ピーター・リンチの株式投資の法則(第1章 聖アグネスの奇跡)

ピーター・リンチ (著), 酒巻 英雄 (監訳) 2002年3月14日


○ はじめに
 株式市場というのは成功者が目立つ場でもある。しかし、そこで簡単に「不可」を取ってしまう。先物やオプションに手を出し、相場のタイミングを狙うようなやり方なら、すべて「不可」を取るのは簡単なことだ。
  ・
  ・
  ・
 以前は、セールスマンそれ自体が役に立つデータ・ベースであった。古いスタイルの多くのセールスマンは、ある特定の産業やひと握りの企業の研究者であって、顧客に一部終始を教えることができた。このような昔のセールスマンは、往診をしてくれるような医者なみにありがたい存在であった。今より、昔の証券セールスマンのほうが、自分でも調査をしたし、社内の調査情報を活用することも多かった。
 最近の流行は、株以外にも多くの金融商品を扱っているセールスマンである。年金、リミテッド・パートナーシップ、保険、CD、公社債券投資信託に株式投資信託も取り扱っている。これらの商品すべてをある程度は理解していなくてはならない。彼らには小売業界や自動車業界を自ら調べようなどという時間もなければ意思もない。個別の株式に投資をする顧客はほとんどいないので、銘柄選択のアドバイスを求められることはない。
 個別の銘柄選択についてアドバイスできるセールスマンが少なくなり、遊び金になる気まぐれな投機が助長され、プロの技術に過大な敬意が払われる雰囲気のなかで、自分で銘柄を選んでも仕方がないと結論づける人が多く現れても不思議ではない。
(第1章 聖アグネスの奇跡)

○ 聖アグネスのポートフォリオ
 【ピーターの法則3】
  クレヨンで説明できないアイデアには、決して投資するな。

 このルールは、アマチュアやプロを問わず、大人のファンド・マネジャーも採用すべきである。大人は、内容のわからないベンチャーを好んでお金を失い、理解しやすい儲かる銘柄を無視する癖がある。
  ・
  ・
  ・
 自分の理解できるもの以外は買わないということは、多くのプロが実行してこなかった大変に洗練された戦略である。
 聖アグネスの生徒が知っている会社の一つに、カラー・ペンやマーカーのメーカーであるペンテック・インターナショナルがあった。軸の両端がマーカーペンになっている同社の製品をモリセイ女史が使っていた。このペンは大変に人気があり、何人かの子供はこのペンで、選んだ銘柄に印をつけていた。まもなく彼らはペンテック社自体を調べ出した。
 このとき、株価は5ドルであり、生徒たちはこの企業が長期借入をしてないことを発見した。生徒たちはまた、ペンテックが優れた製品をつくっていることに感銘した。この製品はクラスでの人気から判断して、全国の小学校でも人気になりそうであった。さらによいことには、たとえばジレット(ビック・ボールペンや洗面台にある父親の剃刀のメーカー)に比べて、ペンテックは、彼らにしてみれば、相対的に知られていない企業であるということであった。
  ・
  ・
  ・
 九〇年の最優秀チームは、次の銘柄をそれぞれの理由から選んだ。
  ディズニー(すべての子供がこの会社を説明できる)
  ケロッグ(この会社の製品が好きだ)
  トップス(誰もが野球カードを交換している)
  マクドナルド(人は食べなければならない)
  ウォルマート(驚異的な成長力)
  サバンナ・フーズ(『インベスター・デイリー』(経済紙)から知った)
  ジフィー・ルーブ(安かった)
  ハスブロ(オモチャの会社だから)
  タイコ・トーイ(同上)
  IBM(まだまだ伸びる)
  ナショナル・ピザ(ピザを断る人はいない)
  ニュー・イングランド銀行(もう下がらない)
(第1章 聖アグネスの奇跡)

○ 聖アグネスのコーラス
 将来、失敗をしないように心に留めておくべき言葉である。
  ○ よい会社は、たいてい毎年配当を増やす。
  ○ 損をするのはあっという間だが、儲かるには時間がかかる。
  ○ 単に、株価で決まるのでなく、経営がよいと思う企業を選ぶかぎり、株式投資は決してギャンブルではない。
  ○ 株式市場では大きく儲かることもあるが、同様に損をすることもある。
  ○ お金を注ぎ込む前に、その会社を調査しなければならない。
  ○ 株式市場に投資するときは、いつも分散投資をすべきだ。
  ○ 複数の会社に投資しなさい。選んだ五社のうち、一社はすばらしく値上がりし、一社はひどく、あとの三社はまずまずになるから。
  ○ 銘柄に惚れるな、常に自由な発想を持て。
  ○ ただ株を選ぶだけではいけない。調査をきちんとすべきだ。
  ○ 公益株を買うのは、高い配当を得られるのでよいことだ。しかし、儲かるのは成長株だ。
  ○ 株価が下がったからといって、もう下がらないというわけではない。
  ○ 長期間では、小型企業の株を買うのがよりよいことだ。
  ○ 安いと言うだけで株を買うべきではない、その会社をよく知ってから株を買え。
(第1章 聖アグネスの奇跡)

○ 八〇〇〇の投資クラブは間違っていない
 投資クラブの成功のカギは、定期的に投資することである。このことで、市場が上がるとか、下がるとかの思惑を排除し、衝動買いや衝動売りで投資資金を無駄にすることがなくなる。毎月、同じ金額を株に自動的に投資する人々は、これらのクラブと同じように利益を上げられるだろう。
  ・
  ・
  ・
 この五二年間を通し、毎年一月三一日に一〇〇〇ドルを追加していけば、五万二〇〇〇ドルの投資は、現在、三五五万四二二七ドルの価値になっただろう。最後に、市場が一〇パーセント下落するたびに(過去五二年間に三一回起きている)、勇気をもってさらに一〇〇〇ドル追加すれば、八万三〇〇〇ドルの投資は、六二九万五〇〇〇ドルに相当する。このように、何があろうと株式を定期的に購入し続ければ、相当な成果が得られるわけである。多くの投資家が弱気になっている時に株を買えば、さらに大きい成果が上げられるわけである。
 NAICに属する八〇〇〇のクラブは、八七年のブラック・マンデーに端を発する調整局面でも規則正しく投資を続けている。当時、世界の終りや銀行システムの終わりが来ると誰もが予想していたが、そのクラブは弱気の意見を無視して、株を買い続けた。
  ・
  ・
  ・
 成長企業を五社買えば、その内三社は予想どおりの株価を示し、一社は予想していない問題に出会ってがっかりさせられ、あと一社は想像していたよりうまくいって、すばらしいリターンに大いに満足するというのが経験則である。
(第1章 聖アグネスの奇跡)









← 序 章                                                       第2章 →
トップページ