面白いほどよくわかる決算書の読み方(第1章 貸借対照表は色眼鏡で見てみよう)

平林 亮子 (著) 2007年1月


○ 貸借対照表は左側の「資産」、右側の「負債」と「純資産」の3部構成
 貸借対照表は、左側に「資産の部」、右側に「負債の部」と「純資産の部」を設け、会社の情報を整理する構造になっています。正確には、左側のことを「借方(かりかた)」、右側のことを「貸方(かしかた)」、決算書に金額を記載することを「計上する」といいます。
 「現金」や「商品」のように、会社の有している財産や、会社が利益を得るために利用できる権利などを「資産」といい、資産の部に計上されます。なお、金額を集計するための項目を「勘定(かんじょう)科目」、または単に「科目」といいます。
 一方、株主から集めたお金である「資本金」や、会社に蓄積された利益である「利益剰余金」などを「資本」といい、その他の項目と合わせて純資産の部に計上されます。
 なお、「純資産」とは資産から負債を差引いた差額を意味し、資本を含む広い概念です。
 また、銀行などからお金を借りてきた場合、将来返済する必要が生じます。銀行への返済義務である「借入金」など、会社が負っている将来返済しなければいけない義務を「負債」といい、負債の部に計上されます。
 上記の結果、貸借対照表の貸方(右側)には会社がどのようにお金を集めたか、借方(左側)にはどのようにお金を使ったかが記載されることになります。
(第1章 貸借対照表は色眼鏡で見てみよう)

○ 貸借対照表は会社のお金の出入り結果または予定である
 会社は集めたお金を使って資産を購入し、それを販売したり利用したりすることでお金を儲けています。そんため、資産は将来の収入につながる財産だといえるでしょう。
 一方の負債は、契約に基づいて返済しいていくことになるため、負債は将来の支出につながる負の財産だといえるでしょう。
 ちなみに、株主にお金を出してもらうことを「出資」といいますが、出資されたお金は原則として株主に返済する必要はありません。そのため、純資産は経営のために無期限で利用できる会社の純粋な財産を意味しているといえるでしょう。
 貸借対照表は、どのようにお金を集め、どのように使って、現在会社がどのような状態にあるのか、その結果を示した一覧表です。
(第1章 貸借対照表は色眼鏡で見てみよう)

○ 収支のスケジュールは資産も負債も「流動」と「固定」で表される
 貸借対照表の左側の「資産の部」は、「流動資産」「固定資産」「繰延資産」に分類されます。
 流動資産とは、現金や預金をはじめ、決算日の翌日から1年以内に換金できるような資産を意味しています。
 固定資産とは、建物や備品など、会社が決算日の翌日から1年を超えて利用するような資産を意味しています。
 繰延資産とは、費用とすべきもののうち、内容が特殊で、特別に資産とされるものを意味しています。しかし、収入に結びつくものであるとはいえませんから注意が必要です。
 右側の負債の部は、「流動負債」「固定負債」に分類されます。
 流動負債とは、仕入代金の支払義務やすぐに返済期限が来るような借入など、決算日の翌日から1年以内に支払期限が来るような負債を意味しています。固定負債とは、支払期限が決算日の翌日から1年を超えて来るような負債を意味しています。
(第1章 貸借対照表は色眼鏡で見てみよう)

○ 流動資産は正常営業循環の中で発生する資産
 会社は、集めた現金預金で商品を仕入れ(製造業では材料を仕入れで製造し)、それを販売する、ということを繰り返して利益を得ています。すなわち、「現金預金-(仕入)→商品-(売上)→代金-(回収)→現金預金-(仕入)」とお金を循環させており、これを「正常営業循環」といいます。
 この正常営業循環の中で発生する資産や、その他1年以内に換金可能な資産を「流動資産」といいます。したがって、販売のために1年を超える期間を要する商品であっても、商品の特性として通常のことであれば、流動資産となります。
 正常営業循環の中で発生する流動資産には、「現金預金」「棚卸(たなおろし)資産」「売上債権」があります。
(第1章 貸借対照表は色眼鏡で見てみよう)

○ 固定資産は商品の売買をサポートする循環の中で発生する資産
 固定資産とは、自社ビルや備品など、商品を販売するために1年を超えて利用される資産と、満期が決算日の翌日から1年を超える定期預金や長期に渡り保有する目的の有価証券など、1年以内に換金することを想定していない資産です。
 固定資産はそれ自体を販売するものではなく、「現金預金-(購入)→固定資産-(利用)→売上」という商品の売買をサポートする循環の中で発生する資産だと説明できます。
 固定資産は、資本の循環の中で売上をサポートする「有形(ゆうけい)固定資産」と「無形(むけい)固定資産」、それ以外の「投資その他の資産」に分類されます。
(第1章 貸借対照表は色眼鏡で見てみよう)

○ 負債は「仕入債務」「有利子負債」「引当金」「その他」にわけて考える
 負債は、スケジュールの観点から流動負債と固定負債に分類できますが、内容を理解するためには「仕入債務」「有利子負債」「引当金(ひきあてきん)」「その他」の4つに分けて考えましょう。
 「仕入債務」とは、仕入代金のうち、まだ支払いをしていない分のことであり、お金を支払う義務を意味しています。「有利子負債」とは、いわゆる借金のことで、利息とともに返済する義務を意味しています。「引当金」とは、退職金など、現時点で支払義務は確定していませんが、支払う可能性が高いものを意味しています。
 そのほか、取引先から受取った手付なども負債となります。
(第1章 貸借対照表は色眼鏡で見てみよう)

○ 純資産は株主の持ち分だがその金額はあくまでも目安
 純資産は、「株主資本」「評価・換算差額等」「新株予約権」という3種類に分類することができます。
 株主資本には株主からの出資と利益について、出資分は「資本金」「資本剰余金」として、利益は「利益剰余金」として計上されます。評価・換算差額等には、資産を時価評価した際の含み益について、「その他有価証券評価差額金」「土地再評価差額金」などとして計上されます。
 新株予約権には、これから新たに出資となる可能性のある、出資に準じた金額が計上されます。
(第1章 貸借対照表は色眼鏡で見てみよう)

○ 負債は単独ではなく資産とのバランスで考える
 会社は、負債の返済ができなくなったときに倒産します。そのため、会社の存続能力は会社が負債を支払い続けることがで きるかどうかで判断することができます。負債に対する返済能力を、会社の「安全性」または「安定性」といったりします。
 会社の「安全性」「安定政」は、負債と資産のバランスで判断することができます。負債を上回る資産が存在していれば、究極的には返済できると考えられるからです。
 ちなみに、負債が資産を上回っている状態を「債務超過」といい、会社がかなり危険な状態であると判断してよいでしょう。
 短期的な安全性は、流動資産と流動負債のバランスで考えることができます。1年以内に支払期限が到来する流動負債を、1年以内に換金可能な流動資産が上回っていれば、1『年間は会社を存続させることができると判断できるからです。
(第1章 貸借対照表は色眼鏡で見てみよう)

○ 負債+純資産が資産。純資産の割合が高いほどよい
 負債がなければ会社は倒産しない可能性が高いということになります。純資産は返済を必要としない金額だからです。
 そのため、純資産総額のうちの負債の占める割合が低ければ、すなわち純資産の占める割合が高ければ、会社は長期的にも安定しているといえるのです。
 長期的な会社の安定性は、資産に占める純資産の割合で考えます。
 「純資産/資産(=負債+純資産)×100%」を「自己資本比率」といい、この比率が高いほど会社が安定しているという目安になります。
(第1章 貸借対照表は色眼鏡で見てみよう)

○ 純資産の変動は株主資本等変動計算書にまとめられる
 自己資本比率が高いほど安定性が高いということは、純資産の金額が多ければ安定度合いが高いということです。
 しかし、純資産の部の金額は年々変化します。評価・換算差額等も変動し、株主資本も業績によって変化したりします。
 純資産の金額は貸借対照表に計上されますが、その増減については「株主資本等変動計算書」に計上されます。
(第1章 貸借対照表は色眼鏡で見てみよう)










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