ピーター・リンチの株式投資の法則(第15章 苦悩の原子力発電 CMSエナジー)

ピーター・リンチ (著), 酒巻 英雄 (監訳) 2002年3月14日


○ はじめに
 配当収入の必要な投資家にとって、最終的に有利なのは、銀行からCDを買うよりも公益株に投資することである。CDは、利息と元本を受取る。公益株であれば、毎年増配される可能性のある配当収入に加えて、キャピタル・ゲインが手に入る可能性もある。
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 私は公益株を金利敏感株としてとらえており、その性格を利用して売買タイミングを決めた。
 しかし、私が儲けた公益株は、問題を抱えた企業であった。フィデリティ社は、スリー・マイル島の災害の後ゼネラル・パブリック・ユーティリティーで大儲けした。
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 前述の問題を抱えた公益企業は皆、原子力発電設備や、建設されることのない原子力発電所の資金繰りに苦しんでおり、株価は、原子力発電所の恐怖で抑圧されていた。
 問題を抱えた公益企業のパフォーマンスが、他のセクターの問題含みの企業のそれよりよかった理由は、公益企業が政府の規制下におかれているためだ。公益企業は破産宣言もできるし、無配にすることもできるが、人々が電力を必要とするかぎり、そのサービスが提供され続ける方法を見つけなければならない。
 規制の下で、電力やガスの料金設定、利益率設定、失敗した事業にかかったコストが価格転嫁される。州政府は公益企業と利害が一致しているため、問題を抱えた公益企業に融資が与えられる可能性は非常に濃厚である。
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 問題を起こした公益株に投資すると、簡単に利益を上げることができる。無配のときに買って、復配するまで保有し続ける。これが非常に成功率の高い戦略だ。
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 CMSエナジーはもとの社名をコンシューマーズ・パワーと言い、ミッドランド原子力発電所を建設したときに、社名を変更した。多分、株主に対してやましいことがあったのかもしれない。株価は20ドル台で推移していたが一年もたたないうちに4ドル50まで下落し、84年一〇月に無配転落したあと、株価は底を打った。
 CMSは、監督官庁が建設計画を支持したということは、完成時には操業を認めてくれるはずだという愚かな前提で、多額の設備投資をして原子力発電所を建設中であった。州の公益事業担当者は、電力会社がすべて投資し建設計画を中止するのが不可能な状態になるまでは、原子力発電所の建設計画を支持する傾向がある。そして、完成間近になって、役所は計画を認めないことにし、公益企業を打ちのめしてしまうのであった。
 CMSに同様のことが起きたとき、使用を認められなかった設備の償却に四〇億ドルも充てなければならなくなった。ウォール街がこれを見たとき、倒産は時間の問題と考えた。
 しかし、CMSは倒産しなかった。そして、八〇年代の終わりには、使用不可能な原子力発電所を天然ガス発電に切り替えることで、原子力発電所の有効活用に成功した。この切り替え工事(CMSの最大顧客のダウ・ケミカルの援助で実行された)は、多額の費用を必要としたが、四〇億ドルが無駄に捨てられるよりは、はるかにましなことであった。九〇年三月に、発電所はオープンした。生産コストはキロワット当たり一六〇〇ドルで、当初予算を若干下回っていたが、工場の稼働状況は良好であった。株価は回復し、約36ドルとなり五年間で約九倍になった。その後、ミシガン州の政府が事業に不利な規制を実施したため、株価は17ドルに下落し、そのときに偶然、この株を発見した。
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 第二に、ミシガン州の電力需要は上昇していた。一二年間連続で上昇を続けていた。九一年の景気後退でも一パーセントの増加を記録した。
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 CMSは金利を支払うのに十分なキャッシュ・フローがあった。私は自分自身で財務諸表を見てこれを確認した。利益と減価償却費の合計を発行済株式数で割って求められた一株当たりのキャッシュ・フローが六ドルであると知った。CMSの発電設備は比較的新しいので、修理に多額の費用を必要としなかった。減価償却に充てられた費用は、何か別のことに使えるはずであった。自社株買い、企業買収、増配、いずれも最終的には投資家の利益になることばかりであった。私が好むのは、自社株買いか増配だ。
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 いずれにせよ最終的には成長していく企業であったのだ。もし、厳しい料金設定が行われても、内部留保を取り崩して供給能力の拡大に資金を投入し、事業を拡大することができる。18ドルの株価は純資産より低く、私は、リスクに対して非常に大きな株価上昇余地があると思った。
(弟15章 苦悩の原子力発電所 CMSエナジー)









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