フィッシャーの「超」成長株投資(Chapter5 いつ買うべきか - もっとも危険に見える安全な道)

フィリップ・A. フィッシャー (著), 高田 有現 (翻訳), 武田 浩美 (翻訳) 2000年10月1日


○ まず経済予測に頼るのをやめる
 株の買い時を判断するためによく使われている方法は、わたしには考えるまでもなくばかげたもののように思えます。その方法とは、膨大な経済関連のデータを整理し、そこから全般的な景気の動向について中短期的な見通しを得るというものです。
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 このようなやり方にわたしが反対するのは、それが理論として間違っているからではありません。経済学はいまだ将来の景気動向を正確に予測できるほど発達してはいないため、この方法を実際の投資に適用するわけにはいかないのです。
(Chapter5 いつ買うべきか)

○ ピンの先に何人の天使が乗れるか
 第2次世界大戦以降に発行された『コマーシャル&ファイナンス・クロニカル』をどれでも1冊手に取って目を通してください。経済予測があてにはならないことに気づいている人でも、見てみる価値はあると思います。どの号にも、さまざまな資料にまじって、経済や金融の権威と呼ばれる一流の執筆者が今後の展開を述べた記事が数多く収められているはずです。この雑誌の編集者は、楽観論と悲観論の両方でもっとも説得力のある論文を選んでいるようですから、どの号にも互いに対立しあう経済予測が掲載されています。それ自体は特に珍しいことではないでしょうが、驚くべきことは、それら専門家たちの立てた予測がそれぞれあまりにひどく違っているという点です。さらに注目すべきことに、こうした議論のなかには、記事が書かれた時点で読まされていたとしたら、いかにも力強く説得力にあふれていると感じられるような書き方をしているものがいくつもあるのです。そういう書き方をしている論文に限って予測が大きくはずれてしまっている例が多く見られます。

 金融証券界の人々が、互いに関連のない不完全ともいえる事実の断片を集めて経済の先行きを予測しようと知恵を絞っているのを見ると、それだけの労力を少しでも何かもっと実効性のある事柄に投入しさえすれば、もう少し有益なことができるのではないかと思えてくるほどです。
(Chapter5 いつ買うべきか)

○ 成長企業の特徴
 繰り返しになりますが、圧倒的な成長力をもつ企業の特徴を確認しておきましょう。これらの企業は普通、何らかの形で科学技術の最先端で仕事をしています。
(Chapter5 いつ買うべきか)

○ 株価は上がったが・・・
 例えば、経営状態のよい企業が素晴らしい新製品を開発しているという情報が漏れると、その会社の株は一挙に人気化し、株価は上昇します。実験工場でも順調に製品化が進んでいるというニュースが広まると、株価はさらに上がります。しかし、実験工場の操業にさまざまなトラブルがつきものだという点を、この時点ではほとんどだれもが忘れています。これが生産工場での操業となると、そうしたリスクはさらに高まります。

 株価が上昇を続けたあと、生産工場を稼働させるにあたって予想外の出費を伴う問題が次々と発生し、この企業の1株利益が目立って落ち込んだとします。工場がうまくいっていないという情報が流れ、問題の解決がいつになるのか、だれもはっきりと答えることができません。以前に株を買い漁った人たちが失望して売り始め、株価は下がります。工場の調整期間が長引くにしたがって、株価はますます落ち込みます。そこでやっと工場が順調に稼働し始めたというニュースが流れ、株価は連日の切り返しを見せます。しかし次の四半期には、新製品の販売強化にかけた経費が収益をさらに圧迫していたことが分かり、株価は年初来の安値まで下落します。そうして、あの企業の経営者はひどい失敗をやらかしたのだという評判が金融界のすみずみにまで広がります。
(Chapter5 いつ買うべきか)

○ 投資家の出番はここ
 実はこのときが、その株の最大の買い時かもしれません。特別な経費をかけた販売活動が成功し、出荷量が増え、最初の生産工場の採算がとれるようになると、あとは通常の営業活動を続けるだけで何年ものあいだ売上げを伸ばしていくことも十分に可能です。2番目、3番目、4番目、5番目の工場を立ち上げるにしても、同じ技術を使えばよいのですから、最初の工場のように調整期間が長びいて稼働の開始時期が遅れたり余分な経費がかかったりすることはほとんどありません。
(Chapter5 いつ買うべきか)

○ 第3の買いタイミング
 ミドル・ウエスタン電子という企業を例にとってみましょう。この優良企業は極めて良好な労使関係を築いていることで特に有名でしたが、組織の規模が大きくなり過ぎたため、ある時点で社員の管理システムを変えざるをえなくなりました。その結果、運悪く労使間にもめごとが生じ、良好な労使関係と高い労働生産性で知られていた会社に、軋轢、怠業(スローダウン)、生産性の低下が起こりました。さらに同時期、この会社には珍しく、新製品の潜在市場を読み間違えるというミスを犯してしまったのです。利益は激減し、株価もそれにつれて下がりました。

 非常に有能で独創性に富むミドル・ウエスタンの経営者は、この状況から立ち直るため、即座にあるプランを立てました。計画を立てるだけなら数週間もあれば十分ですが、一定の効果が上がるようにそれを実施してくとすれば、もっと長い時間がかかるものです。ともあれ、この経営者のプランのおかげで会社の収益が回復しはじめた時点で、株価は1度目の買い時にさしかかりました。しかし利益がすべて損益計算書に表れるまで1年半ほどの時間がかかりました。その決算期末を前に、2回目のストライキが起こったのです。そこで労使関係をうまく調整できれば、会社が競争力を回復するために必要な最後のステップが完了したことになります。ストライキは比較的短時間で終わり、会社側の被る損失もそれほど大きなものではありませんでした。それにもかかわらず、ストライキのあいだに、労使関係がさらに悪化しているという噂が金融界にひろがったのです。会社の役員たちが大量に自社の株を買ったのですが、それでも株価は下がりました。しかしいつまでも安いままでいたわけではなく、やがて2度目の買いのタイミングがやってきたのです。この時点で会社の内情に目を向け、実際に何が起こっているかを知った人たちは、長期にわたって投資家のために成長を続ける可能性の高い株を安値で買うことができたのです。
(Chapter5 いつ買うべきか)

○ 優良企業が一時期にコケたときが買い時
 要するに、わたしたちが投資すべき会社とは、並はずれた能力をもつ経営者の指導のもとに「ものごと」を進めていく企業であるということです。この「ものごと」のなかには失敗に終わるものも当然ながら出てきます。成功を目の前にして思わぬトラブルが起こることもあるでしょう。投資家は、そのトラブルが永続的なものではなく一時的なものであるという確信が得られるまで、いろいろな点から検討を加えてみることが大切です。そうして、それらのトラブルが、株価を大きく下げる原因となってはいても、数年とはいわず数か月で解決することが見込まれるなら、そのときこそ安心して株を買うべき時期であると判断しておそらく間違いありません。
(Chapter5 いつ買うべきか)

○ 市場動向を無視する利点
 景気や株式市場の全般的な動向を予測するよりも、投資したいと思える企業が全般的な景気との関連でどのように動いていくかを可能な限り正確に判断しようとするほうが投資家にとってはよほど有益です。
(Chapter5 いつ買うべきか)

○ 計画的投資のすすめ
 成長株に初めて投資をする場合、有望な投資先のうち1社または数社が買うべき株価にあると確信できたなら、その時点ですぐに買ってしまいましょう。ただし、一度に資金を全額注ぎ込むのではなく、何年かかけて手持ちの資金を徐々に株式に投じていくように計画を立てなくてはなりません。そうすれば、市場が大きく崩れたときに株価の下落を有利に活かせる資金力を残しておけるのです。
(Chapter5 いつ買うべきか)

○ 5つの株価決定要因
 株式に投資をする限り、だれもが心に刻みつけておくべき基本的な考え方があります。これを忘れてしまうと、せっかく価値ある投資活動をしても、金融界にひっきりなしに流れる景気後退への懸念や根拠のない暴落説に振りまわされて、大きな利益を取り損ねてしまいます。

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 景気循環を除いた他の4つの要因とは、金利動向、投資や民間企業に対する政府の基本的な態度、長期的なインフレ傾向、そして - これがおそらくもっとも大きな影響力をもっているのだと思われますが - 旧産業をおそう新時代の技術革新です。これらの力がすべて合わさって同時期に同じ方向へ株価を引っ張ることはめったにありません。また、常にどれかひとつが長期にわたって他の要因を圧倒する影響力をもち続けるというわけでもありません。これらの要因は非常に複雑で多様な影響を及ぼすものでありがゆえに、一見したところでもっとも危険に思える道こそが実はもっとも安全な道であるのです。もっとも危険に見える安全な道とはつまり、投資を続けることです。ある企業について自分の知っていることが、この投資は安全なのだという確信を与えてくれている限り、恐れることなく投資を続けていけばよいのです。憶測に基づく恐怖や希望に惑わされてはなりません。単なる予測を重ねただけの言説に、価値ある投資の道を阻ませてはならないのです。
(Chapter5 いつ買うべきか)









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