フィッシャーの「超」成長株投資(Chapter1 いま、そこにある投資チャンス - 幸運とセンスがものを言う)

フィリップ・A. フィッシャー (著), 高田 有現 (翻訳), 武田 浩美 (翻訳) 2000年10月1日


○ はじめに
 株を買うのは資産を増やすためなのです。

 だとすれば、どの株を買おうかと考えるよりも前に、他の人々が過去にどうやって資産拡大をしてきたかを調べてみなければなりません。そこでアメリカの株式市場の歴史を振り返ってみると、ざっと見ただけで、大きな財を築くのに2つのまったく違った方法が使われてきたことが分かります。19世紀から20世紀の初めごろまでは、多くの人が、もっぱら景気の循環に賭けるやり方で、規模の大小を問わず資産を増やしていきました。
 当時は金融システムが不安定であったため景気が激しく変動を繰り返しており、そうした時期に大きな利益を得るためには、不況のたびに株を買い好状時にそれを売るというやり方が極めて有効だったのです。金融関係者と親密な付き合いがあり、金融不安の予兆を前もって知ることができる人は、特にこの方法で大金を手にしたものです。

 このような時代は1913年の連邦準備制度(FRS)の誕生とともに終焉に向かい、フランクリン・ルーズベルト政権初期の証券取引法成立とともに歴史の一部となったのですが、しかしここで見過ごしてならないのは、この1913年以前の時代でさえも、先にお話ししたような景気変動を利用した投資法とは違うやり方で、はるかに小さなリスクではるかに多くの利益を得ていた投資家たちがいたという事実です。あのような時代でさえ、安く買って高く売ろうと派手な動きをするよりも、真に優れた企業を見つけ出し、市場がどれだけ激しく変動してもその企業の株を保有し続けるほうが、実際のところ、はるかに大きな利益をはるかに多くの人たちにもたらしたのです。

  ・
  ・
  ・
 アメリカの株式取引所に上場されている企業の株式のなかには、たとえば25年から50年前に1万ドル投資していれば、現時点で25万ドルもしくはその何倍もの価値をもつようになっているものが数多く存在します。言い換えれば、ほとんどの投資家の生涯のうちに、あるいは子供が大人になるまで親がその子に代わって投資をするあいだに、投資家自身やその子供が大きな財産を築く土台となる資金を手に入れる好機が何度もあったということです。好機とはいっても、大暴落で株価が大底を打った日にすかさず買わねばならなかったというわけではありません。このような会社の株は、いつどの年に買っても結局は先にいったような大きな利益を生むことになるのです。ここで必要なのは、飛び抜けた将来を備えた企業だけを選び出し、その他の企業はすべて投資対象からはずすことのできる選択眼だけなのです。
  ・
  ・
  ・

 製品が最初に企画されてから企業の収益に大きく貢献するまで普通は7年から11年の時間がかかるため、いかに大きな収益をもたらす研究計画も、株主の利益に寄与するまでのあいだ企業の資金を食い続けるのだという点も理解しておかねばなりません。

 しかし、下手な研究は高くつき、どれだけのコストがかかるかも読みにくいとはいえ、研究に消極的な企業は、無駄な研究コストを払うよりもさらに高い代償を支払うことにもなりかねません。今後数年間、さまざまな新素材や新しいタイプの機械類が導入されるなか、時代に乗り遅れた多くの企業は、業種を問わず確実に自らの市場を狭めていくことになるのです。
  ・
  ・
  ・

  ・
  ・
  ・
 不況が終わったあとは、これまでと同様に必ずインフレが起こり、物価全般の上昇にともなって、ある業種は助けられ他の業種は苦しめられることになります。このような資金力が弱く自転車操業を余儀なくされているような企業の株主にとっては、景気の好不況の波はかつてないほど大きな脅威になりがちです。しかしこのような環境にあっても、1年や2年であれば困難な時期を乗り越えられるだけの財務力や資金調達力を備えて成長企業に投資してさえいれば、その会社の業績が落ち込んだとしても、1932年以前のような株券が紙屑同然となるような事態を恐れる必要はなく、単に持ち株の市場価値が一時的に低下することを覚悟しているだけでよいのです。

  ・
  ・
  ・
 景気が大きく後退すれば金利はほぼ例外なく低下し、それに応じて債券の価格は、株価の上昇がほとんど見込めないのに反して、上昇するからです。そうしてみると、格付けの高い債券は投機家には向いているが長期投資家には不向きであるという結論が引き出されます。これは一般に受け入れられている考え方とは正反対のように思えるでしょうが、(次に実例を挙げて説明するとおり)インフレが実際にどのような影響を及ぼすかを理解すれば、なぜそう言えるのかが納得できるはずです。

  ・
  ・
  ・
 好景気が続けば、際立った優良株は債券の運用成績を常に上回ることになります。逆に景気が大きく後退すれば、債券は一時的にはどの優良株よりも高い運用成績をあげるでしょうが、大量の財政赤字を生み出す政策が次々と実施されるため、債券型の投資は投入資金の実質購買力を大きく下落させる結果になるはずです。不景気のあとには、ほぼ確実にインフレが起こります。そうした厄介な時期に売却時期を判断するのは非常に難しいため、この種の債券は、現在の複雑な経済システムのもとでは、銀行や保険会社など債券の金利変動を相殺できる負債をもつ企業か、あるいは短期投資目的の個人に本来は適しているのだと考えざるをえません。債券投資は、購買力の低下する可能性を補うに十分な利益を長期投資家に与えてくれはしないのです。

 本書の最後に、わたしが長年かかって拾い集めた投資のヒントをまとめてお話ししておきたいと思います。過去を研究し、さらには過去と現在との主な相違点を投資という視点から比較するうちに、結局は次のようなことが明らかになります。それはつまり、同業他社の平均を大幅に上回る売上げと利益の伸びを何年にもわたって維持できる特別な企業を探し当てる幸運やセンスに恵まれた人こそが、投資によってもっとも大きな利益を上げることができるのだということです。そのような企業に出会ったら、長期にわたってそこに投資を続けていくことが大切です。そうした企業は、これまでの例からいって、必ずしも新しくて小さな会社であるとは限りません。会社の規模は問題ではないのです。重要なのは、経営者が大きな成長を続けていこうとする決意をもち、目標達成に向けて自らのプランを実行する力を備えているかどうかという点です。
(Chapter1 いま、そこにある投資チャンス)









← はじめに                                               Chapter2 →
トップページ