税金よりはるかに深刻な問題である。実質購買力で見れば、債券は一世代の間運用して、わずかに元本を二〇%上回るにすぎない。そして財務省証券にいたっては、二〇%も減価してしまう! 税金とインフレが、恐るべき「金融市場の海賊」と呼ばれるのも、無理もない。
 さらに、投資信託の経費や売買コストなど、現実の保有コストまで含めると、採算は一段と悪化する。通常、現金を管理する典型的なマネーマーケット・ファンドでさえ年間〇.五%、債券ファンドでは一%、株式ファンドは一.四%の経費がかかる。
(第16章 生涯を通じた投資プランを立てよう - 第Ⅲ部 個人投資家への助言)










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