フィッシャーの「超」成長株投資(Chapter7 配当の正しい考え方 - もしくは無視してしまえ)

フィリップ・A. フィッシャー (著), 高田 有現 (翻訳), 武田 浩美 (翻訳) 2000年10月1日


○ はじめに
 増配ではなく再投資を選ぶということは、こうした点 - つまり、所得税や仲介手数料を引かれて目減りする配当金を株主に手渡すより、その資金の100%を会社の事業のために活かせること-の他にも株主にとってメリットがあります。投資すべき株を選ぶのは簡単なことではありません。投資した企業が増配をめぐり議論をしている最中であるとしても、投資対象として優れているのであれば、企業の選択に間違いはないのですから、新たにそれと同等の投資先を探してひどい見込み違いをしてしまう可能性を考えれば、有能な経営者に内部留保を再投資してもらうほうがはるかにリスクは小さいのです。優れた企業ほど、増収分を留保するか配当にまわすかの選択は重要になってきます。したがって、増収によって税額が高くなる株主ばかりでなく、納税義務のない株主や、収入の一部を少しずつ投資にまわしている株主にとっても、企業が利益を留保し価値ある新事業に投資を行なってくれるほうが有利なのです。

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 配当に関する企業の方針が一貫していれば、投資家にとってはその分だけ不確定な要素がひとつ消えることになります。そうなると、投資家は、どのような配当の支払い方が有利なのかについて、いろいろな意見に惑わされて頭を悩ませることもなくなり、配当そのものが投資計画を立てるうえで重要な検討事項ではないと思えるようになるものです。証券界には、こうした考え方と反対の立場をとる人たちが数多くおりますが、彼らは、将来性が感じられないうえに、今後何年も平均以下の配当利回りしか見込めないにもかかわらず、株価が上昇することで株主に多大な利益をもたらした株が数多く存在することを説明できません。

 このような企業の株についてはすでにいくつか見てきました。このタイプの企業の典型例はローム&ハース社です。この会社は、1946年、投資銀行の一団が外国人財産管理機構から大量の買い取った株を一般市場に放出するのに合わせて公開されました。公開価格が41.25ドルだったのに対して、配当は、株式分配を計算に入れても、わずか1ドルにすぎませんでした。この低利回りでは保守的な投資をするのにふさわしい株ではないと多くの投資家は感じたものです。しかしこの会社は、公開以来、株式配当を続け、配当率こそ低いままでいるものの、配当額は頻繁に引き上げられ、株価は400ドルを超える水準まで上昇したのです。公開時にロース&ハース社の株を買った人は、その後も持ち続けていれば、1949年から1955年までは毎年4%、そして1956年には3%の株式配当を受けておりますから、それを計算に入れると、いまではキャピタルゲインは少なくとも10倍を超えているはずです。
 結局のところ、投資家に素晴らしく大きな利益をもたらしてくれる株を選びたいのであれば、配当のことを真っ先に考えるのではなく、一番最後に考えるようにすべきでしょう。配当に関してもっとも特異に感じられるのは、配当のことを考えない人ほど、結局は一番大きな配当を受け取ることになるという点です。ここで繰り返し指摘しておきたいのは、5年から10年の期間で見た場合、最高の配当収入を与えてくれるのは、配当利回りの高い株ではなく低い株なのだという点です。並はずれた力量をもつ経営者が次々と新事業に乗り出しているような企業は、配当利回りは一貫して低く抑えられていても金額しだいに増えていき、いずれは配当率の高い株を上回る額の配当が株主の手に入るようになるものです。
(Chapter7 配当の正しい考え方)









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