バフェット投資の王道(第8章 バフェットの間違いに学ぶ)

ロバート・P・マイルズ (著), 三原 淳雄 (著), 小野 一郎 (著) 2005年1月17日


○ はじめに
 誠実で有能な経営者が率いる優れた企業の株式をあなたが買ったとしても、間違いはありうる。投資を集中させることによって、市場を上回る成績を上げる確率が二五%上昇するのと同様に、市場を下回る確率も同程度存在することを忘れてはならない。少数のものを大量に買うことは、間違いの確立を飛躍的に高めることにもなりうる。
(弟8章 バフェットの間違いに学ぶ)

○ 間違い① バフェットの最大の間違いは、長期的な比較優位性がなかったこと
 バフェットは、自分の最大の間違いは、マサチューセッツ州ニューベドフォードの繊維会社バークシャー・ハサウェイを買ったことだ、と楽しそうに話す。一九六五年に経営権を握ってから約二〇年後に、繊維事業は海外からの安い競争先に対抗することができないとして廃業した。
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 アメリカの繊維事業を選択し、その事業をやめざるをえなくなったことは、ごく小さな投資の間違いである。それは従来型の産業だった。バフェットは、自分が所有しているものについて理解していた。そして、本当の価値に比べて割安で買っていた。彼の投資規模は大量だった。したがって、買い方が不十分だという間違いは犯していない。彼の間違いとは、買った企業が属していた産業が間違っていたということである。
(弟8章 バフェットの間違いに学ぶ)

○ 間違い② 間違いを抱えた産業に投資したこと
 彼は三億五八〇〇万ドルを投じてUSエアの優先株を購入したが、これはすぐに間違いだとわかった。六年後の一九九五年にバフェットはこの投資の大部分を償却した。USエアの経営者は優秀であったが、繊維産業と同様に航空産業も投資すべき産業ではなかったのだ。
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 一九九六年はUSエアにとって最高の年になり、結局バフェットは投資額の二倍近い六億六〇〇〇万ドルを受け取ることになった。間違いの本質は、長期的に明るい展望がない産業に間違って投資したことだった。しかし、この間違いも、バークシャーと同様、結果はかなりよいものになった。
 航空産業の間違いは、この事業が資本、労働、燃料、天候、経済状況、競合状況など多くの要素に敏感に反応することにある。これまでに成功を収めたのは、低コスト経営のサウスウェスト航空ただ一社である。
(弟8章 バフェットの間違いに学ぶ)

○ 間違い③ 現金ではなく、株式交換で投資すること
 一九九三年にバークシャーはデクスターを丸ごと買収するために四億二〇〇〇万ドルを支払ったが、現金ではなく、成長を続けるバフェットのコングロマリットの株式の二%を譲渡することを申し入れた。
 この間違いは年々大きくなっている。現時点でバークシャーの株式の二%と言えば、二〇億ドルに相当する。したがって、デクスターに投じた四億二〇〇〇万ドルは、今では二〇億ドルの負担となったのである。二〇〇一年にこの間違った投資を全額償却した。
(弟8章 バフェットの間違いに学ぶ)

○ 間違い④ 早く売りすぎたこと
 アメリカン・エキスプレスが大きなスキャンダルで株価を大きく下げた一九六四年に、バフェットは彼のパートナーシップの資産として同社の株式の五%を一三〇〇万ドルで購入した。当時、一三〇〇万ドルはパートナーシップの資産の五〇%であったことは注目すべきである。つまりチャンスが到来したとき、十分にまとまった量を買わないという間違いを犯さずにすんだのである。おかげでバフェットはたっぷり二〇〇〇万ドルの利益を上げてこの投資を売却したものだが、もし売らずに持ち続けていたとすれば、今なら同社の株式の五%は三〇億ドルの価値を持っているはずであり、ルックスルー(見なし)利益ベースで計算すると、購入コストの一〇倍の利益を毎年得ていたはずである。
 一九六六年にはウォールト・ディズニー本人と面会して、バフェットは四〇〇万ドルでディズニーの株式の五%を取得した。今から考えると呆れるような話だが、そのとき資金さえあれば、わずか八〇〇〇万ドルでディズニーを丸ごと買収することもできたのである。八〇〇〇万ドルは今ならジェットコースター一機のコストにすぎない。
(弟8章 バフェットの間違いに学ぶ)

○ 間違い⑥ 現金が多すぎること
 有能な経営者が率いる素晴らしい事業が、本質的価値に比べて割安で大量に買える状況になるまで待つのである。辛抱強いことは、投資家として大成するために重要な資質であると認識すべきである。大きいな話は滅多にない。出てきたときには、決然と行動を起こすことが必要なのである。
 現在、バークシャーの手元には、現金およびジャンクボンドの形で二四〇億ドルがまさに投資されることをじっと待っている。
(弟8章 バフェットの間違いに学ぶ)

○ 実は間違いではなかった間違い
 アメリカ最大の再保険会社(保険会社に保険を提供する会社)ジェネラル・リに対する投資も、社内外から批判を受けた。しかし実は、バフェットは再保険事業を十分に理解しており、本質的価値よりはるかに安く同社を買収していたのである。一九九八年の終わりにバークシャーは一六〇億ドル相当の株式を交換することで同社を買収した。代わりにバークシャーが受け取ったのは、一六〇億ドルの債券、五〇億ドルの株式、一六〇億ドルのフローと(契約者からの支払いは済んでいるが、まだ保険金支払い請求が出ていない余資)、そして毎年一〇億ドルの利益を上げている会社であった。
(弟8章 バフェットの間違いに学ぶ)

○ 間違いを認めることを恐れてはならない
 ソロモンは倒産の瀬戸際に追い込まれ、バークシャーの投資も危険にさらされたが、ウォーレン・バフェットの高い評判によって、ソロモン・ブラザーズは救われることになった。彼はただちに優秀でしかもルールを遵守して働く能力のある人に経営陣を入れ替え、また同時に、投資家、顧客、議会に対して、近視眼的でモラルの低かった経営者の誤った判断の責任をソロモンの八〇〇〇人の従業員に負わせるべきではないと訴えた。バフェットは議会の聴聞会で宣誓して、彼がソロモン・ブラザーズの全社員に対してこう伝えたことを明らかにした。「会社に経済的な損失を与えることは、まだ許せる。しかし、評判をわずかでも損なう人間に足しては容赦しない」。
 一九九二年の初めに、ソロモンは二億九〇〇〇万ドルの罰金を政府に支払うことに同意した。ソロモンを救ったバフェットの給料が一ドルだったことは念頭に置いておくべき話だろう。バークシャーは、ソロモンの株式を一九九七年にトラベラーズに売却した。
(弟8章 バフェットの間違いに学ぶ)

○ 自分自身の間違いから学ぶ
 間違いといえば、バフェットは一〇代のうちに三振をしたようなもので、あらゆる種類の間違いを経験している。群衆の愚かな行動に従ったこともあれば、感情に任せての投資や、オーナーではなくトレーダーの意識で投資したこと、価値ではなく価格に基づいて投資したことなど、ありがちな間違いはすべてやっている。
 一方で、バフェットの素晴らしいところは、ベンジャミン・グレアムのもとで事業を正しく評価する方法を学び、市場価格について考察し、安いときに企業を買収し、投資経験がまだ浅いうちに他の人の犯した間違いから多くを学んだことである。
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 「大きな間違いを犯さなければ、投資家はごく少数のことをうまくやるだけで十分だ」とバフェットは書いている。さらに、「ゴールサインを出すことよりも、やらないと決断することのほうが重要である。優れた実績は、どの船(事業)に乗ったかということよりも、どれだけ効率的に船を漕いだかによって決まるのであり、難しいものに挑んだからといっておまけが付くことはない。私は七フィート(約二メートル一〇センチ)の高さを飛び越えそうとしているのではない。簡単に跨げる一フィート(約三〇センチ)の高さのところを探し出しているだけなのだ。難しさを減らすように考えよう」。
(弟8章 バフェットの間違いに学ぶ)

○ 投資の大失敗を回避する方法
 世界最高の投資家であっても、間違いだと気づくまでは正しくない方法を行っていた。バフェットはこう書いている。「私はありとあらゆることを試みた。チャートを集め、テクニカル分析の本を読み漁ったこともある。予想屋の声に耳を傾けたこともある。そうしているうちに、グレアムの『賢明なる投資家』に出会い、ついに光明を見つけたのである」。そして、「投資家の犯す大きな間違いの一つとして、価値ではなく価格にとらわれることがある」と言う。
 バフェットによれば、「自分で理解していないものに投資したり、先週、他人がうまく儲けたというだけで投資したりするのは大きな間違いであり、株式を買う理由の中で最も愚かなものは、株価が上がっているからというものである」。どれだけ多くの人がこの間違いを犯してきたことだろう。
(弟8章 バフェットの間違いに学ぶ)

○ 自分がアクティブな投資家なのかパッシブな投資家なのかを見極めよう
 市場の大部分を代表している手数料の安いインデックスファンドを買うことは間違いではない。毎日情報を追いかけるアクティブな投資家としての生活を楽しめないのなら、インデックスファンドを買っておいて、自分の時間をもっと楽しいことに使ってもかまわない。
(弟8章 バフェットの間違いに学ぶ)

○ 自分がよく理解しているものだけを投資対象とする
 あなたのリスクを最小限に抑えるために、本や資料を読み、調査をしよう。読んでいる内容が理解できなければならないし、もし企業が提供する情報を読んでも、その製品・サービスや財務状況が理解できない場合には、投資すべきではない。バフェットが財務諸表を読んで内容を理解できないときには、彼はその企業の経営者が意図的にわかりにくくしていると考える。当然、その企業には投資しない。
(弟8章 バフェットの間違いに学ぶ)

○ 最後に、次のようなよくある間違いを犯さないようにしよう
 約三〇年前のフォーブス誌で、バフェットはこう語ったそうだ。「投資は世界最高のビジネスだ。バットを振らなくてもよいのだから。バッターボックスに立ち、ピッチャーがGM株を四七ドルで投げてきても、USスチールを三九ドルで投げてきても、見逃しのストライクを宣告されることはない。機会はあるが、罰はない。一日中好きなボールを待っていればよい。そして、守備陣が油断しているときに、満を持してボールを打つのである」。
(弟8章 バフェットの間違いに学ぶ)









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