ピーター・リンチの株式投資の法則(第13章 すばらしい買い物)

ピーター・リンチ (著), 酒巻 英雄 (監訳) 2002年3月14日


○ はじめに
 八八年以来、新聞紙上でS&Lの倒産や民事訴訟、はたまた救済策についての議会活動の報道を目にしない日はなかった。この悲惨なS&Lの状況に関して、少なくとも五冊の本が書かれているが、どれ一つとして「S&L株で財産をつくる方法」というテーマでは書かれていない。
 しかし、このトラブルをうまく避けることのできたS&Lにとってみれば、必ずしも厳しい状況とはいえなかった。自己資本比率とは最も基本的な財務力を計る指標であるが、これに基づくと、一〇〇社以上のS&Lが、アメリカの最も強い銀行といわれているJ・P・モルガンよりしっかりしている。コネチカット州のあるS&Lは自己資本比率一二.五パーセントであるが、J・P・モルガンのそれは五.一七パーセントでしかない。
 その他の諸指標も考慮してJ・P・モルガンは卓越した銀行であるわけであり、単に自己資本比率だけで比較することは無茶かもしれない。重要な点は、多くのS&Lは財務状況がかなり良好であり、それは我々が聞いていることと逆であるということである。
(弟13章 すばらしい買い物)

○ S&Lの評価方法
 S&Lへの投資をせき立てられるときは、いつもゴールデン・ウエストのことを考えるが、九一年にその株価が倍になったときに、私はよりよい点だけを見つめることにした。『バロンズ』の九二年の座談会の準備のために、S&Lのリストを調べたとき、いくつかの有望株を見つけた。
 S&Lのスキャンダルは、雑誌の表紙を飾らなくなり、住宅市場の崩壊の物語が取って代わるようになった。住宅市場の崩壊は二年間にわたる恐怖の源となっていた。つまり、住宅市場が崩壊し、銀行の信用システムも共に崩壊するというストーリーである。人々は八〇年代初期に、テキサス州の住宅市場が崩壊したときに、いくつかの銀行とS&Lが、連鎖倒産したことを思い出した。金持ち用の高級住宅がすでに調整期に入っていた北東部やカリフォルニア州のS&Lに同じ運命が降りかかると思った。
 九〇年と九一年の平均住宅価格は上昇した。このことは私に、住宅市場の崩壊はむしろ金持ちの想像による絵空事である、と確信させた。堅実なS&Lは高額な住宅や、商業用不動産や建設融資などには、わずかしか関係していないことを知っていた。資産構成のほとんどは、一〇万ドルの住宅融資であった。しかも確実に利益を伸ばし、しっかりした預金基盤を持ち、自己資本比率はJ・P・モルガン以上であった。
 堅実なS&Lの魅力はほとんど無視されていた。ウォール街の専門家や一般投資家もこの分野に見向きもしなかった。
(弟13章 すばらしい買い物)









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