フィッシャーの「超」成長株投資(Chapter3 最高の株を選び出すための15のポイント)

フィリップ・A. フィッシャー (著), 高田 有現 (翻訳), 武田 浩美 (翻訳) 2000年10月1日


○ はじめに
 わたしは、投資家が企業を見るうえで考慮すべきポイントを15の項目にまとめました。ある企業が、その項目のほとんどすべてに当てはまるなら、おそらく極めて魅力的な投資対象になるでしょう。逆にその多くに当てはまらなければ、わたしの投資基準を満たしていない企業だということになります。15のポイントのなかには会社の経営方針にかかわるものもあれば、その方針がどれだけ効果的に実行されているかにかかわるものもあります。企業の外部から拾った情報だけでほぼ正確に判断できる項目もあれば、内部の人間にじかに確かめなければ満足いく判断材料が得られないような項目もあります。
(Chapter3 最高の株を選び出すための15のポイント)

○ Point1 その企業は、少なくともあと5~6年の間、企業全体の売上げを大きく伸ばすに十分な市場が見込める製品またはサービスを有しているか
 売上げの伸びが止まっている企業や、さらに下がっている企業の株でも、1回限りであれば、かなりの投資利益を上げることが可能です。経費を抑えて経営効率を高めれば、株価が上がるくらいに利益を伸ばせる場合もあります。投機家や底値買いを好む投資家のなかには、このような1度限りの好決算を熱心に追いかける人も数多くいます。けれどもそれは、投資資金からできる限り大きな利益を得たいと望んでいる人を引きつけるほどの魅力のある投資チャンスではありません。

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 どれほど目覚ましい成長を見せている企業でも、毎年かならず前年対比で売上げが伸びていくと期待するわけにはいきません。市場調査はもともと一筋縄ではいかないものですし、新製品のマーケティングにもいろいろ難しい問題が含まれているので企業の売上げは毎年スムーズに伸びていくのではなく、実際には不定期で散発的な伸びを重ねて上昇していくことが多いのです(なぜそうなるのかについては別の章で見ることにします)。さらにまた、気まぐれな景気の循環も、前年対比での売上げの伸びに対して常に大きな影響を与えます。それゆえ企業の成長は、1年単位で見るのではなく、例えば5~6年をひとつの単位として判断すべきです。
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 10年の単位で見ても一貫してすばらしい成長を見せている企業は、2つに分類できます。本書ではこれらをそれぞれ「運と実力を兼ね備えた」企業、「実力で幸運を呼び寄せる」企業と呼ぶことにします。どちらにも共通して求められる条件は、優秀な経営者がいるかどうかという点です。
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 ザ・アルミニウム・カンパニー・オブ・アメリカ(アルコア)は、「運と実力を兼ね備えた」企業の一例です。この会社の創立者は、雄大なビジョンをもった男たちでした。彼らは自社の新製品がどれほど有用なものであるかを正確に予見していました。しかし当時は彼ら自身でさえその後70年間にわたって拡大を続けることになるアルミニウム製品市場全体の大きさを読み取ることはできませんでした。つまりアルコアは外部環境に恵まれたのです。例えば航空輸送網の完成といったことが、一企業の力を超えて彼らの新市場開拓に手を貸したのです。しかし、そうした幸運に恵まれなかったとしても、この企業は成長を続けたはずです。
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 「実力で幸運を呼び寄せる」ということをもっとも典型的に示しているのは、おそらくジェネラル・アメリカン・トランスポーテーションでしょう。いまから50年あまり前にこの会社が創立された時点で、鉄道施設業は大きな成長の見込める有望な業種でした。最近でも、これほど継続的な成長を期待できる産業はほとんど見当たらないと思えるほどです。しかしその後、鉄道業界の状況が変わり貨物車両の製造がしだいに魅力を失い始めた時期にも、この会社は豊かな発想で時代にうまく対応し収益を伸ばし続けました。
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 この先何年間か急激に売上げを伸ばしそうな企業は、「実力と幸運を兼ね備えた」企業であろうと「実力で幸運を呼び寄せる」企業であろうと、投資家に大きな利益をもたらしてくれる可能性があります。しかし、ジェネラル・アメリカン・トランスポーテーションの例で明らかなように、どちらのタイプの企業でも、常に並はずれた能力を備えた人間を経営者に据えているかどうかに注意を払わなくてはなりません。そうでなければ企業の成長は止まってしまうからです。

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 うわべだけの判断では、企業の力を誤って評価してしまう恐れが出てきます。先ほど挙げたテレビ・ラジオ株の例をもういちど見てみましょう。アメリカに起こったテレビブームは、この業種に属する企業の売上げを爆発的に押し上げました。ところがこのブームは一時的なものに終わり、長期的な成長には結びつきませんでした。しかし、これですべて終わったわけではありません。最近これらの企業のなかに、新しい動きが出てきています。これまで蓄積してきた電子技術を使って通信や自動車制御装置などの新分野に進出し、事業を大きく拡大する企業が出てきたのです。これらの産業や、場合によっては軍需関係の電子産業は、今後しばらく着実な成長を見せるに違いありません。
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 企業の売上げ曲線を判断するうえで常にどのようなことを念頭に置くべきかを教えてくれます。まず第一に、経営者が優秀で、しかも技術革新や研究開発が活発に行われている業種の企業を投資対象に選ばねばなりません。そして次に、その企業が高い成長力を維持できるような舵取りを経営者がしているかどうかに対して常に目を光らせていることが必要になります。
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 1947年、ウォールストリートの友人が、初期のテレビ業界について調査を行いました。半年以上かけて12社ほどの主なテレビ製造業者を調べた結果、彼は、この業界では競争が激化しつつあると考え、先頭を走る企業のあいだで順位が大きく入れ替わりつつあるという認識のもとに、業界内の何社かは急激な株価の上昇もありうると結論づけました。ところが調査を進めていくうちに、ブラウン管のバルブの供給が需要に対して圧倒的に不足していることに気づきました。調べてみると、この製品の製造でもっとも大きな成功を収めているのはコーニング・グラス・ワークス社であるらしいということが分かりました。さらにこの会社を技術と研究開発の面から調査したところ、ブラウン管のバルブの製造にかけてはトップ企業になるだけの条件を十分に備えていることが明らかになったのです。マーケットの将来性から考えて、バルブ製造部門は、この会社の新事業の核となる可能性を十分にもっています。他の製品もおおむね好調だったので、このアナリストは、個人と機関投資家のどちらにもこの会社の株を推奨することにしました。当時この株は、20ドルでした。その後1株が2.5株に分割され、10年後には100ドル以上になりましたので、分割前の株価でみると、1株が250ドルにまでハネ上がった計算になります。
(Chapter3 最高の株を選び出すための15のポイント)

○ Point2 その企業の経営者は、現在の人気製品が市場を開拓しつくそうとする時点で、その後も全体の企業売上げを伸ばしていけるように、新製品や新製法を開発していこうという決意をもっているだろうか
 どれだけ有望な製品でも、やがて市場は飽和します。それゆえ、成長を続けるためには、いずれは新しい市場を開拓しなくてはなりません。
(Chapter3 最高の株を選び出すための15のポイント)

○ Point3 研究開発の規模と比較して、どれだけの成果が表れているか
 企業における事業活動のなかで、研究開発費ほど、その内容も、そこから生まれる収益も会社によって大きく異なるものはありません。最高の経営者を擁する企業同士を比べても、その差は2倍になることもあります。つまり研究費1ドルあたりで比べると、ある企業は他の企業の2倍の最終利益を研究開発から手にしているということです。
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 商業目的の研究開発を成功させるうえで不可欠なのは、研究費用の何倍もの利益を約束する仕事だけ選ぶことです。しかし、プロジェクトが動きだしたあとで予算を見直したり、無関係な外的要因によってプロジェクトの予算を削減したり増やしたりすると、開発コストの総計は、そこから得られる利益に比べてどうしても膨らんでしまうことになるのです。

 最高幹部のなかには、こうしたことを理解していない人もいるようです。
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 何年か前、ある有名な工科大学が最終学年の学生たちに、ある石油会社の名を挙げて、そこには就職しないほうがよいと密かに忠告していたそうです。その会社の最高責任者は、高い技術を備えた人材を集め、通常であれば5年はかかる開発計画に雇い入れておきながら、3年もたつとその計画に興味を失い、放り出してしまうというのです。その結果、この石油会社は、経費を無駄にするばかりでなく、続けていれば得られたはずの研究成果に対する評価を研究員から奪ってきたのです。

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 企業の経営者は、新しい製品や技術を開発する際に、それがどれだけ魅力的に思えても、十分な利益が得られるだけの市場規模を見込めるかどうか慎重に考えたうえで、多額の経費を注ぎ込む価値があるかどうかを判断しなくてはなりません。市場が小さいために利益が出ないのだとすれば、研究費を回収できるだけの売上げは見込めるはずもなく、当然ながら投資家も十分な利益は手にできないことになります。
(Chapter3 最高の株を選び出すための15のポイント)

○ Point4 その企業の営業部門は平均以上の力をもっているか
 営業活動については、それが真の投資価値を決定づける要素であるにもかかわらず、数式を使ってその成果をはじき出すことが難しいため、投資家の多くは評価する手だてをもてずにいるのです。

 こうした問題を解決するには、ここでもまた、あの「聞き込み」が役に立ちます。企業内のどの活動と比べても、営業ほど正しい評価を下すのに業界内の情報が必要な部門はありません。競合相手も顧客も、どちらも正確な判断材料を与えてくれますし、自分なりの見解をためらいなく話してくれます。慎重な投資家であれば、調査にかけた時間に見合うだけの大きな実りを手にすることができるでしょう。

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 製造、営業、研究の3つの点で卓越した力を備えていることが、企業にとって成功するための柱なのだと考えてよいかもしれません。心臓や肺や消化器官が肉体にとってどれも等しく重要であるのと同様に、企業が生き残っていくためには上の3つの要素がすべて必要であり、力強く健全な企業であるためには、そのいずれもがしっかりと機能していなくてはならないのです。
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 ダウ・ケミカルは、研究開発事業で圧倒的な成功を収めた企業の代表例として一般には認知されているようですが、実は営業員の採用にあたっても、研究所の化学者の場合と同じくらい慎重に人材を選び、育成に努めます。
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 強力な販売網を備えていなくても、製造技術や研究技術に優れた企業であれば、ある程度の仕事をとって、一時的な利益をあげることもできるでしょう。けれどもこのような会社はとても脆いのです。長期にわたり着実に成長を遂げていくには、強い営業力がどうしても必要になるのです。
(Chapter3 最高の株を選び出すための15のポイント)

○ Point6 その企業は利益率を維持し、改善するために何をしているか
 現代では、利益率の上昇を阻む要因が常に企業をおそってきます。賃金が年々上昇するうえに、多くの企業が雇用者と長期の労働契約を結んでいるため、今後何年にもわたって賃金の引き上げを要求されるのは目に見えています。労働コストが上がれば、それにつれて原材料や中間財の値段も上がります。固定資産税と地方税を筆頭に、税率も年を追うごとに高くなっていくでしょう。

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 成功する投資家を目指すのであれば、経費を減らし利益率を高めるための新しいアイデアに基づいて、その企業がどれだけ巧みに経営改革を進めているかに注目すべきです。「聞き込み」はここでも有効ではありますが、しかし、直接その企業の経営者に尋ねたほうが、はるかにはっきりとしたことが分かります。幸い、この話題については、たいていどの経営者もある程度は具体的に答えてくれるものです。もしもその企業が上に述べたような方法で最大限の成果をあげているのであれば、そうして手に入れたノウハウをもとに将来も建設的な組織改革を続けていくだけの体制を築きあげたのだと考えてまず間違いないでしょう。こうした企業こそ、長期にわたって株主に対し最大限の利益をもたらしてくれるのです。
(Chapter3 最高の株を選び出すための15のポイント)

○ Point7 その企業は良好な労使関係を築いているか
 長期にわたるストライキが頻発すると企業の生産力がどれだけ大きく損なわれるかは、財務報告書にざっと目を通すだけでだれの目にも明らかでしょう。

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 投資家が企業の労使関係の良し悪しを的確に判定するにはどうすればいいのでしょう。答えは簡単ではありません。あらゆるケースに当てはまるような万能の尺度がないからです。数多くの要素を組み合わせて全体像をつかみ、そこから判断するというのが結局は一番良い方法でしょう。

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 長期にわたるストライキが頻繁に起こっている企業は労使関係が険悪であるのは当然ですが、逆にストライキがまったくないからといって、必ずしも根本から良好な労使関係が保たれているとは限りません。ストライキの起こらない会社は、組合に牛耳られ労働者の言いなりになっている場合もあります。また、衝突が起こらないからといって、基本的に幸福な関係が保たれているとは限らず、経営者の側が労使間の対立を恐れているがゆえに表面上は平静に見えるだけなのかもしれません。

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 労使関係に対する企業の基本的な態度を知るためには、同業他社との離職率を比べてみることが有効です。同様に、同一地域の他社と比べたその企業への求職希望者の数も重要な意味を持ちます。余剰労働力を抱えた地域でもないのに、その企業への転職希望者が驚くほど大勢いるのだとしたら、そこでは良好な労使関係が保たれているはずですから、その点では投資家にとって望ましい会社だと考えられるのです。
(Chapter3 最高の株を選び出すための15のポイント)

○ Point9 その企業は管理職レベルの優秀な人材が豊富にいるだろうか
 投資する価値のある企業とは、成長し続ける企業なのですから、内部で優秀な管理者を育てていかなければ、遅かれ早かれ、ひとりの経営者が全権を握っているような体制では成長の機会をとらえられなくなるほど組織が大きくなってしまいます。この点は、属する業界やワンマン社長の経営手腕によって事情が違ってきますので、一概に論じることはできないのですが、こうした問題は、年間の売上高がおおよそ1500万ドルから4000万ドルに達する時点で発生することが多いようです。
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 人材を育成するには、いくつかの重要な原則が守られていなければなりません。そのなかでもとりわけ重要なのは、権限を与えることでしょう。上から下まで各レベルの管理職に、それぞれが能力を最大限に発揮して巧みに効率よく自らの役割を果たしているだけの権限を与えないとしたら、せっかくの優秀な人材を飼い殺しにする結果となります。能力を発揮する機会を与えなければ、だれも良い仕事はできません。
(Chapter3 最高の株を選び出すための15のポイント)

○ Point11 その企業は、他社との競争を勝ち抜くために企業運営の面で必要な業界特有のスキルを十分に備えているか
 特許をもつことで、企業活動のうちのいくつかの部門が他社との激しい競争から大いに解放されることになります。これによって特許に守られた生産部門が特許をもたない場合に比べて普通は高い利益率をあげられるようになり、ひいてはその企業の生産部門全体の平均利益率を押し上げることにもなります。同時に、強力な特許を数多くもっている企業は独占権を保有しているのですから、製品によっては、もっとも安く簡単に製造することもできます。
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 市場での競争力を維持するためには、製造技術、販売網とサービス組織、得意客、消費者に関する知識といったもののほうが特許よりもっと大きな力となります。実際、大企業が利益率を維持するために特許に頼るようになったとしたら、もはやそれは投資家の観点から危険な兆候と見るべきです。
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 しかし、製造、販売、サービスの組織化や得意先の開拓を始めたばかりの段階にある新しい企業については、まったく話が違ってきます。新興企業は、特許がなければ、大企業に製品をコピーされ、確立された顧客との関係を使ってシェアを奪われ、市場から締め出されることにもなりかねません。
(Chapter3 最高の株を選び出すための15のポイント)

○ Point12 その企業は収益に関して長期的な展望をもっているか
 企業のなかにはいますぐ最大限の利益をあげるように事業を運営するところもあれば、目先の利益を犠牲にしてでも得意先との関係をつくり、長期的な視野に立って利益を高めていく企業もあります。両社の違いは、顧客や仕入先との対応によく表れています。目先の利益を重視する会社は常に仕入先と非常に厳しい価格交渉を行います。後者は、市場の環境が変わり供給が逼迫しそうになったときにも必要な原料や信頼性の高い部品を調達できる供給源を確保しておくため、例えば仕入れ先に配送費用が予想外に高くついてしまった場合には、契約価格よりも高く支払ったりすることもあるのです。顧客への対応にもはっきりとした違いが見られます。何か予期せぬトラブルに巻き込まれた得意客の窮状を救うために経費を惜しまず進んで手を貸す企業は、そのときの取引ではあまり利益をあげられないかもしれませんが、長い目で見ればはるかに大きな利益となるのです。
(Chapter3 最高の株を選び出すための15のポイント)

○ Point15 その企業の経営者はほんとうに誠実だろうか
 投資家におそらく一番大きなツケを支払わせる結果となるのは、経営者が自らの権限を濫用してストックオプションを乱発する場合です。有能な経営陣に対する報酬という名目で、この合法的な手段を悪用し、経営者としての実績に照らしてみると公正な第三者からは明らかに不当に思えるほど多量の株式を自分たちのために発行するのです。

 このような権限の悪用から投資家が真の意味で身を守る方法はひとつしかありません。つまり、株主の資産を託されているのだという強い自覚と責任感をもった経営者のいる会社にだけ投資をするのです。これに関しては「聞き込み」が大いに威力を発揮します。本書でとりあげた15ポイントのうち、この15番目の条件が一番大切だと言えるでしょう。
(Chapter3 最高の株を選び出すための15のポイント)









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