決算書がみるみる読める本―できる人は数字がわかる!(第5章 実践! 専門書を活用しよう )

成田 青央 (著) 2006年2月


○ いまや企業分析の必須アイテム−実戦で使うROE
 ROEは、当期純利益を株主資本で割った数値です。この率が高い企業は、株主の出資金を有効に使って高い収益を上げているといえます。
 会社四季報をはじめとする情報誌には、必ずROEが掲載されており、ROEランキングまで用意されているほど重要な指標になっています。
(第5章 実践!専門書を活用しよう)

○ 高配当がいいことなのか?−実戦で使うROE
 ひとつの目安として、「ROEの高い企業は配当を低く、ROEが低い企業は配当を高く」というものがあります。「利益が多いなら、配当すればいい」というご意見はもっともです。しかし企業の安定成長を考えると、違う見方が出てきます。
 ROEが高い企業は、いまの株主資本で、多額の利益を生み出したのですよね。つまり経営が上手いわけです。配当金は、一度支払えば社外に消えてしまいますが、もし社内に留保(株主資本に加算)したら、いまのシステムで、さらに効率よく利益を生み出すことが可能となります。
 株主資本が順調に成長してゆく企業は、株価も上昇してゆく傾向があります。長期的視点に立てば、配当よりも、企業に資金のプールや投資をさせた方が得になることもあるのです。
(第5章 実践!専門書を活用しよう)

○ 借金も使いよう−金融収支のポイント!
 企業を評価するときも、慣れないうちは、つい借金の多さに注目しがちです。その見方は決して間違いではないのですけど、伸び盛りの企業や、設備が必要な製造業では、借金はどうしても多くなるのが現実です。また不況など、自分の力ではどうにもならない事態が発生した時は、借金を利用できる信用があるかどうかも重要です。そこで普段からの「借金のうまいヘタ」も、企業を判定するうえで重要な要素になるのです。
 借金の分析については、重要なものとして、流動比率、自己資本比率、借入金対売上高比率などを紹介しました。これらは計算が簡単なので実践でも使います。
 会社四季報などでは、【有利子負債】(負債総額)が出ているので、これを【総資産】で割った負債構成比率でみるとよいでしょう。一派的な目安としては60%以下が健全とされます。
(第5章 実践!専門書を活用しよう)

○ 金融収支のチェックポイント−金融収支のポイント
 とても重要なポイントとして金融収支のチェックがあります。
 金融収支とは、投資活動で得た受取配当金・受取利息・株式の含み益から、有利子負債で支払った金利分を差引くことで求められます。つまり投資財産や借金の総額ではなく、そこから発生した利益とコストをチェックして、利益・損失の大きさをチェックするのです。これによって、「財務管理の上手さ(資金調達のスキル)」がひと目で分かるようになるのです。
 もし金融収支がマイナスになれば、次のことが言えます。
  ① 資金調達コストが高い
  ② 投資方法が誤っていた
 金利支払いが経常利益や税引き後利益などをオーバーしていたら、返済能力は危機的状況と言えるのでしょう。もはや自力(営業能力)での復旧は困難です。
(第5章 実践!専門書を活用しよう)

○ こうなると、ちょっとまずい!−有利子負債で危険性をチェック!
 有利子負債を使った、電卓いらずのチェックポイントもご案内しましょう。
 あなたが気になった企業の、有利子負債を総額、営業利益と比べて見てください。もし有利子負債総額が営業利益の10倍以上もあったら復活はかなり困難です。
(第5章 実践!専門書を活用しよう)

○ 安全性チェックの重要指標−自己資本比率はとても重要!
 会社にとっての自己資本は、重要な信用力だと言いました。しかし日本企業の多くは借金経営が普通で、資本が少ないケースが圧倒的です。さらに、非上場企業も含めた国内企業のおよそ50%が赤字経営という実態があります。ようやく利益を出せた企業は、配当金などを少なくして、社内に留保したがる理由はここにあります。
 このような実態から、会社の安全性は、資本と借金の関係から調べる必要が出てきます。
 なかでも自己資本比率(自己資本÷総資本=30~40%以上)、固定比率(固定資産÷自己資本=100%以下)、負債構成比(負債合計÷総資本=60%以下)は、初歩の指標ですが、企業の規模や金額に左右されない指標なので、実務でも大切にされています。
(第5章 実践!専門書を活用しよう)

○ いいことばかりじゃありません−資本異動で分かること
 会社が新株発行や分割で増資をしたりすると、当たり前ですが、1株当たりの利益や株価が下がります。たとえば株の総数を2倍に増やしたら、これまでのあなたの持株の価値は半分になり、さらに経営者に対する株主の支配力(議決権)も半分になってしまいます。
 とはいえ、業績が好調な企業は、自己資本能力を着実に増やして発展してゆきますし、それにつれて株価も上昇します。経営誌を読むときも、株の発行などによる資本増強の推移をチェックしておくと大変便利です。
 その一方、やたらに増資を繰り返す企業もあるので要注意です。たとえば、運転資金が足りなくなるたびに新株を発行するケースがあるほか、本業が上手くゆかず、レジャー、保険代理店、不動産業、人材派遣業など、新事業ばかりに手を伸ばしている会社に投資するのは避けたいところです。
 これらを見抜くには、まず自己資本比率が業界平均よりも異常に高くないかをチェックします。つまり安全指標をクリアしていても、度を超えたものは危険なのです。キナ臭さを感じたら、本業の売上高の推移や棚卸高の増減をチェックしてみてください。売上低下、在庫膨張であったら、自己資本比率がいくら良くても、投資・転職のウマミがあるかどうかは疑問です。
(第5章 実践!専門書を活用しよう)

○ よく聞く「格付け」の意味は?−「格付け」ってなんでしょう
 格付けは、いまやテレビCMにも顔を出すほどお馴染みになっています。CMでは、自動車の安全性や、損害保険会社の支払能力などを強調するときに使われていますけど、会社四季報などに出てくる「格付け」も、同じように企業の信用性(支払能力の高さ)を示しています。具体的になにを基準に「格付け」しているかが問題ですが、ここでは「企業が発行した長期債券」の信用度になっています。企業が発行した債券とは社債のことです。
(第5章 実践!専門書を活用しよう)








← 第4章                                                       第6章 →
トップページ