ピーター・リンチの株式投資の法則(第3章 投資信託の旅)

ピーター・リンチ (著), 酒巻 英雄 (監訳) 2002年3月14日


○ ポートフォリオの組み方
 株式のほうが債券よりも高い収益率を上げている理由は容易に理解できる。企業が大きくなり利益を多く上げるようになるに従って、株主は増えた利益の分配にあずかるのである。配当は増加する。配当は株式投資で成功するための重要なポイントである。もしあなたが過去一〇~二〇年続けて増配してきた企業だけでポートフォリオを組んだとすればほとんど失敗することはない。
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 企業は増配で株主に報いることが一般的であるが、金融史上いかなる企業も、メディチ家の時代までさかのぼっても、債券の金利を上げて債権保有者に報いたという例はない。債券保有者は株主総会に、招待されることはない。そして、債券を発行している企業の業績が好調であっても、債券保有者はボーナスをもらうことはないのだ。債券の保有者が望みうる最大限のことは、インフレによりその価値が目減りしている元本が戻ってくることである。
(第3章 投資信託の旅)

○ 債券対債権投資信託
 債券を保有しているほうがぐっすり眠れるような人は、びっくりして目を覚ますかもしれない。八パーセントの利子を支払う三〇年債は、三〇年の間低いインフレ率であって、初めて安全といえる。もし、インフレ率が二桁に戻ったとすれば、八パーセントの利子を支払う三〇年債の流通価格は少なくとも二〇~三〇パーセント下落するであろう。その場合には、債券を売ればあなたは損をする。もし債権を三〇年間ずっと所有していれば、あなたのお金が戻ってくることは保証されているものの、元本の価値は現在の価値の数分の一でしかなくなる。ワインや野球カードと異なり、お金は年月を経ると減価するのだ。たとえば九二年の一ドルは六二年の一ドルの三分の一の価値しかない。
(第3章 投資信託の旅)

○ 株式投資信託対株式投資信託
 ある面においては、株式投資信託は株式となんら変わらない。利益を上げる唯一の方法は保有し続けることである。そのためには強い意志が求められる。株式投資ができない臆病な投資家にとっては株式投資信託は何らそれを克服する方法とはなりえない。最も高いパフォーマンスを上げているファンドが、調整局面において平均的な株式よりも大きく値下がりすることは通常よく起きることである。私がマゼラン・ファンドの指揮をとっていたとき、通常の株式が一〇パーセント下落した九回のケースにおいては、マゼラン・ファンドの値下がりのほうが市場よりも大きく、反発のときの戻りは市場よりも大きかった。この反発から利益を上げるためにも、投資家はファンドを持ち続ける必要があるのだ。
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 自分の保有している株式が五〇パーセント値下がりすることに耐えられない投資家は株式を保有すべきでない、というウォーレン・バフェットの警告は、株式投資信託にもまた当てはまる。
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 市場平均を構成している株式で組まれる投資信託の多くが、市場平均よりも悪いパフォーマンスを上げてしまうのか? ほとんどのファンド・マネジャーのパフォーマンスが平均に及ばないというのは不可解なことだが、それが事実なのである。九〇年まで八年連続して、多くのファンド・マネジャーはS&P五〇〇種指数のリターンに勝てなかった。
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 過去三〇年間において、プロに運用された投資信託のほうがわずかに勝っていたものの、投資信託とインデックスのパフォーマンスはほとんど同じといってよかった。多くの場合において、人々が適切な投資信託、上手な運用者を選ぼうとした努力は何の役にも立たなかったのである。常に市場を上回る運用成績を上げる数少ない投資信託のうちの一つを選ぶことができるかどうかは運次第で、あなたの労力は結果として何の役にも立たなかったのだ。
(第3章 投資信託の旅)

○ セクター・ファンド
 大昔から、金は世界中の人々に非常に大切にされてきたという事実からも、私は、金の最後の熱狂相場がすでに終わってしまったとは考えていない。私が関係している慈善団体の一つは金鉱株をいくつか保有しており、また、最近、私は何人かの博識の金の専門家を招いて説明を聞いた。彼らは、八〇年代の南アフリカの生産量の減少は、米国、カナダ、ブラジル、そしてオーストラリアの鉱山からの新しい生産で、十二分にカバーされたと指摘した。これが金の過剰状況を生み出し、さらに、旧ソ連諸国からの金の投げ売りが、状況を悪化したとしているが、彼らは過剰状況が続くことには、懐疑的である。
 新しい鉱山からの金の供給はすぐに底をつくであろうし、その一方で、過去一〇年間の低価格が、金鉱会社からさらなる探査や開発の意欲を失わさせている。こういったことにより、今後、金価格にとって好循環が整えられよう。宝飾品、産業用の金需要が増加する一方で、供給は減少する。そして、もしインフレ率が二桁の上昇率に戻れば、人々はインフレ・ヘッジのために金を購入するであろう。
(第3章 投資信託の旅)

○ ピーター・リンチ、日本を嗤う
 日本では「野村証券が号令をかけるとき、人々は従う」という言葉に置き換わったであろう。証券会社は信頼されており、彼らの助言はあたかも福音のごとく考えられていた。日本人はバブルにまみれていたのである。
 その結果がPERが五〇倍、一〇〇倍、二〇〇倍という株式がひしめく不思議な市場が生まれ、あまりにも合理的水準からかけ離れすぎていたために、日本市場の高いPERは文化的特色であると理論づけられはじめるほどであった。
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 日本はオーソドックスな調査に基づいて投資をする人にとっては、悪夢のような国である。悪いバランス・シート、さえない業績、途方もないPERで買われている株価の企業の例をいくつも見てきた。証券史上で最大の売り出しを行った企業であるNTTも、そんな企業の一つであった。
 電話会社が民営化されるとき、私は通常それを買ってしまうが、NTTだけは例外だった。これは通信回線が行き届いていない、発展途上国の高成長会社ではない。成熟段階にあり、規制された日本の公益企業なのだ。分割前のAT&Tのようなもので、年間六~七パーセントの成長が望めるが、二桁成長は望めない企業なのだ。
 最初の売り出しは、八七年に一株当たり約一二〇万円で行われた。その当時私は異常な値段だと考えたが、その後の市場では株価は三倍になった。その時点で、NTTは一株当たりの利益の三〇〇〇倍ぐらいで取引されていた。時価総額は三五〇〇億ドルと、ドイツの株式市場すべてより、またフォーチュン五〇〇社の上位一〇〇社の時価総額の合計よりも、大きかったのである。王様が裸であるばかりか、民のシャツも奪った、というところか。
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 日本株のなかで唯一割安だったのは、日本の将来の成長および繁栄の鍵をにぎると考えられる小型株であった。日本の小型企業は、多いなる株式狂乱期の最初の頃には見向きもされなかったので、当時、私は割安な小型株を集中して買った。こういった小型株が、他の株式同様に異常な水準まで上昇したとき売却した。
(第3章 投資信託の旅)









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