決算書がみるみる読める本―できる人は数字がわかる!(第4章 企業のゆとり度がわかります(キャッシュフロー計算書) )

成田 青央 (著) 2006年2月


○ なぜキャッシュフロー計算書が必要になったのか−キャッシュフロー計算書が必要になった背景
 キャッシュフロー計算書は、キャッシュ(現金)の流れを中心に作成されるので、未回収の債権などは除外され、あくまで回収できたお金だけが計上されます。手元の資金が把握できれば、新事業の開拓や開発を行うときに、資金繰りの目途がつけやすくなります。
 さらにもうひとつ、キャッシュフロー計算書には重要な機能があります。
 もし損益計算書で架空の売り上げを計上しても、実際に回収(入金)されることはないので、キャッシュフロー計算書には影響を与えません。つまり、キャッシュフロー計算書はこれまでの決算書よりも客観性がとても高いので、わたしたちにとっても利用価値があるのです。
(第4章 企業のゆとり度がわかります(キャッシュフロー計算書) )

○ キャッシュフロー(CF)でなにがわかるの?−これがウワサのキャッシュフロー計算書
 ① 営業キャッシュフロー
 営業活動で得た収入と、それにかかった経費を計上します。損益計算書の上段(営業損益)の内容を、さらに詳しく説明したものです。これによって、現金の回収能力や費用の内訳などが分かるほか、キャッシュの稼ぎが明らかになります。
 ② 投資キャッシュフロー
 固定資産や投資目的の有価証券などの購入・売却について計上します。これによって財産運用の内容と成績が分かります。
 ③ 財務キャッシュフロー
 借入金や増資などの収入や、借入金・社債などの返済について計上します。これによって資金調達の方法やそのコストが分かります。
(第4章 企業のゆとり度がわかります(キャッシュフロー計算書) )

○ ウワサでは「難解だ」と聞いたけど・・・?−これがウワサのキャッシュフロー計算書
 3種類の計算書のうち最も重要なのは①の営業キャッシュフローであり、これだけでも見れるようになったら非常に強い武器になります。
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○ 営業CFで自活能力がわかる!−営業キャッシュフロー
 営業キャッシュフローは、売上として稼いだお金が、実際にどれだけ手元にあるのかを示す書類です。ここから、借金の返済、設備投資の資金、配当金の支払などについて、独自の経営活動でどれだけ賄える力量があるのかが分かることになります。
 企業というものが存在するためには、「売上→回収→投資(設備)→売上」の循環が必要で、これを可能にしているのは、手元に自由な資金があってのことです。それが豊富か否かが、営業キャッシュフローに記載されているというわけです。
(第4章 企業のゆとり度がわかります(キャッシュフロー計算書) )

○ 営業CFはこうして使う!−営業キャッシュフロー
 ビジネスシーンで使うちょっとカッコ良さそうな指標に、キャッシュフローマージンがあります。
 ・キャッシュフローマージン = 営業キャッシュフロー ÷ 売上高
 これは売上高とキャッシュの関係を分析するもので、本業の活動からどれだけ運転資金を稼ぎ出せたのかを見ます。これが高いと、運転資金も楽(贅沢)であることが分かります。
 有利子負債営業キャッシュフロー倍率について説明します。
 ・有利子負債営業キャッシュフロー倍率(倍) = 有利子負債 ÷ 営業キャッシュフロー
 見た目は厄介そうですがその中身はシンプルで、有利子負債(借金)の総額を営業キャッシュフローの総額で割っただけです。この指標から分かることは、仮に営業キャッシュフローの全額を返済に充てた場合、何年で返せるのかが見れるのです。倍率が低いほど、早く返せる(資金が豊富で安全)目安になります。一般に、長期借入れなら返済期間は10年、社債の場合は5年ほどですから、計算の結果、倍率が20倍以上になれば、財務状況はかなり苦しいことが見えてきます。
(第4章 企業のゆとり度がわかります(キャッシュフロー計算書) )

○ 投資キャッシュフローが「赤字でOK」の不思議−投資キャッシュフロー
 投資キャッシュフローは、その名の通り、営業キャッシュフローで得た資金を、どのように活用したのかを示す書類です。
 株主(出資者)にしてみれば、資金は寝かさずに、積極的に活用して欲しいと思うものです。これが停滞している企業は、不健全(資金不足か、はたまた経営能力不足か)と思っていいでしょう。
 こうした事情により、投資キャッシュフローの最終結果は、設備投資などの支出によってマイナスになるのが通常なのです。
(第4章 企業のゆとり度がわかります(キャッシュフロー計算書) )

○ 投資キャッシュフローが「黒字に注意!」のナゾ−投資キャッシュフロー
 決算書を読むときの基本は、最終結果からチェックすることでした。投資キャッシュフローも、最終結果から見てゆきます。マイナスであるのが通常ですが、なかにはプラスになっている企業もあります。いったい、なにが起こったのでしょうか。
 そこれはじめて明細を眺めてみます。するとすぐに原因がつかめます。固定資産や有価証券が売却されていませんか?
 つまり、資金繰りが苦しくなり、資産を売却して凌いだのかも知れません。推理が明確になったところで、検討するために営業キャッシュフローを見ましょう。こちらがマイナスになっていたら、資金不足は間違いありませんね。その会社は手持ちの資金を自分で捻出できず、かなり火の車なのかもしれません。
 一方で、投資キャッシュフローがプラスでも、まったく問題のないケースもあります。
 たとえば手持ち株式の売却ですが、企業同士で持ち合っていた持合い株の解消や、関連会社の株式売却は、合理化(不採算事業からの撤退)を行ったと見れます。ここで回収した資金は次の投資に向けることができるので、プラス材料と判断していいでしょう。
(第4章 企業のゆとり度がわかります(キャッシュフロー計算書) )

○ 簡単チェック! 投資額の適正な範囲は?−投資キャッシュフロー
 一般には、「設備投資は減価償却の範囲内でやるのが安全」といわれていますが、それはここでも妥当します。利益から経費として差し引いた減価償却は、実際の支出はなく、社内に保留されるものでした。ですから、投資の総額が、減価償却の範囲内か否かでも、適正の目安となります。
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○ 不況に強いかどうかが財務キャッシュフローで分かる!−財務キャッシュフロー
 企業の経営は、営業で得たお金を(営業CF)、投資に回して成長させ(投資CF)、収益効率を上げる(営業CFのアップ)という循環で成り立っています。このふたつの流れをスムーズにさせるために、財務活動(資金調達)が必要になります。
(第4章 企業のゆとり度がわかります(キャッシュフロー計算書) )

○ フリーキャッシュフローで企業の「本当の価値」がわかる−フリーキャッシュフロー
 フリーキャッシュフローは、営業キャッシュフローから投資キャッシュフローを引いた残りです。つまり収益から生じた資金を、必要な設備投資に回しても、なお余った資金です。これが多い企業ほど、本来の意味での利益効率が良く、素晴らしい経営を行っていると言えます。企業側から見れば、この資金は自由に使えるので、新しい開発や事業展開が可能となります。私たちにしてみれば、株式投資するにしても有望株に見えますし、転職先としても魅力的です。
 さらに本格的な投資家や、企業買収を行うM&A会社にしても、フリーキャッシュフローの量は真っ先に気になるポイントです。
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○ フリーキャッシュフローの適正値−フリーキャッシュフロー
 実際のフリーキャッシュの動きは、会社の経営スタイルや成長ステージによって、非常にまちまちです。多い方がいいに決まっていますが、順調な会社ほど、設備投資などを着実に行うので、投資キャッシュフローが増大し、結果的にフリーキャッシュフローがマイナスになることもしばしばです(成長企業の場合、毎年プラスとマイナスを行き来するのが普通とも言えます)。
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