面白いほどよくわかる決算書の読み方(第3章 キャッシュフロー計算書は会社の思惑を想像しながら見てみよう)

平林 亮子 (著) 2007年1月


○ 現代の会社は利益とキャッシュが一致しない
 損益計算書で計算される利益の分だけ、現金預金が増えているとは限りませんから、実際の現金預金の増減をキャッシュ・フロー計算書として一覧にするのです。
 現金預金のほかに、短期的に換金可能な有価証券の一部も「キャッシュ」として取扱い、一定期間のキャッシュの増減を内容別に整理して記載することになっています。
 キャッシュとは、現金及び現金同等物を意味しています。
 現金とは、貸借対照表の現金とは少し範囲が異なっており、手許(てもと)現金及び定期預金以外の現金をいいます。
 現金同等物とは、容易に換金可能で、かつ価値がほとんど変動しない短期の投資を意味し、具体的には、満期が3か月以内の定期預金や有価証券の一部がこれに当たります。
 キャッシュ・フロー計算書を利用する際は、「キャッシュ=現金預金」と考えてさしつかえありません。しかし、貸借対照表の現金預金の金額と、キャッシュ・フロー計算書の金額とが一致しない可能性があることは覚えておきましょう。
(第3章 キャッシュ・フロー計算書は会社の思惑を想像しながら見てみよう)

○ キャッシュ・フローは内容別に3つに分類する
 キャッシュ・フロー計算書は、会社のキャッシュの増減を「営業活動によるキャッシュ・フロー」「投資活動によるキャッシュ・フロー」「財務活動によるキャッシュ・フロー」という3つに分類して記載することになっています。
 「営業活動によるキャッシュ・フロー」とは、商品の売買など会社の営業活動によるキャッシュと、他の区分に記載することが不適切であるキャッシュの増減を意味しています。
 「投資活動によるキャッシュ・フロー」とは、固定資産の取得や売却、現金同等物に含まれない有価証券への投資や売却などによるキャッシュの増減を意味しています。
 「財務活動によるキャッシュ・フロー」とは、資金の調達と返済によるキャッシュの増減を意味しています。
 会社の中におけるキャッシュの増減は、内容別に3つの区分に計上され、最終的に会社全体でどれだけのキャッシュの増減があったのかが示されることになります。
(第3章 キャッシュ・フロー計算書は会社の思惑を想像しながら見てみよう)

○ 営業活動によるキャッシュ・フローはプラスが原則
 「営業活動によるキャッシュ・フロー」は、会社が外部からの借入れなどに頼ることなく会社を維持し、新しい投資を行い、借入金を返済し、配当金などを支払うためにどれだけのキャッシュを主な営業から得ることができたかを示しています。
 そのため、この金額はプラス、つまりキャッシュの増減であることが前提であり、マイナスとなっている場合には注意が必要です。
(第3章 キャッシュ・フロー計算書は会社の思惑を想像しながら見てみよう)

○ 営業活動によるキャッシュ・フローは利益に調整を加える
 営業活動によるキャッシュ・フローには、具体的に、①商品やサービスを販売して得た収入、②商品やサービスを仕入れるための支出、③人件費の支払いによる支出、④その他の経費の支払いのための支出、などが計上されます。
 損益計算書の利益の分だけキャッシュが増加するわけではありません。収益と収入とは一致しませんし、減価償却費などからもわかるように費用と支出も一致しません。
 しかし、収益もいつかは収入になりますし、減価償却費は経過の支出に基づいていますから、利益とキャッシュは一時的にずれているものであると考えることができます。
(第3章 キャッシュ・フロー計算書は会社の思惑を想像しながら見てみよう)

○ 利益とキャッシュのズレは貸借対照表に現れる
 売上げたけれど、まだキャッシュとして回収していない分は、「売掛金(うりかけきん)」として貸借対照表に計上されています。
 また、商品を仕入れて支出はしたけど、売れた分は売上原価として利益に影響を与えますが、在庫は利益には影響を与えませんから、売上原価とキャッシュのズレは「商品」として貸借対照表に計上されることになります。
 このように、利益とキャッシュのズレは貸借対照表に現れます。
(第3章 キャッシュ・フロー計算書は会社の思惑を想像しながら見てみよう)

○ 営業活動は損益計算書の減価償却費に注目しよう
 利益とキャッシュのズレは損益計算書にも現れますが、その中でも大きなズレをもたらすのは「減価償却費」(貸借対照表の観点からは固定資産や減価償却累計額となる)です。
 固定資産を取得した場合、取得したときには大きな支出となりますが、その後は支出があるわけでもないのに、毎年、減価償却費として利益に影響を与えます。そして、一般的に減価償却費は、金額も多額になりやすく、影響も長期に渡ります。
(第3章 キャッシュ・フロー計算書は会社の思惑を想像しながら見てみよう)

○ 投資活動によるキャッシュ・フローはプラスもマイナスもある
 「投資活動によるキャッシュ・フロー」は、会社が将来の利益を得るための設備投資に関するキャッシュの増減、また余剰資金を有価(ゆうか)証券などで運用した場合のキャッシュの増減が記載されることになります。
 具体的には、固定資産を取得した場合の支出、固定資産を売却した場合の収入、有価証券(もしくは投資有価証券)を取得した場合の支出、有価証券(もしくは投資有価証券)を売却した場合の収入、さらには、他社にお金を貸した場合の支出、返済してもらった場合の収入などが計上されます。
 投資活動によるキャッシュ・フローのプラスは、設備の売却や有価証券の売却を意味しています。逆にマイナスは、新たな設備の投資や有価証券の取得を意味しています。
(第3章 キャッシュ・フロー計算書は会社の思惑を想像しながら見てみよう)

○ 財務活動によるキャッシュ・フローはプラスもマイナスもある
 「財務活動によるキャッシュ・フロー」は、会社が営業や投資などを行うために、どの程度の資金の調達や返済をしたのか、調達と返済に関するキャッシュの増減が記載されます。
 具体的には、新しく株を発行した場合の収入、借入れた場合の収入、返済した場合の支出、社債を発行した場合の収入、社債を償還(しょうかん)した場合の支出、さらには株主に配当した場合の支出などが計上されることになります。
 財務活動によるキャッシュ・フローのプラスは、新たな借入れなど資金を調達してきたことを意味しています。マイナスは、借入れなどの返済を意味しています。そのため、プラスだったからよい、マイナスだったらダメということはありません。
 会社は、お金が必要なときには資金を調達してくるため、財務活動によるキャッシュ・フローはプラスに、逆に潤沢にある場合には返済してマイナスになります。
 したがって、財務活動によるキャッシュ・フローを見ることによって、会社が現在、お金を必要としているかどうかを判断することができるのです。
(第3章 キャッシュ・フロー計算書は会社の思惑を想像しながら見てみよう)

○ 3つのキャッシュのプラスマイナスを見てみよう
 営業・投資・財務活動によるキャッシュ・フローは、すべてを合わせて、会社全体のキャッシュ・フローを把握することが大切です。
(第3章 キャッシュ・フロー計算書は会社の思惑を想像しながら見てみよう)

○ 自由に使えるフロー・キャッシュ・フロー
 会社の意思で自由に使えるキャッシュのことを「フリー・キャッシュ・フロー」といいます。
 具体的には、営業活動によるキャッシュ・フローから、会社を維持するために必要な設備投資額を差引いて計算されます。
 このフリー・キャッシュ・フローを得ることができれば、会社はさらなるビジネスの拡大や株主への還元など、選択の幅が広がることになるわけです。
 そのため、フリー・キャッシュ・フローこそが、会社の資金力を示していると考えられています。また、業績の指標として、損益計算書の利益以上に重視されることもあります。
(第3章 キャッシュ・フロー計算書は会社の思惑を想像しながら見てみよう)

○ お金の借入額で会社の経営状況をつかむ
 会社が倒産するのは、お金を支払えなくなったときです。
 逆にいえば、お金さえ支払っていれば会社は倒産しません。つまり、たとえビジネスでお金を稼ぎだすことができなくても、必要な分だけお金を借りてくることができれば、会社は倒産しないのです。
 損益計算書で利益が出ていても倒産してしまうこともありますし、たとえ損失だったとしてもすぐに倒産するとは限らないのです。
(第3章 キャッシュ・フロー計算書は会社の思惑を想像しながら見てみよう)










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